国交省は23年4月1日から毎日7時から 22 時まで、羽田空港第3ターミナルに羽田空港のこれから情報コーナー「もっと知りたい羽田空港」を運用している。この情報コーナーを開設した目的は、新飛行経路の運用による最大の受益者である国際線利用者に対して、羽田空港の機能強化への理解を促進することとされている。
詳しくは「羽田新ルート|羽田空港第3ターミナルに情報コーナー開設 」参照。
この情報コーナーの開設に関連し、国交省東京航空局が株式会社日本経済社(日本経済新聞社グループの広告会社)に委託した「情報発信用コンテンツの企画制作及び情報発信拠点整備業務」(以下、「本業務」)に係る次の3つの文書を開示請求によって入手した。
見積金額 8,950万円!
本業務は、4社の企画競争を経て日本経済社が受注にこぎつけている。一般競争入札ではないので、国交省は契約金額を公表していない。
開示請求によって入手した「見積書」(A4判4枚)はほぼ全面黒塗り。でも黒塗りされていないわずかなスペースに「御見積金額」として、「89,500,00円」と記されているのが確認できる(次図)。
つまり、本業務は日本経済社が8,950万円で受注したのである。
不開示とした部分とその理由
墨消し部分に関して、国交省は「行政文書開示決定通知書」(PDF:517KB)のなかで、「不開示とした部分とその理由」として次のように記している。
不開示とした部分とその理由
- 受注者の企画提案内容、検討調整過程、情報発信装置に関する機器構成や図面、デザ イン、操作方法、見積金額の内訳等に係る一連の情報については、受注者のノウハウに 係るものであり、これを公にした場合、当該法人の今後の営業活動において、正当な利 益が損なわれるおそれがあることから、法第5条第2号イの「公にすることにより、当 該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」に該当する ため、当該情報が記録されている部分を不開示とした。
- 個人が写っている映像・写真については、これを公にした場合、個人の権利を害する おそれがあることから、法第5条第1号の「公にすることにより、個人の権利利益を害 するおそれがあるもの」に該当するため、当該情報が記録されている部分を不開示とし た。
- 本業務におけるコンテンツ制作に使用することを条件に空港関係者等(以下「提供者」 という。)から提供を受けた映像・写真等の一連の情報については、当局は著作権を有 しておらず、本コンテンツ以外においてこれを公にした場合、提供者の権利を害するお それがあることから、法第5条第6号の「公にすることにより、当該事務又は事業の性 質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」に該当するた め、当該情報が記録されている部分を不開示とした。
- クイズ形式のコンテンツにおける問題解答等の一連の情報については、これを公にし た場合、本事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあることから、法第5条第6号の「公にすることにより、当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に 支障を及ぼすおそれがあるもの」に該当するため、当該情報が記録されている部分を不 開示とした。
のり弁満載の報告書を整理しておく
報告書の構成
報告書は全部で809枚。次の9章で構成されている。
- 計画準備
- 情報発信用コンテンツの企画制作
- 羽田空港の社会的意義
- 首都圏空港機能強化
- 羽田空港周辺の地域振興
- 情報発信拠点の整備
- 情報発信装置
- 設置作業
- サイン等誘導手法
多くのページが”のり弁”状態である。
以下、章ごとに、目次と本文の”のり弁”の雰囲気が分かる程度に整理しておこう。
1.計画準備
2.情報発信用コンテンツの企画制作
3.羽田空港の社会的意義
4.首都圏空港機能強化
5.羽田空港周辺の地域振興
6.情報発信拠点の整備
7.情報発信装置
8.設置作業
9.サイン等誘導手法
雑感
開示請求のあった文書は、開示請求があった日から30日以内に開示しなければならないことになっている(「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」第10条)。
ところが本件は、30日の延長処理が行われた。延長理由は「当該開示請求に係る行政文書の調整等に時間を要するため」とされている(次図)。
のり弁状態の報告書からは、東京航空局の担当者が期限を遵守すべく、必死になって墨入れしていたであろう作業風景が思い浮かぶ。
「開示決定等の期限の延長について(通知)」より
ちなみに、今回の開示で国に支払った手数料は8,300円(次図)。なんとも高いのり弁である。
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