不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

首都圏を中心に、マンション選びのためのお役立ち情報を提供しています


羽田新ルート|『日本型新自由主義の破綻』春秋社

稲垣久和 東京基督教大学特別教授とジャーナリスト土田修氏の共著『日本型新自由主義の破綻: アベノミクスとポスト・コロナの時代』春秋社(2020/12/25)を読了。

行き過ぎた新自由主義を批判する本書のなかに、羽田新ルート問題も取り上げられていたので、ピックアップしておいた。

朱書きは、私のメモ。


もくじ

反対運動はマスコミのニュースにもならず

オリンピック東京大会は大手マスコミをも巻き込んだ国家的成長戦略であったから、初期の頃の「羽田都心ルート」反対運動はマスコミのニュースにもならず、せいぜい「反対するのは一部の住民運動家」「非国民」レベルの扱いであったという。

2013年IOC決定後に準備開始

(前略)羽田都心ルート計画は最初から、前章で述べた「2020東京オリンピック」誘致の”成功体験”とセットになっていた。つまり、アベノミクスの第三の矢「民間投資を喚起する成長戦略」の中心事業として位置づけられたのである。このあたりの背景をよく理解しておかないと、「羽田都心ルート」反対運動が単なる住民エゴと大差ないと見なされかねないので、注意せねばならない。
(中略)
ところが、当時の「羽田都心ルート」反対運動に立ち上がった住民たちの側も、騒音や落下物危険という被害を受けることが先にきて、「この問題は政権の威信をかけたアベノミクスの第三の矢(成長戦略)の一環に組みこまれていた」、そのことが十分に飲み込めていなかった。前章で詳述したように、オリンピック東京大会は大手マスコミをも巻き込んだ国家的成長戦略であったから、初期の頃の「羽田都心ルート」反対運動はマスコミのニュースにもならず、せいぜい「反対するのは一部の住民運動家」「非国民」レベルの扱いであった。

(P140-142/第4章 羽田都心ルートの謎)

※東京五輪のオフィシャルパートナーである全国紙(朝日・読売・毎日・日経)は羽田新ルート問題を報じることを避けている(忖度している)。

解決への道

国民の代表者が集まる国会でそれを公開し議論し、主権者の判断すなわち住民投票により適切に処理していくべき事柄だという。

解決への道

(前略)コロナ後の世界のあり方を考慮するならば、インバウンドの航空機の減便こそあれ、もはや増便はありえない。国民の「新しい生活様式」の一環に本当に羽田都心ルートが必要なのか。筆者は羽田都心ルートはアベノミクスの残骸であって、アベノミクスの失敗と共に捨てるべき政策であると考える。

それでもあえて羽田都心ルートが必要だという信念をもつのであれば、その説明とそれにまで至った情報を公開すべきである。国民の代表者が集まる国会でそれを公開し議論すべきである。国民主権の民主主義のルールにより、その是非を決定した後に立法権(国会)が、たとえばコロナ後の21世紀の環境アセスメントを考慮した上で、航空法改正なり特別法を制定し(憲法95条)、この法に則ってまず主権者の判断すなわち住民投票により適切に処理していくべき事柄ではないのか。(以下略)

(P178-179/第4章 羽田都心ルートの謎)

※品川区議会で「羽田空港の新飛行ルートの賛否を問うための住民投票条例案」が自公議員らの反対で否決されたくらいだから、国会で議論をして住民投票するという提案はハードルが高そうだ。

マイナス経済効果は計算不可能

窒素酸化物排出、騒音、落下物、航空機事故といったマイナス経済効果も算出すべきだが、計算不可能であり、こういったバカげた国策は直ちに取り消すべきだというのが著者の結論。

社会的共通資本と羽田都心ルート

(前略)羽田都心ルートはシャドウープライス(陰のマイナスの費用)が測りがたい。そもそも負の経済効果(社会的費用)など計算しがたいと普通は考える。
(中略)
政府が本当に羽田都心ルートを導入したいなら、都民の健康と生命保護のために、正確なCO2や窒素酸化物排出量の提示、環境アセスメントと同時に政府の責任としてこのマスク費用を出費すべきだ。強いて言えばこれは社会的損失の防止の費用(社会的費用の第二定義)にほかならない。それに加えて騒音、落下物、航空機事故、これら生命を脅かすマイナス経済効果も算出すべきだ。もちろん、もはやこんなことは貨幣価値によって計算不可能である。つまりこういったバカげた国策は直ちに取り消すべきだというのが結論である。(以下略)

(P220-223/第5章 克服の道はあるか)

※都の有識者検討会「東京と日本の成長を考える検討会」は18年10月の報告書のなかで、第5滑走路整備の総事業費(中央値7,950億円)の投資に対して経済波及効果約2兆円と謳っている。

本書の構成

6章構成。全280頁。

  • 第1章 日本をむしばむ新自由主義
  • 第2章 アベノミクスと新型コロナウイルス拡大
  • 第3章 「東京五輪二〇二〇」の不安
  • 第4章 羽田都心ルートの謎
  • 第5章 克服の道はあるか
  • 終章 新たな地球環境文明を目ざして

日本型新自由主義の破綻: アベノミクスとポスト・コロナの時代

あわせて読みたい

2024年6月1日、このブログ開設から20周年を迎えました (^_^)/
Copyright(C)マンション・チラシの定点観測. All rights reserved.