不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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契約辞退が顕著な大手マンション管理会社はどこか(2023年)

従来は親会社が分譲したマンションは子会社が管理受託し続けることが多かったのだが、最近は必ずしもそうではないようだ。

管理組合に対して、「管理委託費の値上げ」や「管理仕様の変更」などを申し入れた結果、受け入れられず、管理委託契約が解約になるケースが管理会社大手を中心に増加しているという。
2023年マンション総合管理受託戸数ランキング上位10社のうち、親会社が分譲会社である7社につき、可視化分析してみた。


もくじ

マンション管理戸数の推移(上位10社)

「マンション管理新聞」のバックナンバーをひも解き、上位10社の過去14年間のマンション管理戸数の推移を可視化したのが次のグラフ。

東急コミュニティーは唯一50万戸超。
日本ハウズイングの増加は著しく、17年に大京アステージを抜きその差は年々広がっている。

東急コミュニティー、大京アステージ、三菱地所コミュニティ、長谷エコミュニティ、三井不動産レジデンシャルサービルは、グループ会社が販売したマンションを自動的に管理受託しているから自ずと戸数が多くなる。独立系の管理会社である日本ハウズイングが管理受託戸数を伸ばしているのは、低コストを武器に他社の受託戸数を侵食しているからなのであろう。

マンション総合管理戸数の推移(上位10社)
詳しくは、「マンション管理会社、総合管理受託戸数ランキング2023」参照。

管理委託契約を解約、大手を中心に増加(マンション管理新聞)

上図の元データとなった「マンション管理新聞」23年5月25日号によれば、管理組合に対し「管理委託費の値上げ」や「管理仕様の変更」などを申し入れた結果、受け入れられず、管理委託契約が解約になるケースが管理会社大手を中心に増加しているという。

適正化目指した「管理費見直し」の動き続く

(前略)

ここ数年続く人手不足、人件費や資材などの高騰、協力会社からの値上げ要請などを背景に管理組合に対し「管理委託費の値上げ」や「管理仕様の変更」などを申し入れた結果、受け入れられず、管理委託契約が解約となるケースが大手を中心に増加している。

こうした「管理見直し」の動きの結果か受託管理戸数減少につながったと思われる。

一方、合人社計画研究所グループは昨年より1万6367戸増やしている。リプレイス営業による増加はもとより、積極的に事業主との間で合弁による管理会社を設立しており、その管理受託戸数か寄与している。

昨年2月にはオープンハウスーディベロップメントとの合弁会社「オープンハウス合人社コミュニティ」を設立している。こうした合弁会社は10社以上に上る。

前述した「管理見直し」による受託管理戸数減は現在も続いている。三菱地所コミュニティは昨年より629戸減らした。3年前に1906戸、2年前に5545戸減らしており3年続けての受託管理戸数減となった。(以下略)

(マンション管理新聞 23年5月25日号)

契約辞退が顕著な大手マンション管理会社はどこか(可視化分析)

普通に考えれば、親会社が分譲したマンションは子会社が管理受託することになる。従って、その子会社が管理受託する戸数は年々増加していくはずだ。ところが、最近は上述したように管理委託契約が解約になるので、管理受託戸数が必ずしも増加しているとは限らないということになる。

実際にはどうなのか。親会社が過去5年間(17~22年)に分譲したマンションの戸数と子会社が翌年5年間(18~23年)に管理受託した戸数とのギャップを可視化分析してみよう。

【メモ】
  • マンション管理受託戸数データは、マンション管理新聞に掲載されているデータに拠った。
  • 分譲戸数データは、不動産経済研究所が毎年2月に発表する「全国マンション市場動向」に掲載されている「売上・事業主別発売戸数(全国)」に拠った。

マンション管理戸数ランキング上位10から独立系2社(日本ハウズイング、合人社計画研究所)と長谷工コミュニティを除いた7社につき、管理受託戸数の減少傾向を3グループに分けた。以下、順に説明する。

管理受託戸数の減少が大きい(2社)

住友不動産建物サ一ビス(住友不動産)

住友不動産建物サ一ビスの管理受託戸数は6年間(18年~23年)で▲6,842戸減少。住友不動産が6年間(17~22年)に分譲した戸数は29,076戸なので、その差▲35,918戸。
つまり、これまでに住友不動産が分譲したマンションのうち約3万6千戸の管理受託が子会社以外の管理会社に変更になったと考えられる。

変更理由としては、低価格な提案(これを「リプレイス」という)を仕掛ける独立系の管理会社への変更だけなく、昨今の人手不足による人件費高騰を背景とした契約辞退の可能性も考えられる。

分譲戸数と管理受託戸数との関係 住友不動産/住友不動産建物サ一ビス

三井不動産Rサ一ビス(三井不動産R)

三井不動産レジデンシャルサ一ビスの管理受託戸数は6年間(18年~23年)で4,808戸増加。三井不動産レジデンシャルが6年間(17~22年)に分譲した戸数は19,086戸なので、その差▲14,278戸。
つまり、これまでに三井不動産レジデンシャルが分譲したマンションのうち約1万4千戸の管理受託が子会社以外の管理会社に変更になったと考えられる。

変更理由としては、低価格な提案(これを「リプレイス」という)を仕掛ける独立系の管理会社への変更や、昨今の人手不足による人件費高騰を背景とした契約辞退の可能性が考えられる。

分譲戸数と管理受託戸数との関係 三井不動産R/三井不動産Rサ一ビス

管理受託戸数の減少が中程度(2社)

三菱地所コミュニティ(三菱地所R)

三菱地所コミュニティの管理受託戸数は6年間(18年~23年)で7,485戸増加。三菱地所レジデンスが6年間(17~22年)に分譲した戸数は16,214戸なので、その差▲8,729戸。

三菱地所コミュニティは、20年までは親会社の分譲マンション以外にも営業して管理受託戸数を伸ばしていたが、21年以降は「リゾートマンションなど遠隔地の管理事業見直しが減少幅を広げた要因」(マンション管理新聞)により減少している。

分譲戸数と管理受託戸数との関係 三菱地所レジデンス/三菱地所コミュニティ

野村不動産パートナーズ(野村不動産)

野村不動産パートナーズの管理受託戸数は6年間(18年~23年)で23,352戸増加。野村不動産が6年間(17~22年)に分譲した戸数は26,368戸なので、その差▲3,016戸。
つまり、これまでに野村不動産が分譲したマンションのうち約3,000戸の管理受託が子会社以外の管理会社に変更になったと考えられる。

変更理由としては、日本ハウズイングなど、低価格な提案(これを「リプレイス」という)を仕掛ける独立系の管理会社への変更や、昨今の人手不足による人件費高騰を背景とした契約辞退の可能性が考えられる。

分譲戸数と管理受託戸数との関係 野村不動産/野村不動産パートナーズ

管理受託戸数の減少が見られない(2社)

東急コミュニティー(東急不動産)

東急コミュニティーの管理受託戸数は5年間6年間(18年~23年)で171,398戸増加。東急不動産が6年間(17~22年)に分譲した戸数は8,938戸なので、その差162,460戸。

東急コミュニティーは21年10月、前年12位だった100%子会社のコミュニティワンを吸収合併したことにより管理受託戸数を大きく伸ばした。

分譲戸数と管理受託戸数との関係 東急不動産/東急コミュニティー

大和ライフネクスト(大和ハウス工業)

大和ライフネクストの管理受託戸数は6年間(18年~23年)で20,126戸増加。大和ハウス工業が6年間(17~22年)に分譲した戸数は13,122戸なので、その差13,122戸。

大和ライフネクストは、親会社の分譲マンション以外にも営業して管理受託戸数を伸ばしたのか、あるいは大和ハウスグループ間で管理受託戸数の融通を行った結果なのか。

分譲戸数と管理受託戸数との関係 大和ハウス工業/大和ライフネクスト

 

大和ハウスグループ間で管理受託戸数の融通を行った可能性を考えたのは、大和ハウスグループ全体の23年の管理受託戸数379,849戸に対して、大和ライフネクスト単体の同年の管理受託戸数は276,473戸(73%)と必ずしも高くないからである(次図)。

マンション総合管理戸数の推移(上位11グループ)

【参考】大京アステージ(大京)

※大京の21年以降の供給実績は不明なので、以下の分析は参考扱いとする。

大京アステージの管理受託戸数は4年間(18年~21年)で5,072戸増加。大京が4年間(17~20年)に分譲した戸数は4,573戸なので、その差499戸。

大京アステージは、親会社の分譲マンション以外にも営業して管理受託戸数を伸ばしているということなのだろうか。

分譲戸数と管理受託戸数との関係 大京/大京アステージ

まとめ

管理組合に対して、「管理委託費の値上げ」や「管理仕様の変更」などを申し入れた結果、受け入れられず、管理委託契約が解約になるケースが管理会社大手を中心に増加しているという。

2023マンション総合管理受託戸数ランキング上位10社のうち、親会社が分譲会社で上位10から独立系2社(日本ハウズイング、合人社計画研究所)と長谷工コミュニティを除いた7社につき、親会社が過去6年間(17~22年)に分譲したマンションの戸数と子会社が翌年5年間(18年~23年)に管理受託した戸数とのギャップを可視化分析した結果は、以下の通りである。

  • 管理受託戸数の減少が大きい
    (住友不動産建物サ一ビス、三井不動産Rサ一ビス)
    • 主な減少理由としては、低価格な提案(これを「リプレイス」という)を仕掛ける独立系の管理会社への変更だけなく、昨今の人手不足による人件費高騰を背景とした契約辞退の可能性も考えられる。
  • 管理受託戸数の減少が中程度
    (三菱地所コミュニティ、野村不動産パートナーズ)
    • 三菱地所コミュニティは、20年までは親会社の分譲マンション以外にも営業して管理受託戸数を伸ばしていたが、21年以降は「リゾートマンションなど遠隔地の管理事業見直しが減少幅を広げた要因。
    • 野村不動産パートナーズの減少要因は、三井不動産Rサ一ビス・住友不動産建物サ一ビスと同様。
  • 管理受託戸数の減少が見られない
    (東急コミュニティー、大和ライフネクスト)
    • 東急コミュニティーは21年10月、前年12位だった100%子会社のコミュニティワンを吸収合併したことにより管理受託戸数を大きく伸ばした。
    • 大和ライフネクストは、親会社の分譲マンション以外にも営業して管理受託戸数を伸ばしたのか、あるいは大和ハウスグループ間で管理受託戸数の融通を行った結果なのか。

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