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羽田新ルート|都議会「19年第3回定例会」質疑応答

都議会の「19年第3回定例会」本会議の代表質問(9月9日)で、羽田新ルートについて、とや英津子議員(共産党)の質疑応答があった。

録画映像をもとに、全文テキスト化(約5千文字)しておいた。

※以下長文なので、時間のない方は「質疑応答のポイント」と「雑感」をお読みいただければと。

※投稿19年9月10日(追記21年10月7日:自民 菅野弘一議員の一般質問)


質疑応答のポイント

とや英津子議員(共産)代表質問

とや英津子議員(共産)

とや英津子 議員(共産、都議1期、駒沢大学中退、元練馬区議4期、53歳)

問1:「地元の理解を得た」具体的根拠?

はじめに羽田新飛行ルートの問題です。国が来年3月から運用開始を決めたことに、都民の批判が広がっています。
 重大な問題は、小池知事が国の決定に感謝を表明し、所信表明では実現に向けて国に積極的に協力していくと述べたことです。
 これまで都は、新飛行ルートの実施について「地元の理解と協力が前提」だとしてきました。知事は、この姿勢をくつがえすのですか。地元の理解を得たというなら、その具体的根拠は何ですか

問2:知事は、都民の安全、健康、生命、財産を守れる?

大型航空機が、都心上空を低空で飛行する重大な問題です。騒音、落下物、大気汚染、資産価値の低下、墜落事故の危険など、多くの問題が未解決です。
欧州WHOが示した航空機騒音ガイドラインを大幅に上回る騒音に、多くの都民がさらされます。騒音は、会話を妨げるだけでなく、睡眠障害や脳卒中、心臓病を引き起こす要因になります。

航空機からの落下物は、国内の主な7空港だけで年間477件(筆者注:447件の誤読ではないか)、一日に一度以上起きています。人口が密集する都心の上空から落下物が落ちたときの危険性は明らかです。
それでも知事は、都民の安全、健康、生命、財産を守れると、約束できるのですか

 知事は所信表明で、東京・日本の国際競争力向上や、東京オリパラ大会の円滑な実施に欠かせないから、羽田新ルートは必要だという趣旨の発言をしました。

問3:国際競争力向上、何でも許される?

知事は、国際競争力向上や東京オリパラ大会の円滑な実施を理由にすれば、何でも許されると考えているのですか。

問4:不安の声に直接耳を傾けるべき

知事自ら、地元・地域住民の批判や不安の声に直接耳を傾けるべきです。いかがですか。

問5:着陸時の進入角度の引き上げ、危険性が増える

知事は、騒音軽減のための国の追加対策を評価すると言いました。

 国の追加対策は、着陸時の進入角度を標準の3度から3.5度に、より急角度にするものです。しかし、パイロットや航空の専門家から、これにより着陸のやり直しが増えるなど騒音のリスクは増大する、尻もち事故などの危険性が増えると指摘されていることを、知事はどう考えているのですか。

問6:滑走路の増設、都が国と協議に着手する方針は事実?

都は、羽田空港で5本目の滑走路の増設に向け、国交省と本格的な協議に着手する方針を固め、長期計画に盛り込むとの報道がありました。このような事実を隠して、新飛行ルートの運用開始を決めたとしたら、地元自治体や住民への背信行為です。

 都が国と協議に着手する方針だというのは事実ですか。地元自治体や議会、住民の同意なしに、このような協議に入ることはしないと明言できますか。知事、お答え下さい。

著名な航空評論家は、不測の墜落事故や落下事故が起きれば人や建物が深刻な被害を受ける危険性が高いため、世界の大空港は、都心上空の飛行はしなくなったと述べています。
 大規模空港は、安全確保、騒音防止、地域との共存を重視するのが、世界の流れです。日本共産党都議団は、羽田新飛行ルート計画の白紙撤回を厳しく求めるものです。 

都知事の答弁

小池百合子 都知事
小池百合子 都知事(1期、カイロ大卒、67歳)

とや英津子議員の代表質問、62問(羽田新ルート以外を含む)ございました。お答えいたします。

答1:国は丁寧対応前提に「地元の理解が得られた」と判断

羽田新飛行ルートの実施についてのご質問がございました。わが国の国際競争力の向上や東京2020大会の円滑な実施のため、羽田空港の機能強化は極めて重要であります。羽田空港の機能強化に関する決定につきまして、国は自らの判断・責任で実施するとしております。

今回の新飛行ルートの決定にあたりまして、国は関係自治体等からの騒音、落下物対策、引き続きの情報提供に関する意見や要望に丁寧に対応していくということを前提といたしまして、「地元の理解が得られた」と判断をいたしております。

都といたしましては、引き続き丁寧な情報提供や騒音、安全対策の着実な実施を求めながら、国と協力し羽田空港の機能強化実現に向けまして積極的に取り組んでまいります

技官答弁

佐藤伸朗 東京都議官

佐藤伸朗 東京都技官(東大工学部都市工学科卒、59歳 )

14点(羽田新ルート以外を含む)の質問にお答えいたします。

答2:引き続き対策の着実な実施を求めてまいります

まず、航空機からの騒音や落下物などについてでございますが、都はこれまで国に対して、騒音影響の軽減、安全管理の徹底を求めてまいりました

国は騒音影響の軽減策として、飛行高度の引き上げや低騒音機の導入促進、学校・病院等の防音工事に対する助成制度の拡充などの取り組みを実施することとしております。

落下物対策につきましては、航空機のチェック体制の強化などに加え、世界的に類を見ない落下物防止対策の基準を定め、国内外の航空会社に対して本年1月から順次対策の義務付けを行うなど、総合的に対策を実施してきております。
都としては、引き続き対策の着実な実施を(国に)求めてまいります

答3:国際競争力を向上、機能強化が必要不可欠

次に、羽田空港の機能強化についてでございますが、国内外の都市をつなぐ交通ネットワークを強化し、世界の旺盛な航空事業に的確に応えなければ、厳しい国際競争の中で取り残されてしまいます。

羽田空港は都心に近く国内外に豊富なネットワークを有する基幹的なインフラであり、東京2020大会の円滑な実施はもとより、その後の航空需要に応え、東京ひいては日本の国際競争力を向上させていくためには、容量拡大による機能強化が必要不可欠でございます。

答4:丁寧な情報提供、国に求めてまいります

次に、新飛行経路に関する都民の意見についてでございますが、国が決定した新飛行経路について、都民に様々な意見があることは承知しております

国はこれまで、5期にわたる住民説明会を実施するなど、丁寧な情報提供に努めるとともに、航空会社への落下物防止対策の義務付けなど総合的な対策に取り組んでおります。

都といたしましては、引き続き都民の理解がさらに深まるよう、丁寧な情報提供や騒音・安全対策の着実な実施を国に求めてまいります

答5:安全性は確保される

次に、着陸時の進入角度の引き上げについてでございますが、議員がご指摘したような意見を持った方もいることは承知してございます。

国は3.5度の降下角につきまして、国際民間航空機関が定める国際的な安全基準に則ったものであり、安全性は確保されるものとしております。

答6:事実はございません

次に、国との協議についてでございますが、都が滑走路の増設に向けて国と協議に着手する方針であるという事実はございません

今後の協議につきましては、仮定の質問でございますのでお答えいたしかねます。

とや英津子議員(共産)追加質問

問7:品川・渋谷区議会は全会一致で計画の再考を求める決議

とや英津子議員(共産)

次に、羽田新ルート問題です。

8月23日付の東京新聞社説は、羽田新ルートについて、東京都心を旅客機が低空で飛ぶことに地元の合意が整ったとは言い難い。影響が大きい品川・渋谷区の区議会は全会一致で計画の再考を求める決議や意見書を可決済みだ、市民団体の反発も根強いと書いています。この指摘を知事はどう受け止めていますか。
以上3問、知事がはっきり答弁してください。

答7(技官):引き続き丁寧な情報提供・・・

佐藤伸朗東京都議官

新飛行経路に関する様々な意見があるということは、先ほど申し上げた通り、承知してございます。

羽田空港の機能強化に関する決定につきましては、先程知事が申し上げた通り、国が自らの判断・責任で実施するというふうにしております。

今回の新飛行ルートの決定にあたりまして、国は関係自治体等からの騒音・落下物対策や引き続きの情報提供に関する意見・要望に丁寧に対応していくということを前提に地元の理解が得られたと判断しております。

都といたしましては、都民の理解がさらに深まるよう、引き続き丁寧な情報提供や騒音・安全対策の着実な実施を求めながら、国と協力して羽田空港の機能強化実施に向けて積極的に取り組んでまいります

雑感(質問は不発…)

質疑応答を通じて、特に新たな情報は見当たらなかった。

「国が自らの判断・責任で実施する(2回)」ことや、「丁寧に対応(2回)」「丁寧な情報提供(4回)」といった、これまで多くの区議会でも使われた常套句が都議会でも繰り返された。

とや英津子議員のツート(9月10日午前0:53)によれば、今回の質問文章は「睡眠時間削って都議団と事務局が総力あげて作り上げた質問」だそうだ。

やってる感は伝わってくるが、羽田新ルートの見直しに向けて1ミリも動いていおらず、不発に終わっている。もっと合目的的な、先を見据えた具体的で実効性の高い質問に期待したい。

追記(自民 菅野弘一議員の一般質問)

※追記21年10月7日

「東京都議会 会議録」で定例会本会議での羽田新ルートに係る質疑をチェックしてみたところ、自民党の菅野弘一議員の質疑(19年9月10日)が抜けていたので以下に追記。

菅野弘一 議員

菅野弘一 議員(自民、都議2期、日大卒、元港区議会議長、60歳)

菅野:住民に対し、丁寧な説明を続け、飛行開始後も円滑に運用が進められるよう、国に一層要請すべき

初めに、羽田空港の機能強化について伺います。

先月8日、国土交通大臣から、来年3月29日より、新飛行ルートの運用を開始し、羽田空港において国際線を年間3万9000回増便することが発表されました。

新ルートのうち、着陸用については、南風が吹く日の午後3時から7時のうち3時間の間に活用され、東京都内では、新宿区から渋谷区、港区、品川区方面に向けて、上空を降下していくものです。


この新ルートの導入により、国土交通省では、羽田の旅客数が年間約700万人ふえると見込んでおり、首都圏の国際競争力強化や訪日外国人旅行者の受け入れ拡大等につながるものとしています。

我が党は、東京の国際競争力の強化、東京2020大会の円滑な実施のためにも、羽田空港の機能強化については必要不可欠だと思っております。


一方で、利便性の追求は、地域住民の暮らしに十分配慮することが大前提になります。国土交通省が開催した説明会などでは、住宅街やオフィス街を飛行することによる騒音影響が心配だ、落下物対策をしっかり行ってほしい、今回の提案についてもっと多くの人に周知すべきだ、決定された方策の内容については引き続き情報提供をしてほしいといったさまざまな声が上がっています。


また、空港周辺を初め、既存の飛行ルート下にある地域の皆さんについては、長い間航空機騒音などに悩まされてきた状況にあり、引き続き、十分配慮していく必要があります。

国土交通省も住民への説明会の開催や情報発信拠点を設置して周知を行ったり、低騒音機の導入促進や防音工事に対する助成、航空機のチェック体制の強化、落下物防止対策の徹底など、さまざまな対策を実施してきています。


さらに、運用決定に際しては、例えば騒音対策について、地上に近い高度での飛行を減らすため、着陸する際の降下角度を当初案の3度から3.5度に引き上げるなど、操縦士に、より高い技術が求められるものもありますが、新たな対策の実施も示しています。


このように、国土交通省も適宜対策を実施しているところでありますが、新飛行ルート下や、空港周辺の皆さんの騒音や落下物に対する懸念や不安がまだ消えていません。今後とも粘り強く地元の不安を払拭していくため、対策に万全を期す必要があります。

このため、騒音、安全対策の実施の徹底を引き続き図るとともに、住民に対し、丁寧な説明を続け、飛行開始後も円滑に運用が進められるよう、国に一層要請すべきものと考えます。東京都の見解を求めます。

佐藤伸朗 東京都議官

佐藤伸朗 東京都技官(東大工学部都市工学科卒、59歳 )

都技監:国と協力し、羽田空港の機能強化実現に向けまして、積極的に取り組んでまいります

まず、羽田空港の機能強化についてでございますが、国際競争力の向上や東京2020大会の円滑な実施のため、羽田空港の機能強化は極めて重要でございます。

先月の協議会において、都は国に対し、必要な手続を着実に進めることを要望するとともに、情報提供や騒音、安全対策などに関する関係区市の意見を伝え、都民の理解がさらに深まるよう、丁寧な情報提供や対策の着実な実施を要請いたしました。

これを踏まえ、国は来年3月からの国際線増便を決定し、飛行検査を始めるなど、運用開始に向けた取り組みを進めるとともに、この秋から各所でオープンハウス型説明会を開催するなど、引き続き丁寧に対応していくこととしております。

都といたしましては、国と協力し、羽田空港の機能強化実現に向けまして、積極的に取り組んでまいります

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2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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