河合雅司×牧野知弘著『2030年の東京』祥伝社新書(2022/3/1)を読了。
ベストセラー『未来の年表』の著者・河合雅司氏と不動産プロデューサー牧野知弘氏による対談スタイルで構成された共著。
高齢化が進む2030年の東京の姿とその処方箋が記されている。
※朱書きは、私のメモ。
2人のタワマン論議
武蔵小杉の魅力減退を予想する牧野氏。「オールドタウン」となった現在のニュータウンのような未来を辿るのではないかと予想する河合氏。2人のタワマン論議が4頁にわたって続く。
タワーマンションとニュータウンの共通性
牧野 ここで、今人気のタワマンについて考えてみましよう。その例として最適なのが、多くのタワマンが聳え立ち、「タワマン銀座」とも呼ばれる武蔵小杉です。(略)タワマンの集中ならではの問題が起こっています。今後、通勤の必要性が薄まれば、武蔵小杉の魅力は減退するでしょう。
河合 住んでいる人の数を考えると、タワマンというのはまさに住宅の集合体であるニュータウンを天空に向けて建設したようなものですね。一つの街と言ってもいいほどの住民数なのに、上層階、中層階、低層階では住民の意識は異なっており、コミュニテイが形成されにくいのが欠点です。
そこで育った子供たちには「地元」意識はなかなか芽生えないでしょうね。タワマンの購入者が高齢化する頃には、子供たちは独立して離れてしまい、「オールドタウン」となった現在のニュータウンのような未来を辿るのではないかと思います。しかも、管理は建物ごとに行なわれるので、ニュータウンとは違い、行政がそこで起きている課題を把握することは難しいです。(P96-97/第3章 街、住まいはこうなる)
※なんだかんだ言っても、タワマン人気は衰えを見せていない。
首都圏では17年以降は8万戸前後(186⇒173棟)で推移している。このことから首都圏では当面、超高層マンションは170棟・8万戸程度の開発余地があると推定できそうだ。
大量相続時代、高齢者の住環境が好転
大量相続時代には高齢者の住環境が好転するという見立て。
大量相続時代
河合 (略)2030年代後半になれば3軒に1軒は空き家になると推計されているのですから、実家の土地・建物にはほとんど資産価値がなくなっていたということも、日常の風景になるかもしれませんね。
牧野 大量相続時代には思わぬ副産物もあります。高齢者の住環境の好転です。家という基本的な居住空間が確保しやすくなるのです。現在は高齢者、特に収入のない1人暮らしの高齢者が家を簡単に借りられない状況にあります。家主が家賃の滞納や孤独死を恐れて、貸さないからです。
しかし、大量相続により家が余るようになると、家主と借主の立場が逆転します。家賃も下がるでしょうから支出が減り、可処分所得が増えることになります。不動産市場では現在、ワンルームマンションが余り気味です。これまでの主たる客層だった若年層が減り、前述したワンルームマンション投資時代に大量に造られた物件もあります。ワンルームマンションの家賃は安いですし、狭いために動き回らなくていい。高齢者向きなのです。(以下略)
(P164-165/第5章 老後はこうなる)
※今後の中古マンションの成約件数を年間1.6万件と想定すると、団塊世代放出中古マンションが中古マンション市場に与えるインパクトは25%との試算結果(マン点調査)。
「団塊世代から放出される中古マンション今後10年間で10万戸、市場へのインパクト(試算)」より
本書の構成
5章構成。全184頁。
- 第1章 仕事はこうなる
- 第2章 家族はこうなる
- 第3章 街、住まいはこうなる
- 第4章 暮らしはこうなる
- 第5章 老後はこうなる
『2030年の東京』
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