不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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『特権を問う ドキュメント・日米地位協定』毎日新聞出版

日米地位協定の発効60年の2020年に結成された毎日新聞「特権を問う」取材班による『特権を問う ドキュメント・日米地位協定』毎日新聞出版(2022/7/23)を読了。

組織横断的に集まった20人を超える記者らによる「特権を問う」シリーズ。特に米軍による都心低空飛行スクープは、ショッキングな動画とともに当時の菅総理に「(動画を)私も見ました」と国会答弁するに至らしめた労作。炎天下の東京でカメラを構えて米軍を待ち続けたエピソードなど、リアルな現場の様子が描かれている。

 ※朱書きは、私のメモ。


もくじ

米国に日米路線の発着枠と三沢空域を差し出した日本

羽田新ルートの管制譲歩の見返りに、日本は米国に日米路線の発着枠と三沢空域を差し出したとされている。

繰り返される「米国との信頼関係が損なわれる」

(前略)難航した羽川新ルートを巡っては、訓練空城拡大とは別の取引も指摘されている。

横田の管制について日米が合意した2週間後、国交相の石井啓一が記者会見で、羽田新ルートによって1日当たり50便(往復)増える国際線発着枠のうち、約半数となる24便を日米路線に割り当てる方針を明らかにした。このことから、日本側が横田管制で譲歩してもらった見返りに日米路線の発着枠を提供したのでは、という見方だ。


この点について、現役の国交省幹部も松本の取材に「横田の管制で合意したことを受け、発着枠の配分で配慮するようにアメリカから明確に言われていた」と取引を裏付ける証言をした。さらに推測と前置きしながらも重要な見方を示している。「これだけだと米軍にとってメリットは何もないから、三沢の空域を拡大したんでしょうね」(以下略)

(P75/第1章 取材班始動)

羽田新ルートに係る横田空域の管制権問題(三沢空域バーター問題を含む)を記した一連の記事のまとめ。

羽田新ルート|横田空域の管制権、日米交渉推移(まとめ)

異例ずくめの報道前夜

初報、続報の計6本はいずれもニュース性のある特ダネ記事。7本の動画コンテンツを準備。異例ずくめの報道前夜。

報道前夜

(前略)最初に報道するのは、ブラックホークが新宿駅上空で低空飛行を繰り返している問題にした。続報のラインナップは「シーホークの東京タワー周辺低空飛行」「六本本でタッチ・アンドーゴー訓練」「東京スカイツリー周回飛行」「世田谷の住宅街低空通過」「駐機スペースで離着陸」の5本。初報、続報の計6本はいずれもニュース性のある特ダネ記事だ。それぞれにサイド記事やインタビュー記事なども付ける。準備しなくてはならない原稿は20本に上った。


読み物風の連載企画なら掲載前に記事を用意しておくのは当然だ。しかし、ニュース性のある記事を6本も用意しておくのは異例だった。
(中略)
6本の特ダネ記事と対になる動画。それと、1本目の「新宿駅上空低空飛行」については、飛行17回分の証拠映像をダイジェストにした「ファクト編」と、専門家の意見やヘリの航路シミュレーションを軸とした「解説編」に分けることとし、ひとまず計7本の動画コンテンツを準備することにした。編集作業は膨大なものとなる。(以下略)

(P151-153/第2章 首都蹂躙)

米軍ヘリによる首都異常飛行問題を分かりやすく解説した記事
米軍ヘリによる首都異常飛行問題とは(国会・都・区議会での議論一覧付き)

毎日新聞による15動画
米軍ヘリ 首都異常飛行 - 毎日動画

住民の苦情、3カ月ごとにまとめて米軍に通知

米軍が2017年8月から「運用上の理由など」を持ち出して原則として照会に応じなくなったため、防衛省は苦情を逐一伝えて照会する運用をやめ、3カ月ごとにまとめて通知するだけにしたという。

住民の苦情はどう扱われたか

(前略)さらに大場をあぜんとさせたのは、3カ月ごとの通知方式を始めた経緯だった。


防衛省によると、かつては米軍機が原因と思われる苦情を受けると、米軍に飛行の有無をすぐに照会していた。ところが米軍が2017年8月から「運用上の理由など」を持ち出して原則として照会に応じなくなった。このため、防衛省は苦情を逐一伝えて照会する運用をやめ、3カ月ごとにまとめて通知するだけにしたという。その方が「より明確に実態を伝えられる」などともっともらしい理由を説明していたが、実際は米軍の都合に合わせただけなのだろう。


何のための苦情の窓口役なのか。防衛省の担当者はこう力説した。

「地元のみなさまの声を確認して、取捨選択せず、できる限りしっかり、具体的かつ正確に米側に伝えて、配慮することを求めることが我々の仕事なのかなと思っています」

防衛省の仕事は米軍に「配慮を求める」ことだと言っている。問題を改善させるのが本来の役割ではないのか。担当者が当然のようにそう言うのを聞いて、思わず聞き返しそうになった。

「それでいいの?」(以下略)

(P260/第4章 特権の核心)

世田谷区の環境政策部長は予算特別委員会で21年3月24日、「令和2年4月1日以降、ヘリコプターに関する騒音苦情は50件ありました」と答弁している。ところが区のHPには1件も掲載されていない。私が区に照会したところ、区政運営の範疇外だから区民に知らせていない趣旨の回答が返ってきた。「それでいいの?」

首都異常飛行|世田谷区議会 予算特別委員会でも米軍ヘリの低空飛行問題

本書の構成

4章構成。全291頁。

  • 第1章 取材班始動
  • 第2章 首都蹂躙
  • 第3章 基地の島・沖縄で
  • 第4章 特権の核心

Amazon⇒『特権を問う ドキュメント・日米地位協定

あわせて読みたい(本の紹介)

2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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