団塊世代(1947年~1949年生まれ)の健康寿命が過ぎるにつれて、その多くの住居が中古市場に放出される。23区における中古マンション市場への影響をザックリ試算してみた。
団塊世代は健康寿命に達しつつある
団塊世代(1947年~1949年生まれ)の年齢は現在71〜74歳。
厚労省が公表している「令和元年簡易生命表」によれば、団塊世代の平均余命は男性15.23~13.09年(女性19.35~16.8年)だから、男性は86.23~87.09歳(女性90.35~90.8歳)まで生きる。
団塊世代の男性は87歳(女性91歳)まで健康的に生きられるかといえばそうではない。自立した生活ができる生存期間としての健康寿命はもう少し前にやってくるからだ。
厚生労働科学研究「大都市の健康寿命(2016年)」によれば、23区の男性の健康寿命は71.89歳(女性74.19歳)と推定されている。
これらのことから、団塊世代(現在71〜74歳)は、すでに健康寿命(男性71.89歳、女性74.19歳)に達しつつあることが分かる。
団塊世代放出中古マンション、今後10年間で10万戸(23区)
健康寿命に達しつつある団塊世代の多くは、遠からず住まいを離れ老人ホームなどに転居することになる。残された住居は首尾よく子の世代に相続されたとしても、すでに自分の住居を持っている子世代は、賃貸に出すか売却する。一方、相続放棄された住居も売却されて市場に放出される。
このようにして健康寿命の尽きた団塊世代から放出される中古マンション(以下、「団塊世代放出中古マンション」)はどのくらいになるのか?
ザックリ試算すると、団塊の世代を含む75歳以上の世帯が住んでいる23区の中古マンションは今後10年間で約10万戸(年間1万戸)放出される。
試算内容は次の通り。
「2018年住宅・土地統計調査」によれば、23区でマンション(共同住宅)を所有(持ち家)している「夫婦のみの世帯」と「単独世帯」の世帯主年齢別分布は次図のとおりだ。
第54-1表「家計を主に支える者の男女,年齢(14区分),住宅の所有の関係(5区分),建て方(4区分),階数(4区分),家族類型(8区分)別主世帯数-全国,都道府県, 21大都市」
75歳以上の「夫婦のみ世帯」と「単独世帯」(上図、ピンク囲み範囲)の合計は126,100世帯。
そこで、同世帯が住んでいる126,100戸のマンションのうちの8割、すなわち10万戸(≒126,100戸×0.8)が今後10年間で市場に放出されると想定した。
中古マンション市場へのインパクト
健康寿命の尽きた団塊世代から放出される中古マンションが市場に与えるインパクトを調べるために、団塊の世代の多くがまだ現役だった10年前について同様の試算すると10年間で約5.6万戸(年間0.6万戸)放出される結果となった。
試算内容は次の通り。
「2008年住宅・土地統計調査」によれば、23区でマンション(共同住宅)を所有(持ち家)している「夫婦のみの世帯」と「単独世帯」の世帯主年齢別分布は次図のとおりだ。
第23表「家計を主に支える者の男女,年齢(12区分),住宅の所有の関係(5区分),建て方(4区分),階数(4区分),家族類型(6区分)別主世帯数―都道府県,18大都市」
75歳以上の「夫婦のみ世帯」と「単独世帯」(上図、ピンク囲み範囲)の合計は69,500世帯となる。
そこで、同世帯が住んでいる69,500戸のマンションのうちの8割、すなわち5.6万戸(≒69,500戸×0.8)が今後10年間で市場に放出されると想定した。
一方、REINS TOWER(東日本不動産流通機構)のデータライブラリーによれば、23区での過去10年間の中古マンションの成約戸数は、年間1⇒1.6万戸(次図)。
年報マーケットウォッチ2019年・年度 >1. 基本指標>表1中古マンション>都区部
今後の中古マンションの成約件数を年間1.6万件と想定すると、団塊世代放出中古マンションが中古マンション市場に与えるインパクトは25%との試算結果となった。決して小さい値ではない。
試算内容は次の通り。
- 今後10年間で約10万戸(年間1万戸)放出
- 過去10年間で約5.6万戸(年間0.6万戸)放出
- 団塊世代放出中古マンションによる増加は、今後10年間で年間0.4万戸(=1-0.6万戸/年)
- 過去10年間の中古マンション成約戸数:1⇒1.6万戸/年
- 今後の中古マンションの成約件数を年間1.6万件と想定すると、0.4万戸÷(1.6万戸/年)×100=25%
あわせて読みたい