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濃密なルポルタージュ!『団地と移民』

事件や社会問題の執筆が多い元サンデー毎日の記者、安田浩一著『団地と移民』(KADOKAWA)を読了。

UR常盤平団地(千葉県松戸市)やUR芝園団地(埼玉県川口市)、広島市営基町高層アパート(原爆スラムの跡地)や保見団地(愛知県豊田市)のほか、パリ市郊外の団地にまで足を運んだ、濃密なルポルタージュ。 


もくじ

団地はいまや限界集落

死後3年、家賃と光熱費の自動引き落としの預金が底をついて白骨化した遺体が発見された常盤平団地(千葉県松戸市)。今度は50歳男性のコタツ腐乱死体。

団地はいまや限界集落

 いま団地に住んでいる人の多くは「上がり」にたどり着けなかった人、そこが「上がり」だった人、そして外国人だ。常盤平でも住民の1割が中国人などの外国人だ。

 タテもヨコも、つながりは薄い。隣に誰が住んでいるのか、名前は何か、働いているのか、年金暮らしか、知る機会は少ない。それ以上に関心がない。

 そのうえ、夫や妻に先立たれ、孤立した生活を強いられている人は増える一方だ。働き盛りの外国人世帯を除けば、団地はいまや限界集落に等しい

 前出の男性は、しばらくしてから訪ねてきた兄弟によって、ようやく納骨が叶った。

 この事件の翌年、今度は50歳の男性がコタツの中で死んでいるのが見つかった。腐乱死体だった。

(P40/第1章 都会の限界集落)

※孤独死のリアルは、菅野 久美子(著)「大島てるが案内人 事故物件めぐりをしてきました」に詳しい。
⇒「事故物件とは|マンション広告の用語解説

UR芝園団地、外国人との共生

現在「芝園団地かけはしプロジェクト」の代表を務める圓山氏(当時は東大院生)らの努力によって、外国人(主に中国人)が半数以上を占めるUR芝園団地では、日本人高齢者と中国人との共生が進んでいる。

「共生」も「環境」も守る

(前略)「つなぐ」ことの重要性を、圓山たちは確信している。

「落書き消し、天の川イベント、さらには多文化交流の様々なプログラムを続けていくなかで、少なくとも芝園団地に新しい風景をつくり上げることには成功したと思うのです。そして、多文化共生と団地の環境を守ることは、けっして対立するものではないんだ、という確信だけは得ることができました」(中略)

 18年初め、芝園団地自治会は国際交流に貢献した団体などに贈られる国際交流基金の「地球市民賞」と、県の「埼玉グローバル賞(地域国際化分野)」に、相次いで選ばれた。日本人住民と外国人住民の交流の場を積極的に設け、共生に努めている点が高く評価されたことによる。

(P110-112/第3章 排外主義の最前線)

※当職が4年前にUR芝園団地を現地調査したときの結論は、「環境美化の度合いは、日本の団地のレベルの平均点を大きく上回ってるように感じた」だった。
⇒「URの川口芝園団地は健全に発展しているか?

芝園町の人口推移

限界集落化した団地を救うは外国人の存在

たそがれていた団地にとって、外国人は救世主。限界集落化した団地を救うのは外国人の存在かもしれないという。

移民のゲートウェイ

(前略)日本社会は移民国家化を避けることができない。いや、すでに日本は事実上の移民国家だ。外国籍住民の人口は、いまや250万人に迫る。これは名古屋市の人口を上回り、もはや京都府全体の人口に近い。

 たそがれていた団地にとって、この存在は救世主となる可能性もある。

 いつの時代であっても、地域に変化をもたらすのは”よそ者”と”若者”だ。

 限界集落に新しい住民が増えることで、新しい時間が訪れる。風景も変わる。人々の意識も変わっていく。衝突や軋轢を繰り返しながら、しかし、徐々に人々が結びつきを深めていく。(中略)器は古くとも、注がれる水が新鮮であれば、そこに新たな”暮らし”が生まれる。

限界集落化した団地を救うのは外国人の存在かもしれない。

(P251-252/あとがき)

※旧耐震マンションは、ジャンク扱いの投資物件として売買され、外国人ブルーワーカーたちの住処となると予想する投資家もいる。
⇒「『常勝投資家が予測する日本の未来』経済移民がマンション価格を押し上げる

本書の構成

全6章。全253頁。

  • まえがき 団地は「世界」そのものだった
  • 第1章 都会の限界集落
  • 第2章 コンクリートの箱
  • 第3章 排外主義の最前線
  • 第4章 パリ、移民たちの郊外
  • 第5章 残留孤児の街
  • 第6章 「日本人」の境界
  • あとがき 団地は、移民のゲートウェイとなる

Amazon⇒『団地と移民

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