新築マンションの発売価格を抑えるために、専有面積だけでなく階高も小さくなっているという話。
新築マンションは高くて売れない状況
首都圏では新築マンションが高騰し、庶民には手が出ない状況が続いている。
発売単価は上昇傾向からやや鈍化気味、販売在庫の水準は高止まり(次図)。ようするに首都圏の新築マンション市場は「高くて売れない状況」にあるのだ。
「首都圏新築マンション市場動向(2月)|高くて売れない状況継続中」より
専有面積を小さくし発売価格を抑える戦略
少しでも発売価格を抑えるためにとられているのが、専有面積を小さくするという戦略。
それでも東京23区では14年以降、平均専有面積が小さくなるだけでなく、平均価格も上昇するという、最悪な状況が続いている。
「マスコミ情報では分からない!過去17年間の「首都圏新築マンション市場動向」を可視化」より
と、ここまでの話は当ブログでも何度か紹介してきた。本題はここから。
小さくなるのは専有面積だけでなく、階高も…
コストダウン方策として最も簡単でかつ効果が大きいのは専有面積を小さくすること。その次に効果が大きいのは階高を小さくすること。階高を小さくすることで、躯体工事費が減少(コンクリートや鉄筋の量が減少)し、内装工事費も減少(内装面積が減少)するからだ。その結果、天井高が低くなる。
では実際に階高は小さくなってきているのか?
残念ながら新築マンションの階高に係る統計データは見当たらない。ただ、東京都の「マンション環境性能表示の一覧」にリンクしている「建築物環境計画書」に、物件ごとの「工事着手年月日」「建築物の高さ」「階数」などのデータが公開されている(次図)。
公開されているのは、05年以降(工事着手年月日ベース)の都内の新築マンション1,107件(データ欠損した数件を含む)。
そこで、23区の新築マンション(全858件)を対象に、横軸に工事着手時期、縦軸に平均階高(=建築物の高さ÷階数)として描いたのが次図。
超高層マンション(20階以上)のほうが総じて、非超高層マンションよりも平均階高が大きい。
リーマンショック後、平均階高0.1m縮小
上図だけではよく分からないので、横軸に平均階高、縦軸に分譲価格(不動産経済研究所データ)で描いたのが次のグラフ。
ザックリ言うと、08年(リーマンショック前)に3.29mあった平均階高は、10年(3.18m)には11cm縮小。さらに14年から17年にかけて分譲価格が1千万円ほど高騰していることが分かる。
専有面積にこだわる人は多いが、階高(天井高)にまで関心を寄せる人は多くないのではないか。
でも、リビングの広さを感じるのは2次元(専有面積)ではなく、天井高さが加わって、はじめて空間的な広さを実感することができるのである。
今回紹介した階高の統計データは本邦初(たぶん)。リーマンショック後、平均階高0.1m縮小。消費者はもっと階高にも関心を寄せていい。