東京都の防災会議地震部会は5月25日、首都直下地震の新たな被害想定を公表。最も被害の大きい「都心南部直下地震」は23区の約6割で震度6強以上に達し、死者は最大6148人になるという。
報告書には都心南部直下地震の震度分布図は掲載されているが、想定死者数の分布図は掲載されていないので、23区を中心に想定死者数を可視化してみた。
首都直下地震、都が10年ぶり被害想定(日経)
東京都の防災会議地震部会は5月25日、首都直下地震の新たな被害想定を公表。最も被害の大きい「都心南部直下地震」は23区の約6割で震度6強以上に達し、死者は最大6148人になるという。
首都直下地震、最大死者6100人 都が10年ぶり被害想定
専門家らで構成する東京都の防災会議地震部会(部会長=平田直・東京大学名誉教授)は25日、首都直下地震の新たな被害想定を公表した。最も被害の大きい「都心南部直下地震」は23区の約6割で震度6強以上に達し、死者は最大6148人、帰宅困難者は452万5949人と想定。タワーマンション増加など、社会インフラの変化に合わせた被害イメージも示した。
(中略)
都内で最大の被害が想定される23区を震源とする都心南部直下地震が冬の夕方、風速8メートルの状況下で起きた場合の死者は3600人が地震の揺れ、2400人は火災が原因とみている。建物被害が大きい足立区の死者が795人と都内の市区町村別で最多となる可能性がある。(以下略)
(日経新聞 5月25日)
報告書、想定死者数の分布図は掲載されていない
東京都が公表した「首都直下地震等による東京の被害想定 報告書」は、全部で475枚、9つの章で構成されている。
- 第1章 新たな東京の被害想定の概要
- 第2章 想定対象とする地震動等
- 第3章 想定される被害(区部・多摩地域の被害量)
- 第4章 想定される被害(島しょ地域 被害量)
- 第5章 想定される被害(定性的な被害の様相)
- 第6章 被害想定手法
- 第7章 防災・減災対策による被害軽減効果の推計
- 第8章 被害想定における今後の課題と展望
- 第9章 参考
都民としては、どのような被害が想定されているのか気になるところであろう。
特に、最大の被害が想定される23区を震源とする都心南部直下地震が冬の夕方、風速8メートルの状況下で起きた場合の死者数3600人の分布。どの地域に多いのか? マンション選びの際には頭に入れておきたい情報だ。
日経記事では、足立区の死者795人が都内最多とされているが、人口当たりではどうなのか。報告書には、都心南部直下地震の建物被害などの分布図は掲載されているが(次図)、想定死者数の分布図は掲載されていない。
報告書3-5頁より
23区の想定死者数について、深掘りしてみよう。
死者600人超は足立・大田・世田谷なのだが…
報告書には「区市町村別の被害想定一覧表」のなかに、「都心南部直下地震 ア.冬・夕方、風速8m/s」として、死者数の6区分(ゆれ建物被害、屋内収容物、急傾斜地崩壊、火災、ブロック塀等、屋外落下物)のデータが掲載されている(次図)。
報告書3-67頁より
上記データを元に23区の想定死者数を可視化したのが次図。
600人を超えるのは足立区、大田区、世田谷区。特に、世田谷区と大田区では火災による死者が多いのが目立つ。
夜間人口10万人あたりの想定死者数を可視化(23区)
世田谷区は23区内で夜間人口が943,664人と最も多いので(昼間人口では港区が940,785人で最多)、都心南部直下地震の発生を想定した「冬の夕方」の想定死者数が多くなっている。そこで、夜間人口10万人あたりの想定死者数を計算し、可視化したのが次図。
上位の3区(荒川・墨田・足立)の夜間人口10万人あたりの想定死者数は120人に迫る。これら3区は火災よりも建物被害のほうが多いのが特徴。木蜜地域の耐震化が急がれる。
あと、意外なのが千代田区。夜間人口10万人あたりで見るとワースト5位。夜間人口が66,680人と、他区と比べて一桁少ないのが要因。
さらに可視化すべく、想定死者数を地図に落としてみた(次図)。
夜間人口10万人あたりの想定死者数を地図化したのが次図。
※千代田区の死傷者数が多いのは夜間人口他区と比べて一桁少ないのが要因。
上のグラフや地図の元となったデータを次表にまとめておいた。
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