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大規模地震発生後の復興財源「お答えすることは困難」(政府答弁)

第208回国会(22年1月17日~6月15日)の衆議院の質問主意書を眺めていて、大規模地震に係る質問主意書があることに気が付いた。

吉田晴美 衆議院議員(立憲民主)が4月13日に提出した質問主意書に対する政府答弁書が公開されたのでひも解いてみた。

読みやすいように、一問一答形式に再構成。

※時間のない方は、「質疑応答のポイント」と文末の「雑感」をお読みいただければと。


質疑応答のポイント

吉田晴美 衆議院議員
(衆議院本会議 22年4月14日動画より)

吉田晴美 衆議院議員(1期、立憲民主党、英国立バーミンガム大学大学院MBA、50歳)

南海トラフ地震、首都直下地震が10年以内に30%程度、30年以内に70%程度の確率で発生すると予想されており、その被害額は東日本大震災の約16.9兆円を大幅に上回るため、政府の復興関連支出は東日本大震災の約32.9兆円(平成23年度~令和7年度)の数倍にも及ぶことが予想される


一方で東日本大震災発生時の2010年度末の政府の債務残高は594兆円(特例公債残高356兆円、建設国債残高238兆円)に対して、2021年度末においては990兆円(特例公債残高700兆円、建設国債残高285兆円、復興債残高6兆円)の見込みであり、債務残高の対GDP比は2010年205.7%に対して、2021年256.9%と大幅に悪化している。


また日本国債の格付は2010年時点でムーディーズがAa2、S&PがAAであるのに対して、2022年2月末時点では各々A1、A+と2段階落ちており、資金調達能力は低下している可能性がある。そこで、次のとおり質問する。

問1:復興事業費の調達方法?

予想されている大規模地震が発生した場合、政府が想定している復興事業費の調達方法を答えられたい。

答1(&3):一概にお答えすることは困難

(後述)

問2:利払費の増加等が国の財政に与える影響?

大規模地震が発生し経済のファンダメンタルズや国の財政状態が悪化することで日本国債の格付けが低下することが予想されるが、国債の金利が大幅に上昇した場合、利払費の増加等が国の財政に与える影響について答えられたい。

答2:令和5年度以降、金利1パーセント上昇、国債費は同年度に0.8兆円・・・

金利上昇が国の財政負担に与える影響については、令和4年1月21日に財務省が公表した「令和4年度予算の後年度歳出・歳入への影響試算」において、「経済財政運営と改革の基本方針2021」(令和3年6月18日閣議決定)等の記述に基づき、前提となる経済指標を仮置きし、金利上昇に伴う国債費の増加を、他の前提となる経済指標は不変であると仮定して試算を行っている。


同試算において、令和5年度以降、金利が1パーセント上昇した場合には、国債費は同年度に0.8兆円、令和6年度に2.1兆円、令和7年度に3.7兆円増加すると見込まれ、また、金利が2パーセント上昇した場合には、国債費は令和5年度に1.7兆円、令和6年度に4.1兆円、令和7年度に7.5兆円増加すると見込まれている。

2023年度以降金利が変化した場合の国債費の増減額

問3:事前に基金等を積み立てるなどの準備を

東日本大震災の復興事業費の財源確保のために2037年までの25年にわたる長期の復興特別所得税等が創設されたが、今後の生産年齢人口の大幅な減少に鑑み、大規模地震が発生した後に財源を確保するだけでなく、事前に基金等を積み立てるなどの準備をしておく必要があると考えるが、政府の見解を求める

答1&3:一概にお答えすることは困難

御指摘の南海トラフ地震や首都直下地震等からの復旧・復興に係る財源の確保については、それぞれの地震の規模や被害の状況等に応じて対応するものと考えており、お尋ねの「復興事業費の調達方法」について一概にお答えすることは困難である

雑感(復興財源、避けて通れない問題)

首都直下地震や南海トラフ巨大地震の経済的な被害想定については目にする機会が多い(たとえば、総務省「南海トラフ地震・首都直下地震等大規模災害時の応援のあり方に関する検討会(第1回)」(21年3月15日)配布資料02-2)。

  • 都心南部直下地震
    • 資産等の被害:約 47.4兆円、経済活動への影響:約 47.9兆円
  • 南海トラフ巨大地震
    • 資産等の被害:約169.5兆円、経済活動への影響:約 44.7兆円

気が遠くなるような巨額な被害額が想定されているのだが、そのための復興財源をどのように確保するのかについては、見たことがない。吉田晴美議員の質問はシンプルであるが、避けては通れない重要な問題をはらんでいる。ところが政府は、常套句「一概にお答えすることは困難」を用いて、回答せず。

 

日本大震災の復興に使う財源として創設された復興特別所得税2.1%の課税期間は25年。復興事業費の大部分は一般庶民への増税で賄われている(復興法人税は当初の3年間の 課税期限が2年間に短縮された)。


復興特別所得税は、誰でも一律に支払う消費税と同様、低所得者の負担が重くなる不公平な税制。政府(当時は民主党政権)は皆で助け合う精神に訴えることで、広く国民から徴収することに成功した。
政府は「一概にお答えすることは困難」とお茶を濁しているが、復興特別所得税でなんとかなると考えているのではないのか。

富裕層の金融所得への課税や企業の内部留保への課税など、岸田総理の掲げる「新しい資本主義」と絡めて、議論すべき点は多い。吉田晴美議員には、追加質問を期待したい。

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