マンショントレンド評論家・日下部理絵氏の新著『60歳からのマンション学』講談社+α新書(2022/4/20)を読了。
事例を物語風に記した後、「事例からわかること」として問題点、注意点などが掲げられている。大変読みやすい構成になっている。
マンション問題に詳しい”マンクラ”にとって特に目新しい情報はないが、マンションを買い替えたいと考えているシニア層にとっては、転ばぬ先の杖、本書を読まないのはリスクが大きすぎると思う。
※朱書きは、私のメモ。
リフォーム期間中はホテルに仮住まい
リフォーム(リノベーション)期間中の仮住まいの確保方法が詳しく記されている。
リフォーム期間中はホテルに仮住まい
(前略)ウィークリー・マンスリーマンション、賃貸マンション、ホテル住まいなどが候補にあがった。まず一般的な賃貸物件は2年契約で敷金・礼金・仲介手数料がかかってしまうのですぐに候補から外れた。家具付きのマンスリーマンションは最後まで有力であったが、結局、ホテルの長期滞在プランを選択した。いまホテルは新型コロナの影響で安価に滞在できることが多い。まさにコロナ禍ならではの滞在先といえるかもしれない。
これを機に粗大ゴミは捨て、リノベーションの妨げになる家具などは、トランクルームに預けた。
ホテル住まいは、最低限ではあるが家具付き、水道光熱費・インターネット接続料込み、掃除・ゴミ捨て不要ととても魅力的だった。実際にホテル住まいをしてみると部屋の広さ以外は快適で、ホテルマンの「お帰りなさいませ」の声かけになんだかセレブになった気分がした。
(P104-105/事例4 買い替えよりもフルリノベーションを選択)
※本書の事例はリフォームというよりリノベーション。リノベーションであれば、ちきりん著『徹底的に考えてリノベをしたら、みんなに伝えたくなった50のこと』が参考になる。
タワマン相続難民が溢れる?
節税を目的としたタワマンの購入は、相続したあとに問題が発生する可能性があるという筆者の指摘。
タワマン相続難民が溢れる?
(前略)相続したマンションやアパートを、上手に運用したり、売却して高く売り抜けられたらセーフだが、資産価値が下がってしまうとローンが返せなくなってしまう。節税のために親が良かれと思ってやったことが、相続人である子供が、親が組んだ高額ローンの返済に悩んでしまう。
(中略)
皮肉な言い方をすると、相続を考えるほどのご高齢なので、そう遠くない先に亡くなる。いま金融資産の多くが高齢者に偏っており、節税需要が盛り上がっているが、日本は少子高齢化なので、特に団塊の世代が所有する不動産など、売る時は一斉に売りに出ることになる。
そうなると、資産価値が下がってしまう。せめて借金返済分だけでも賃料が取れればいいが、いま日本の不動産マーケットは、投資・転売・節税目的も多く必ずしも実需で成り立っていないので、賃料も下がる可能性がある。そのため、2030年以降は相続難民が溢れる可能性がある。(以下略)
(P203-204/事例7 戸建てを売りタワマンを購入したものの…)
※なんだかんだ言っても、タワマン人気は衰えを見せていない。
首都圏では17年以降は8万戸前後(186⇒173棟)で推移している。このことから首都圏では当面、超高層マンションは170棟・8万戸程度の開発余地があると推定できるのではないか。
本書の構成
8章構成。全238頁。
- 事例1 一人暮らしになって分譲マンションから賃貸へ
- 事例2 夫婦二人になり、駅近マンションに買い替え
- 事例3 あわや負動産。バリアフリーマンションへの引っ越し
- 事例4 買い替えよりもフルリノベーションを選択
- 事例5 終の棲家として買ったはずの住居で思わぬトラブル
- 事例6 空き駐車場問題に理事長として奮闘
- 事例7 戸建てを売りタワマンを購入したものの……
- 事例8 大規模修繕のお金がない?!
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