2020東京オリンピック・パラリンピックに向けて、羽田空港の国際線発着回数を増やすため、都心上空を飛行する「羽田新ルート問題」。
先日のブログ記事で、落下物・墜落事故、騒音問題、不動産価値への影響などが気になる人のために、羽田新ルート直下の地域かどうか、簡単に調べられる地図(グーグルマップ)を紹介した。
さらに、「SUUMO新築マンション首都圏版(7月3日号)」に掲載されていた23区の新築マンション(全309件)のうち、何件が羽田新ルート直下周辺で販売されているのか調査した結果も紹介した。
少なくない数の新築マンションが羽田新ルート直下周辺で販売されていることが確認できた。
中古マンションのほうは、もっと多くが羽田新ルート直下周辺で販売されているのではないか。そしてその影響は?
- 「LIFULL HOME’Sプライスマップ」で坪単価分布を可視化
- 「羽田新ルート・リスク」はマンション価格に織り込まれているか?
- 羽田新ルートが将来、不動産価値に影響を及ぼす
- 【追記】中古マンション価格の下落は見られない(11月4日現在)
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「LIFULL HOME’Sプライスマップ」で坪単価分布を可視化
中古マンションの価格が羽田新ルートの影響を受けているのかどうかを調べるためには、まず中古マンションの価格を把握する必要がある。
中古マンションの価格を把握する方法としては、SUUMOやライフルホームズ、Yahoo!不動産やアットホームといった、大手の不動産情報サイトのデータを活用することが考えられる。
今回は、後処理のことを考えて、ライフルホームズの「LIFULL HOME’Sプライスマップ」を利用することにした。
LIFULL HOME’Sプライスマップとは、地図上で既存物件の参考価格を掲載するサービスのこと。
LIFULL HOME’Sに掲載された物件の募集情報データベース(不動産ビッグデータ)と、マサチューセッツ工科大学不動産研究センター研究員の清水千弘氏の研究結果を参考に独自開発した統計アルゴリズムによって参考価格が算出されているという。
LIFULL HOME’Sプライスマップでは、モードを切り替えることにより、「坪単価」の分布図を表示することができる(次図)。
「羽田新ルート・リスク」はマンション価格に織り込まれているか?
LIFULL HOME’Sプライスマップ(坪単価モード)に、羽田新ルートを重ねてみよう。
南風時の「A滑走路到着ルート」のうち、中野区⇒新宿区⇒渋谷区あたりの飛行ルートを重ねたのが次図。
新飛行ルート直下の中古マンション坪単価が特に安くなっているという状況は見られない。
次に、品川区内を通過する新飛行ルート(南風時の「A滑走路到着ルート」と「C滑走路到着ルート」)を重ねたのが次図。
上図と同様、新飛行ルート直下の中古マンション坪単価が特に安くなっているという状況は見られない。
羽田新ルートが将来、不動産価値に影響を及ぼす
上図によって、羽田新ルート・リスクはまだ、中古マンション価格に織り込まれていないことが確認できた。
では羽田新ルートは、このまま不動産価値に影響を及ぼすことはないのだろうか?
まさか、そんなことはあるまい。
現時点で不動産価値への影響が見られないのは、不動産会社のダンマリだけでなく、新飛行ルート問題を世間に知らしめたくない国(国交省)と忖度メディアの不作為の成果なのであろう。
逆に言えば、羽田新ルートの事故・騒音等の問題が世間の共通認識になっていくと、不動産価値に影響を及ぼす可能性は十分考えられる。
具体的に考えられるのは2つのケース。
ひとつは、2020年に向けて羽田新ルートの運用が始まり、実際に住民らが巨大な旅客機が頭上を飛ぶ状況を現認し始めたときだ。
たとえば、広尾駅(港区)の上空600mを大型機が通過(C滑走路到着ルート)する際に、地上での騒音レベルは70dBを超える(飛行ルート周辺の騒音マップを描いてみた)。南風時の午後の時間帯(15~19時)、2分おきに騒音が降り注ぐ。
実際の騒音も体験し、転居する人が増え始めると、不動産価値は下落する。
もうひとつは、新飛行ルートで落下物事故が発生したとき。
重大な事故に至らなくても、「羽田新ルート直下は落下物による事故に遭遇する可能性があるので危険だ」という風評によって、不動産価値が下落することが考えられる。
【追記】中古マンション価格の下落は見られない(11月4日現在)
18年11月4日現在のLIFULL HOME’Sプライスマップ(坪単価モード)に、羽田新ルートを重ねてみた(次図)。
羽田新ルート直下の中古マンション坪単価が特に安くなっているという状況は見られない。
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