東京都は6月15日、「令和6年度 国の施策及び予算に対する東京都の提案要求」を公表。
「概要版」(17枚)、「一括版」(≒詳細版)(705枚)の2種類(次図)。
「更なる機能強化」とは何を意味しているのか……。
- 24年度「概要版」、「羽田空港の更なる機能強化」をアピール!?
- 都の提案要求「長期的な航空需要の増加に対応するため、更なる機能強化について検討を進めること」
- 「更なる機能強化」とは何を意味しているのか
24年度「概要版」、「羽田空港の更なる機能強化」をアピール!?
東京都の提案要求の「概要版」がそれまでの表形式からパワポ形式に変ったのは一昨年の22年度提案要求から。表形式時代には11年度提案要求以来毎年、「羽田空港の更なる機能強化と国際化の推進」が掲げられていた(次図)。
「令和3年度 国の施策及び予算に対する東京都の提案要求(概要)」より
パワポ形式になって一昨年、昨年は羽田新ルートに係る記載がなかったのだが、今回「都市基盤の整備と物流機能の強化」の一環として「羽田空港の更なる機能強化と国際化の推進」が記載された(次図)。
「羽田空港の更なる機能強化」をアピールする狙いがあるのか……。
「令和6年度 国の施策及び予算に対する東京都の提案要求【概要】」P13より
都の提案要求「長期的な航空需要の増加に対応するため、更なる機能強化について検討を進めること」
「一括版」(≒詳細版)には、43番目の項目として、「羽田空港の更なる機能強化と国際化の推進」について、3ページにわたって記されている(次図)。
(一括版 P259-261)
サマリー部分には、次の5項目が記されている。
1 羽田空港の更なる機能強化と国際化
- (1)羽田空港の更なる機能強化と国際化を推進するため、空港容 量の拡大について可能な限りの方策を総合的に検討すること。
2020年の新飛行経路の運用開始後も、引き続き地元への丁寧な情報提供と、騒音・安全対策等を着実に進めること。- (2)夜間駐機場の拡充など、拠点空港機能の強化を進めること。
- (3)再拡張事業により拡大された深夜早朝時間帯の発着枠について、有効に活用すること。
- (4)羽田空港の更なる機能強化に併せて、ビジネス航空について現状で定められている発着枠の有効活用や、将来の需要増加に備えた駐機スポットの増設などの一層の受入体制強化を図ること。
- (5)自然災害や不測の事態に対して、航空機発着の定時性確保や空港の安全確保に万全を期すため、適切な対策を講じること。
さらに「現状・課題」には、「丁寧な情報提供」や「固定化回避に係る検討」といった耳タコワードが出てくる。
(前略)今後とも、関係自治体及び地元住民に対し丁寧な情報提供や騒音・安全対策等を着実に実施するとともに、関係区市の意見等にもしっかりと対応していく必要がある。また、固定化回避に係る検討についても、検討会の開催状況に応じて、丁寧な情報提供が必要である。(以下略)
最期に「具体的内容」として、「空港容量の拡大について可能な限りの方策を総合的に検討すること」などが記されている。
- (1)-① 羽田空港の更なる機能強化と国際化を推進するため、既存施設の機能向上、施設整備、管制や環境面における制約への対応、旧整備場地区の活用などあらゆる角度から空港容量の拡大について可能な限りの方策を総合的に検討すること。
あわせて、国際線の利用者に不便が生じないよう、出入国管理、税関及び検疫体制を確保すること。- (1)-② 新飛行経路運用開始後も、情報提供については、様々な手段を通じて、地元への丁寧な情報提供と意見聴取に努めること。安全対策については、引き続き万全を尽くし、落下物対策の強化に向けて、落下物防止対策基準の充実や安全対策の取組に関する情報提供の充実に努めること。騒音対策については、低騒音機の導入促進を図るとともに、防音工事助成の円滑な実施に努めること。
また、飛行高度の引上げを安定的に実現するため、航空保安施設の整備を実施すること。加えて、新飛行経路に関連し増設された騒音測定局による騒音影響の監視及び情報提供に取り組むこと。
さらに、国で進めている新飛行経路の固定化回避の検討についても、検討会の開催状況に応じて、関係区市等に対して丁寧な情報提供に努めること。- (1)-③ 長期的な航空需要の増加に対応するため、更なる機能強化について検討を進めること。
なお、検討に当たっては、空港機能と港湾機能が共存できるよう配慮すること。- (2)~(5) ※割愛
「更なる機能強化」とは何を意味しているのか
都が国に提案要求した「具体的内容」として記された下記の文章を今一度読んでほしい。
(1)-③ 長期的な航空需要の増加に対応するため、更なる機能強化について検討を進めること。
「長期的な航空需要の増加に対応するため、更なる機能強化」と言われても、多くの都民にはピンとこないだろう。「更なる機能強化」とは、「第5滑走路(E滑走路)」の増設計画のことを示唆している、と筆者は考えている。
東京都は19年8月22日に公表した「『未来の東京』への論点」のなかでも、「第5滑走路(E滑走路)」という言葉は使わずに、「羽田空港の更なる機能強化」を謳っている(都の長期戦略に「羽田空港の更なる機能強化」)。また、23年1月に改訂された「未来の東京」戦略においても、「更なる機能強化に向けた取組」が記されている(次図)。
「未来の東京」戦略 P50より
都議会定例会(19年9月9日)で東京都技官は「都が滑走路の増設に向けて国と協議に着手する方針であるという事実はございません」と、読売記事「羽田滑走路 増設協議へ…都と国 機能強化へ5本目」の火消しに回っていた。
「第5滑走路(E滑走路)」という議論百出しそうな表現の代わりに「羽田空港の更なる機能強化」を言い続けること。これにより、国は都(都民)からの要望に応えたという形で第5滑走路(E滑走路)の増設計画を進めることができる。
第5滑走路(E滑走路)は、工事費6,200~9,700億円程度、工事期間10~15年程度(地域との合意、関係者調整、環境アセスメントに必要な期間を除く)とされている。
第5滑走路(E滑走路)が運用されると、明治神宮外苑を南下して、青山一丁目、国立新美術館、六本木ヒルズ毛利庭園、麻布十番、三田の慶応、品川埠頭の上空を通過することになる(次図、紫色の直線)。
「羽田新ルート|次は第5滑走路の増設!? 」より
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