朝日新聞取材班『朽ちるマンション 老いる住民』朝日新書(2023/1/13)を読了。
21年から22年にかけて朝日新聞デジタルと朝日新聞紙面に掲載された記事がもとになっている。
中古マンションを検討している人には、ダメ物件を避けるためにも、一読することをおススメしたい。
※朱書きは、筆者メモ。
購入時に確認すべきこと
日本マンションサポート協会の川島代表理事は、購入時に確認すべきことのひとつとして、機械式駐車場の有無を挙げている。
購入時に確認すべきこと
(前略)川島さんによると、機械式駐車場の有無もポイントだ。平置き駐車場は維持費がかからないが、機械式の場合は多額の維持費や入れ替え費用がかかる。それに見合った使用料が設定されているか注意が必要だという。また、あまり流通していない設備やメーカーの製品が設置されていると、競争が働かず維持費が高額になったり、入れ替えの際に苦労したりすることもあるという。
マンションを中古で購入する場合には、大規模修繕や配管の更新など多額の費用がかかる修繕の実施状況と、それを反映した長期修繕計画や修繕積立金の設定状況になっているかを確認する必要がある。
「購入費用だけでなく、その後の費用がどれだけかかるのかを見越して考えることも大切です」と川島さんは話す。(P63-64/第1章 管理会社「拒否」の衝撃)
※中古マンション購入の注意点として、いの一番に挙げたいのは「現地をよく見ること」。建築技術に明るくない人にとって、図面から汲み取れる情報には限りがあるからだ。
リノベーションなどで内装工事をする場合の注意点
トラブルを防ぐため、工事を注文する側にもできることとして、全てを業者任せにせず、住民へのあいさつや説明の内容を確認することが挙げられている。
注文主にできることは? トラブルにあったらどうすれば
(前略)リノベーションなどで内装工事をすること自体は、それぞれ区分所有者の権利でもある。工事方法に一定の制限をかけることはできても、正当な理由がないのに工事そのものを拒否することはできないという。
では、騒音に悩まされたら、どうすればいいのか。
(中略)
住戸のリノベーションなどの工事は通常、小規模で工期も短いことなどから、差し止め請求などの法的な手段にでることは現実的とは言えない場合が多いという。
トラブルを防ぐため、工事を注文する側にもできることはある。まず大切なのは、全てを業者任せにせず、住民へのあいさつや説明の内容を確認することだ。「この時期、このような作業をして、こんな音がでるかもしれない」などと、具体的に丁寧に説明してもらう。工期などについて、マンション内の掲示板などに貼り出すよう管理組合にお願いするのも効果的だ。
桑田弁護士は、「マンションでは誰もがリフォームをする可能性があります。丁寧な説明があることによって、『お互い様』と思える範囲が広がるかもしれません」と話す。(P93-94/第2章 没交渉の住民)
※リノベーションを検討している人には、ちきりん著『徹底的に考えてリノベをしたら、みんなに伝えたくなった50のこと』が参考になる。
駐車場、使わない区画は解体検討を
マンション管理コンサルタントの土屋氏は、駐車場の取り扱いにつき、具体的な方法を提案している。
まずは意向調査、使わない区画は解体検討を
(前略)土屋さんがまず勧めるのは、住民にアンケートし、利用動向を調べることだ。(中略)
その結果、将来的にもマンション内の駐車場が埋まる見込みがなければ、使う区画と使わない区画に分け、使わない区画の解体・撤去を理事会で検討する。住民説明会で意見を募った上で、実際に解体・撤去することになれば、総会を開いて住民の合意を得る。共用部分の大幅な変更にあたるため、特別決議が必要で、区分所有者の4分の3以上の賛成などが求められる。
機械式駐車場は、通常25~30年で設備更新の時期を迎える。土屋さんは、更新の予定がある管理組合が利用率の低下を抑えたい場合、一案として「車高や車幅などのサイズが大きく、電気自動車(EV)のように重い車でも入庫可能にすることを検討してほしい」と話している。(P186-187/第5章 管理組合に迫る危機)
※国交省が21年9月30日に公表した「機械式駐車設備の適切な維持管理に関する指針」(一部見直し)には、専門知識のない管理組合が保守委託しようとするときの検討すべきポイントが示されている。
本書の構成
全5章、213頁。
- 第1章 管理会社「拒否」の衝撃
- 第2章 没交渉の住民
- 第3章 高齢化するマンション
- 第4章 コミュニティー再生
- 第5章 管理組合に迫る危機
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