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不動産の流通に関する質問主意書「意味するところが明らかではないため、お尋ねについてお答えすることは困難」(政府答弁)

第212回国会(23年10月20日~12月13日)の参議院の質問主意書を眺めていて、不動産の流通に関する質問主意書があることに気が付いた。

齊藤健一郎 参議院議員(NHKから国民を守る党)が11月24日に提出した質問主意書に対する政府答弁書が公開されたのでひも解いてみた。

読みやすいように、一問一答形式に再構成。

※時間のない方は、「質疑応答のポイント」と文末の「雑感」をお読みいただければと。


質疑応答のポイント

齊藤健一郎 参議院議員 :不動産の流通に関する質問主意書

齊藤健一郎 参議院議員
参議院 総務委員会 23年5月25日動画より)

齊藤健一郎 参議院議員 ※ガーシーの参議院議員除名処分に伴う繰り上げ当選
(1期、NHKから国民を守る党、堀江貴文の運転手兼秘書、奈良産業大卒、42歳)

問1:不動産取引に係る相談の内容や件数等、政府は把握?

平成21年にとりまとめられた「社会資本整備審議会産業分科会不動産部会中間とりまとめ」」において、「宅地建物取引業者(以下「宅建業者」という。)は、最も身近な既存住宅の取引に関する専門家であるので、宅地建物取引業の業務に併せて、新たに一般購入者に対して、わかりやすい情報提供の工夫や、関連する情報の提供、コンサルティング的な役割を果たすことが期待される。」旨提言されている。

しかし、現在も宅建業者と相手方との間で「言った、言わない」によるトラブルが多く発生している。国土交通省が公開している「宅地建物取引業法施行状況調査」で、同省等へ来庁し相談された苦情紛争相談件数を取り上げているが、法テラス(日本司法支援センター)や国民生活センターなどに寄せられた不動産取引に係る相談の内容や件数等について、政府は把握されているのか伺う。また、把握していない場合、把握する必要があると考えるが、政府の見解は如何。

答1:「重要事項説明」、賃貸住宅の原状回復相談等があると承知

1についてお尋ねの「相談の内容」については、例えば、一般財団法人不動産適正取引推進機構によると、2で御指摘の「重要事項説明」に関する相談や賃貸住宅の原状回復に関する相談等があると承知している

お尋ねの「件数」については、日本司法支援センターが令和4年度に実施した総合法律支援法(平成16年法律第74号)第30条第1項第2号ホ及び同項第3号に規定する法律相談のうち、不動産に関する相談と考えられるものの件数は、1万4,156件であると承知している。

不動産の売買、賃貸借等に関し、独立行政法人国民生活センターが運営する全国消費生活情報ネットワークシステムに各地の消費生活センター等から令和5年11月23日までに登録された令和4年度に同センター等が受け付けた相談の件数は、4万7,329件であると承知している。不動産の売買、賃貸借等に関し、同機構が同年度に受け付けた相談の件数は、1万1,695件であると承知している。

問2:保証協会の苦情解決申出手続、同協会に届かないものもある

宅地建物取引業法(以下「宅建業法」という。)64条の5では、宅地建物取引業保証協会による苦情解決申出の手続が設けられているが、重要事項説明ではその旨の告知義務は無い。

また、企業においては「お客様相談窓口」などを設けているが、対応は区々であるためトラブルが後を絶たないばかりか、企業内で苦情解決が図られた中には、法が定める保証協会の苦情解決申出手続にて処理が可能な事案にもかかわらず、同協会に届かないものもあると承知している。この現状について、指導監督を強化していくべきと考えるが、政府の見解は如何。

答2:協会に対する指導監督を適切に行ってまいりたい

御指摘の「企業内で苦情解決が図られた中には、法が定める保証協会の苦情解決申出手続にて処理が可能な事案にもかかわらず、同協会に届かないものもある」の意味するところが必ずしも明らかではないが、宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号。以下「法」という。)第64条の2第1項第4号ロに規定する宅地建物取引業保証協会(以下「協会」という。)は、法第64条の3第1項第1号の規定に基づき、宅地建物取引業者の相手方等(法第35条第1項に規定する宅地建物取引業者の相手方等をいう。)からの協会の社員の取り扱った宅地建物取引業に係る取引に関する苦情の解決等を業務としており、令和4年度においては、319件の苦情相談を受け付けたと承知しているが、国土交通省としては、引き続き、協会が当該業務を行っている旨を協会から広く国民に周知するよう協会に対して求めるなど、協会に対する指導監督を適切に行ってまいりたい

問3:全ての告知内容・発言、参照可能な文書で交わすことが必要

宅建業法第35条で定められる重要事項説明書で、宅地・建物と取引条件に関する重要事項を理解し、十分な情報を得た上で契約を締結するかどうかの判断をできるよう求められている。

近年では、実務上は重要事項説明の時点より前に、当該物件についての告知書の提供が望ましいということも指摘されている。しかしながら、仲介業者による「言った、言わない」トラブルが発生している状況においては、全ての告知内容・発言について参照可能な文書で交わすことが必要であると考えるが、政府の見解は如何。

答3:意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難

お尋ねの「全ての告知内容・発言について参照可能な文書で交わすこと」の意味するところが明らかではないため、お尋ねについてお答えすることは困難である

雑感(「お答えすることは困難」というお役所言葉)

「意味するところが明らかではないため、お尋ねについてお答えすることは困難」と作文する前に、質問した議員のところに出向いて、その意味するところを確認すれば、もっと意味のある答弁書が作成できると思うのだが。

最近の政治家の流行り言葉は「差し控える」。「お答えすることは困難」という表現は質問主意書でときおり見かけるお役所言葉。

「お答えすることは困難」という文言は、「差し控える」と同様、説明責任を果たすことから免れるための言葉として使われていないだろうか。

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2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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