東京都が8月22日に公表した「『未来の東京』への論点」なかに「羽田空港の更なる機能強化」(≒第5滑走路の増設)が組み込まれている。
いったいどういうことなのか……。
都、長期戦略へ20の未来像(日経記事)
東京都は8月22日、四半世紀後の2040年代に都が目指すべき20の未来像を公表した。都民からも意見を募集し、年末をめどに骨子にあたる長期戦略ビジョンをまとめるという。
都、長期戦略へ20の未来像 知事「未来へ投資果敢に」
東京都は22日、四半世紀後の2040年代に都が目指すべき20の未来像を公表した。「合計特殊出生率2.07」「外堀に蛍」「ビジネスの公用語は英語」などを挙げた。議論を広く呼びかけ、策定中の30年までの長期戦略に生かす。小池百合子知事は「あえて高いハードルを選定した」と述べ「未来への投資を果敢に推し進めていかなければならない」とした。(中略)
未来像など今回の論点は9月3日に始まる都議会の第3回定例会に提案するほか、都内区市町村や有識者らにも幅広く議論を呼びかける。都民からも意見を募集する。年末をめどに骨子にあたる長期戦略ビジョンをまとめ、20年五輪・パラリンピック後に最終的な長期戦略を策定する。
(日経新聞 8月22日)
都の長期戦略に「羽田空港の更なる機能強化」
都が8月22日に公表した「『未来の東京』への論点」(以下、「論点」)は全77頁。
次の5つの論点で構成されている。
- 論点01 我々は、何処にいるのか(平成の30年間を検証する)
- 論点02 今、進行しつつある大きな変化・変革をどう捉えるか
- 論点03 将来を見据えた場合の東京の「強み」と「弱み」は何か
- 論点05 東京の未来のために、何をなすべきか(2030年に向けた課題)
特に気になったのは、「羽田空港の更なる機能強化」が組み込まれていることである。
世界最高の交通ネットワークを構築する
交通渋滞や国際便の不足などが東京の弱点の一つ。三環状道路の完成、空港機能の更なる強化など、世界最高の交通ネットワークを構築するために何をすべきか。
- 首都圏空港機能の強化(羽田空港の更なる機能強化、横田基地の民間航空利用、空港アクセス強化、ビジネスジェット需要対応)
(P65)
「羽田空港の更なる機能強化」に係る説明はないが、 第5滑走路(E滑走路)の増設を意味している。
※ 「羽田空港の更なる機能強化」が第5滑走路の増設とリンクしていることについては「羽田新ルート|次は第5滑走路の増設!? 」参照。
「羽田空港の更なる機能強化」が組み込まれた経緯は不透明
なぜ、「論点」に「羽田空港の更なる機能強化」が組み込まれることになったのか? そもそも「論点」はどのようにして策定されたのか?
じつは「論点」は、19年4月19日に設置された「長期戦略策定会議」によってまとめられた。同会議は、小池都知事を筆頭に関係局長など33名で構成されている(当初は「長期計画策定会議」だったが、途中から「長期戦略策定会議」と呼称が変わっている)。
2 検討を進めるための体制
(1) 長期計画策定会議
- 知事及び副知事並びに関係局長からなる庁内検討組織として、長期計画策定会議を設け、将来の東京の姿等について議論を行う。
(2) 長期計画策定会議幹事会
- 長期計画策定会議で議論を充実させるため、策定会議の下に、幹事会を設け、具体的な検討や調整を行う。
P2/「新たな長期計画(仮称)」策定に向けて)
驚くべきことは、「論点」がたったの4か月で策定されたことだ。第1回の会議が19年4月19日に開催されたあと、4か月後(8月22日)に開催された2回目(?)の会議で今回公表された「『未来の東京』への論点」が策定されたのである。
同会議の下部組織として具体的な検討や調整を行う「長期計画策定会議幹事会」が設置されているのだが、同幹事会の議事録は公開されていない。だからどのようなプロセスを経て「羽田空港の更なる機能強化」が「論点」に組み込まれたのかを知ることはできない。
都民の知らぬ間に、都心がさらに飛行騒音で汚染される「羽田空港の更なる機能強化」(≒第5滑走路の増設)が都の長期戦略として策定されようとしている。
この4か月間で何が起こったのか。
9月3日に始まる都議会の第3回定例会で、小池都知事と二階幹事長とが裏で手を握っていないかどうかなど、自分ファーストではない都議にシッカリと追及してもらいたい。
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