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羽田新ルート|東京都、今回も「更なる機能強化」の検討を国に要求(2025年度 提案要求)

東京都は6月13日、「令和7年度 国の施策及び予算に対する東京都の提案要求」を公表。

「概要版」(22枚)、「一括版」(≒詳細版)(767枚)の2種類(次図)。

令和7年度 国の施策及び予算に対する東京都の提案要求

「更なる機能強化」とは何を意味しているのか……。


もくじ

羽田衝突事故を踏まえ「更なる安全・安心対策の早期実施」

東京都はここ数年、「国の施策及び予算に対する東京都の提案要求」のなかで、「羽田空港の機能強化と更なる国際化の推進」を掲げている。

1年前に公開された24年度要求資料に記載されていた「空港容量拡大に向けた方策の検討」は、今回の25年度要求資料では「羽田空港における事故防止に向けた、更なる安全・安心対策の早期実施」に変わっている(次図)。

令和7年度 国の施策及び予算に対する東京都の提案要求_年度比較

24年1月2日に東京国際空港C滑走路において日本航空機と海上保安庁機が衝突をした衝撃的なニュース映像の記憶が新しい段階では、特記しなければならないということなのであろう。

都の提案要求「更なる機能強化について検討を進めること」

「一括版」(≒詳細版)には、43番目の項目として、「羽田空港の更なる機能強化と国際化の推進【最重点】」について、3ページにわたって記されている(次図)。

羽田空港の更なる機能強化と国際化の推進
(一括版 P275-277)

サマリー部分には、次の6項目が記されている。

今年の1月2日に発生した羽田衝突事故を受けて、24年度要求資料にはなかった(5)の項目が追記された。

1  羽田空港の更なる機能強化と国際化

  • (1)羽田空港の更なる機能強化と国際化を推進するため、空港容量の拡大について可能な限りの方策を総合的に検討すること
    2020 年の新飛行経路の運用開始後も、引き続き地元への丁寧な情報提供と、騒音・安全対策等を着実に進めること。
  • (2)夜間駐機場の拡充など、拠点空港機能の強化を進めること。
  • (3)再拡張事業により拡大された深夜早朝時間帯の発着枠について、有効に活用すること。
  • (4)羽田空港の更なる機能強化に併せて、ビジネスジェットに係る発着枠の活用拡大や、将来の需要増加に備えた駐機スポットの増設など、一層の受入体制強化を図ること。
  • (5)羽田空港における事故防止に向けて、更なる安全・安心対策を早期に実施すること。
  • (6)自然災害や不測の事態に対して、航空機発着の定時性確保や空港の安全確保に万全を期すため、適切な対策を講じること。

「現状・課題」には、24年度と同様、「丁寧な情報提供」や「固定化回避に係る検討」といった耳タコ・ワードが出てくる。

(前略)今後とも、関係自治体及び地元住民に対し丁寧な情報提供や騒音・安全対策等を着実に実施するとともに、関係区市の意見等にもしっかりと対応していく必要がある。
また、固定化回避に係る検討についても、検討会の開催状況に応じて、丁寧な
情報提供が必要である。(以下略)

また、24年1月2日に発生した羽田衝突事故を受けて、次の記載が追記された。

(前略)令和6年1月に、羽田空港C滑走路上において航空機同士が衝突し、搭乗者5名が亡くなる事故が発生した。ひとたび航空機事故が発生すると、搭乗者の人命に関わるだけでなく、欠航便の発生等により多くの人々に影響が及ぶことになる。
このため、日頃から空港の安全な運用に努め、航空機等の事故を防止することが必要である。(以下略)

最期に「具体的要求内容」として、「空港容量の拡大について可能な限りの方策を総合的に検討すること」などが記されている。(以下略)

  • (1)-① 羽田空港の更なる機能強化と国際化を推進するため、既存施設の機能向上、施設整備、管制や環境面における制約への対応、旧整備場地区の活用などあらゆる角度から空港容量の拡大について可能な限りの方策を総合的に検討すること
    あわせて、国際線の利用者に不便が生じないよう、出入国管理、税関及び検疫体制を確保すること。

  • (1)-② 新飛行経路運用開始後も、情報提供については、様々な手段を通じて、地元への丁寧な情報提供と意見聴取に努めること。安全対策については、引き続き万全を尽くし、落下物対策の強化に向けて、落下物防止対策基準の充実や安全対策の取組に関する情報提供の充実に努めること。騒音対策については、低騒音機の導入促進を図るとともに、防音工事助成の円滑な実施に努めること。加えて、新飛行経路に関連し増設された騒音測定局による騒音影響の監視及び情報提供に取り組むこと。
    さらに、国で進めている新飛行経路の固定化回避の検討についても、検討会の開催状況に応じて、関係区市等に対して丁寧な情報提供に努めること

  • (1)-③ 長期的な航空需要の増加に対応するため、更なる機能強化について検討を進めること
    なお、検討に当たっては、空港機能と港湾機能が共存できるよう配慮すること。

  • (2)~(5) ※割愛

「更なる機能強化」とは何を意味しているのか

都が国に提案要求した「具体的内容」として記された下記の文章を今一度読んでほしい。

(1)-③  長期的な航空需要の増加に対応するため、更なる機能強化について検討を進めること。

「長期的な航空需要の増加に対応するため、更なる機能強化」と言われても、多くの都民にはピンとこないだろう。「更なる機能強化」とは、「第5滑走路(E滑走路)」の増設計画のことを示唆している、と筆者は考えている。

東京都は19年8月22日に公表した「『未来の東京』への論点」のなかでも、「第5滑走路(E滑走路)」という言葉は使わずに、「羽田空港の更なる機能強化」を謳っている(都の長期戦略に「羽田空港の更なる機能強化」)。また、23年1月に改訂された「未来の東京」戦略においても、「更なる機能強化に向けた取組」が記されている(次図)。

未来の東京」戦略_更なる機能強化に向けた取組
「未来の東京」戦略 P50より

都議会定例会(19年9月9日)で東京都技官は「都が滑走路の増設に向けて国と協議に着手する方針であるという事実はございません」と、読売記事「羽田滑走路 増設協議へ…都と国 機能強化へ5本目」の火消しに回っていた。

「第5滑走路(E滑走路)」という議論百出しそうな表現の代わりに「羽田空港の更なる機能強化」を言い続けること。これにより、国は都(都民)からの要望に応えたという形で第5滑走路(E滑走路)の増設計画を進めることができる。

 

第5滑走路(E滑走路)は、工事費6,200~9,700億円程度、工事期間10~15年程度(地域との合意、関係者調整、環境アセスメントに必要な期間を除く)とされている。

第5滑走路(E滑走路)が運用されると、明治神宮外苑を南下して、青山一丁目、国立新美術館、六本木ヒルズ毛利庭園、麻布十番、三田の慶応、品川埠頭の上空を通過することになる(次図、紫色の直線)。

羽田新ルートの影響を受ける町丁目マップ(港区)
羽田新ルート|次は第5滑走路の増設!? 」より

あわせて読みたい(第5滑走路増設関連の記事)

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