丹羽宇一郎著『令和日本の大問題』 東洋経済新報社 (2020/4/17)を読了。
かつて伊藤忠商事をV字回復させたCEOにして、民間出身では初の中国大使だった著者からのメッセージ。
※朱書きは、筆者コメント。
日本の未来を左右する2つのシナリオ
「都市集中シナリオ」か「地方分散シナリオ」か。10年後には選ばなくてはならないという。
日本の未来を左右する2つのシナリオ
2050年に向けた2万通りの未来シナリオは、まず2つの分かれ道にぶつかる。
- 都市への人ロ一極集中が加速する「都市集中シナリオ」
- 地方に人口が分散する「地方分散シナリオ」
(中略)
いまから8~10年くらい後に、都市集中シナリオと地方分散シナリオの分岐点が訪れ、いずれかの道を選べば、それ以後は2つのシナリオが再び交わることはない。
ここが最も重要な点であると広井教授は述べている。教授たちのシミュレーションによれば、10年後には「都市集中シナリオ」か「地方分散シナリオ」を選ばなくてはならないのだ。モラトリアムの時間はそう長くない。
(P152-153/第5章 人口減少社会の真実を直視せよ!)
※新型コロナにより感染症リスクの大きさが認識されたいま、「分散か、集中か」問題への判断は、行政はもちろん、マンション選びに関心のある個人にとっても待ったなしの状況だ。
このあたりについては、牧野知弘氏の新著『不動産激変 コロナが変えた日本社会』が参考になるだろう。
収入減がもたらす不動産リスク
低金利を背景に住宅ローンを組む、若い世帯に潜むリスクへの懸念。
収入減がもたらす不動産リスク
収入が増えない社会は、社会にとってもさまざまな問題を引き起こす。
2020年の東京オリンピックを前にして、都内は高層マンションの建設ラッシュだ。
都内の一等地に立つ高級マンションは、相続税対策で購入した高齢者もいれば、低い金利を背景に住宅ローンを組んで住んでいる若い世帯も多くなっている。(中略)
住宅ローン金利が低いとはいえ、マンションの価値は下がり、ローンばかりが残るという状況も考えられないことではない。
価値が下がっても、そこに住み続け、その街で暮らしていく分には何ら支障はない。
問題は、ローンを支払っていくだけの収入があるかだ。金利は固定だとしても、収入は変動する恐れがある。
(中略)
現在、都内や大都市周辺に見られるマンションの林立は、オリンピック前後まではと強気の人が多いだけに将来のリスクになることが危ぶまれてならない。(P157-158/第5章 人口減少社会の真実を直視せよ!)
※住宅金融支援機構の融資を利用した人は、千人に3人が住宅ローン破綻しているという現実。
街の未来の姿を決めるのは今しかない
85歳以上の高齢者ばかりが住む街をつくるのか、それよりも若い人を交えた街づくりにするのか。
街の未来の姿を決めるのは今しかない
(前略)医療機関を街の中心に置き、そこから生活に必要な施設を順次配置するという街づくりも高齢者が集中する地域では、緊急避難的なプランのひとつではある。
しかし、どういう街づくりとするかは、そこに暮らす人々に決定権がある。
85歳以上の高齢者ばかりが住む街をつくるのか、それよりも若い人を交えた街づくりにするのか。いまそこに住んでいるのは、65歳以上の人々ばかりではない。
住民が一緒になって20年後を直視し、街の姿を決めるのはいましかない。孫や子どもの時代に責任を持つのは大人の義務である。
まだ少しの時間はある。いまから真剣に考えれば、住民にとってベターな選択はできるはずだ。(P175/第5章 人口減少社会の真実を直視せよ!)
※街の未来の姿を論じるには、移民問題は避けては通れないだろう。
本書の構成
6章構成。全237頁。
- 第1章 いますぐ昭和・平成の成功体験を捨て去れ!
- 第2章 働き方は自分の意思で決めろ!
- 第3章 絶望を見据えることでそこに希望の光を発見できる
- 第4章 避けらない危機の上に日々暮らしていることを忘れるな!
- 第5章 人口減少社会の真実を直視せよ!
- 第6章 これからの30年、日本の周辺で起きること
『令和日本の大問題』
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