不動産事業プロデューサー牧野知弘氏の新著『なぜマンションは高騰しているのか』祥伝社新書(2024/2/29)を読了。
庶民が新築マンションを買おうとすることが、いかに無謀なことであるかを教えてくれる1冊。
※朱書きは、私のメモ。
横行する業者買い
外国資本が日本で設立したペーパーカンパニーを通じて、湾岸新築タワマンの角部屋1列を一括で買い入れ。これもマンション高騰の一因。
横行する業者買い
先日、メディアの取材で、湾岸部の新築タワーマンションの登記簿を閲覧したのですが、驚愕しました。高層部東南部分の角部屋がほとんど1列、同じ不動産業者に登記されていたからです。
人気物件だったので、価格が上昇しそうな角部屋1列を一括で買い入れたのでしょう。購入業者は、名も知れない日本の不動産業者です。登記簿の乙区事項欄を見ると、この業者に融資しているのは、香港の投資会社でした。つまり、外国資本が日本で設立したペーパーカンパニーを通じて日本の高額マンション、しかも値上がりしそうな部分を買い占めたわけです。
このようなことは、デベロッパーにすれば「歓迎」です。なぜなら、タワマンは数百戸から1000戸を超える住戸を効率よく捌く必要があり、1社でまとめて買ってもらえれば手間がかからないからです。それによって、「第1期即日完売!」などと銘打ち、販売促進につなげることもできます。(以下略)
(P63-64/第2章 誰が買っているのか)
※日本では不動産を取得した外国法人は、公的機関に実質的支配者を報告する義務を課されていない。「外国法人の実質的支配者情報の収集は、マネー・ローンダリングとテロ資金供与対策の観点ばかりでなく、我が国の平和及び安全の維持のためにも、極めて重要」だという松原仁 衆議院議員の指摘。
詳しくは、「不動産を取得した外国法人に対して実質的支配者の報告を義務化できるか(政府回答)」参照。
一般国民は、中古物件を買うしかない
一般国民が豊富に出そろう中古マンションをじっくり吟味して、割安に買い求められる時代は、そこまで来ているという朗報!?
一般国民は、中古物件を買うしかない
(前略)
新築マンションは贅沢品として富裕層や投資家が買い求め、一般国民は中古マンションを買う構図が当分続くことになるでしょう。
でも、悲観することはありません。今後は、首都圏を中心に大量の相続が発生します。少子化ニッポンでは相続人の数も減り、都内でも実家に住まない相続人が、親が残した中古マンション住戸を、大量にマーケットに賃貸や売却で放出することが目に見えています。
一般国民が豊富に出そろう中古マンションをじっくり吟味して、割安に買い求められる時代は、そこまで来ているのです。これからの世の中では、一般国民は三井、三菱、住友などのデベロッパーの名前を知らなくてもよくなります。彼らは、富裕層や投資家向けの新築・超高額マンションだけを提供する存在になるからです。(以下略)
(P109-110/第3章 一般国民を相手にしないデベロッパー)
※23年以降、新築価格が異次元に高騰。単価差は拡大傾向を見せている(次図)。
タワマンのリスク
タワマンは金融商品。「商品」として冷静に儲かるタイミングだけを見ていればよいという、身も蓋もない話。
タワマンのリスク
(前略)確かに、タワマンは今までかなり高いパフォーマンスを示してきたので、得をした人が多いのは事実です。しかし、どの金融商品もそうですが、これまでの成功がこれからの成功を約束するものではありません。ましてや、タワマンを金融商品と思わずに買ってしまった、つまりずっと住み続けようとして、しかも過酷なレバレッジをかけて夫婦ペアローンを組むという、人生を金融機関に売り渡してしまったようなパワーカップルがいたとしたら、その未来はとてつもなく不透明なものと言わざるを得ません。
もう一度言います。タワマンは金融商品として扱いましよう。運用期間10年程度の金融商品ですから、金融情勢や社会の変化に対して敏感に反応して期間内で運用する、適切なタイミングで「売り抜ける」ことが肝要となります。逆に言えば、「住居」として周辺環境や住民同士のいざこざなどを意識することなく、「商品」として冷静に儲かるタイミングだけを見ていればよいということになります。身も蓋もない言い方ですが、これがタワマンのリアルな姿です。
(P150-151/第5章 マンションの本当の資産価値とは?)
※パークタワー勝どきの転売希望価格の上乗せがヤバい(次図)。
本書の構成
5章構成。全184頁。
- 第1章 増え続ける"億超え"マンション
- 第2章 誰が買っているのか
- 第3章 一般国民を相手にしないデベロッパー
- 第4章 これからのマンション、3つのキーワード
- 第5章 マンションの本当の資産価値とは?
⇒Amazon『なぜマンションは高騰しているのか』
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