第211回国会(23年1月23日~6月21日)の参議院の質問主意書を眺めていて、東京圏一極集中の是正に関する質問主意書があることに気が付いた。
齊藤健一郎 参議院議員(政治家女子48党)が6月1日に提出した質問主意書に対する政府答弁書が公開されたのでひも解いてみた。
読みやすいように、一問一答形式に再構成。
※時間のない方は、「質疑応答のポイント」と文末の「雑感」をお読みいただければと。
- 問1:東京圏への過度な一極集中、要因?
- 答1:多くの若者が進学・就職を機に東京圏に移り住む現状にあること等
- 問2:(一極集中是正が)好調な東京圏の経済に悪影響を与える懸念は?
- 答2:地方から全国へのメリハリのある成長につながっていく
- 雑感
齊藤健一郎 参議院議員 ※ガーシーの参議院議員除名処分に伴う繰り上げ当選
(1期、政治家女子48党、堀江貴文の運転手兼秘書、奈良産業大卒、42歳)
政府は、2022年12月23日に地域活性化の新たな5年計画「デジタル田園都市国家構想総合戦略」(以下「総合戦略」という。)を閣議決定し、「全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会」を目指し、「東京圏への過度な一極集中の是正」を目標に掲げた。
以下、質問する。
問1:東京圏への過度な一極集中、要因?
総合戦略では「東京圏への過度な一極集中の是正」を図るとしているが、2014年12月27日に安倍政権(当時)が閣議決定した「まち・ひと・しごと創生総合戦略」においても、「2020年に東京圏との転出入の均衡」が目標として掲げられていた。
しかし、新型コロナウイルス感染症の流行により近年はリモートワークが普及したものの、2021年の東京圏は転入者が転出者を約8,400人上回る転入超過になり、企業の本社機能の地方移転も進んでいるとはいえない。
政府は、当時の安倍政権が掲げた目標を達成できていない要因を十分に分析した上で、「東京圏への過度な一極集中の是正」を新たな目標として総合戦略に盛り込んだのか。
分析したのであれば、その結果を具体的に示されたい。
答1:多くの若者が進学・就職を機に東京圏に移り住む現状にあること等
住民基本台帳人口移動報告(令和2年結果)によると、令和2年の東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県及び千葉県をいう。以下同じ。)への日本人の転入超過数は98,005人であり、特に10代後半及び20代の者の転入超過数が多くなっているところ、御指摘の「目標を達成できていない要因」については、依然として多くの若者が進学又は就職を機に東京圏に移り住む現状にあること等が主な要因であると考えている。
このため、「デジタル田園都市国家構想総合戦略」(令和4年12月23日閣議決定。以下「総合戦略」という。)において、「地方において魅力ある学びの場を作る」とともに、「地方大学を核とした産学官連携、オープン・イノベーションを促進」することとしているところであり、政府として、過度な東京一極集中の是正に取り組んでまいりたい。
問2:(一極集中是正が)好調な東京圏の経済に悪影響を与える懸念は?
今や東京の予算はスイスの国家予算を上回り、東京圏は日本の経済的な中心地として、人・モノ・カネ・情報などが集中している。そのため、人が集まれば集まるほど第三次産業のニーズは多様化かつ巨大化していき、新たな市場が爆発的に生まれている。
東京一極集中を肯定的に捉えているわけではないが、メリットも無視はできない。
地方から東京圏へ労働力となる人が集まり、中央政府は東京圏の企業による経済活動で税収を得る。中央政府はこれらの税金から地方へ地方交付税などの補助金を分配している。
これは「東京一極集中が日本経済を牽引している」といえるが、「東京圏への過度な一極集中の是正」を掲げることにより、好調な東京圏の経済に悪影響を与える懸念はないといえるのか、政府の見解を示されたい。
答2:地方から全国へのメリハリのある成長につながっていく
お尋ねについては、総合戦略において、「地域でのデジタル実装が進み、東京・首都圏と地方との間でウィンウィンとなる関係性が構築されることで、・・・東京圏への過度な一極集中の是正や多極化を図っていくことが、地方から全国へのメリハリのある成長につながっていく」としているところであり、御指摘のように「「東京圏への過度な一極集中の是正」を掲げることにより好調な東京圏の経済に悪影響を与える」とは考えていない。
雑感
安倍政権は「まち・ひと・しごと創生総合戦略」において「2020年に東京圏との転出入の均衡」を目標に掲げていたのに実現していないじゃないかという齊藤議員の指摘。
2020年の東京圏への日本人の転入超過数は98,005人であったと(次図)、東京圏一極集中が是正されていないことを政府も認めている。
「住民基本台帳人口移動報告 2020年結果|統計局」にピンク加筆
安倍政権時代の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」から岸田政権の「デジタル田園都市国家構想総合戦略」へと、表紙は変わっても、地方へのバラマキが続く。
笛吹けど都民踊らず。「だって東京って便利じゃん」という声が聞こえてきそう……。
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