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量子コンピュータが活躍!?『首都圏大震災』幻冬舎

NECでコンピュータと機械翻訳システムの開発に携わった後、東邦大学理学部にて人工知能や自然言語処理の研究を行うという異色のキャリアを持つ牧野武則博士の著作『首都圏大震災』幻冬舎(2018/2/22)を読了。

 

3年前に相模トラフのプレート境界で地震が発生する予兆を掴んでから、首都東京を襲う地震発生後までの世界が描かれている。

開発中の量子コンピュータ「ディープソート」使って、地震発生時期Xデイを絞り込み、人的被害、経済的損失の軽減に貢献していく。

 

著者がコンピュータに精通していることに加え、長谷川 昭東北大学名誉教授(地震学)が小説の内容を検証していることが、ストーリー全体に説得力をもたらしている。

小説の内容がリアルなだけに、どこまでが既に実現している技術で、どこからが未開発な技術なのか、その境界は素人には判断不能……。 


もくじ

コンピュータネットワーク上に仮想の東京を作る

チームバベルのリーダー近藤(経産省)が首都圏地震対策室のヘッドである木田審議官(経産省)に、次世代ネットワークで統合される行政システムを説明するくだり。

 「結論からいいます。コンピュータネットワーク上に仮想の東京を作るんです。東京が災害にあっても、何事もなかったかのように経済活動をコントロールするんです。これは、前もって行われるネットワークを利用した首都圈の機能を地方に移転することと関係します」

 「何をいっているのか分からん」
 「主な目的は、経済、財政の国際的混乱を避けるためです。圧倒的な情報処理能力を持ったコンピュータによって、未然に世界経済の崩壊を防止し、将来にわたる日本の再建、復興を円滑に進めるためです」

 首都圈再建チームの一人が、権藤の話を引き継いで、
 「つまりこうです。首都機能の地方移転も含めて、新たな東京の再建を、震災前から始めることとします。災害に対処できる強剱な街づくりです。その実は、震災後そのまま復旧される東京と地方移転の構想となるわけです。そのために必要な費用や物資の確保は、厳格な指針に沿って、コンピュータの支援のもとに行う。無論、綱渡りですが、見込みはあります」

(P154/11.チームバベル)

アスペリティとして表示されていた部分が消えていく

相模トラフで観測されていたアスペリティの固着部分が、巨大地震の発生をキッカケに剥がれていく(消えていく)様子が3次元映像として描かれている場面。

 仙台の第ニディープソートセンターでは、ホログラムディスプレイを見ながらプレート境界の様子を観察していた研究員が、突然悲嗚を上げた。アスペリティとして表示されていた部分が乱れて消えていく。それと同時に緊急地震速報が鳴った。

 世界で初めて地震の破壊の進行を、一瞬だが目にした研究員たちは、ディスプレイに赤く表示されているプレートを唖然として見ていた。速報からおよそ四十秒後、次第に大きくなる震度3強のゆっくりした揺れを仙台でも感じた。

 揺れが収まるとすぐに研究員たちは、騒然とする中、関東圈の観測機器の状態を検証する作業を始め、半分程度の観測点は正常に稼働していることを確認した。これから行わなければならないことを研究員たちは承知していた。余震の兆候を把握するためにプレートの状態を監視して、得られた情報を、気象庁とさいたま新都心のチームノアに逐次伝えていた。

(P241/15.地震発生)

ディープソートが為替市場をコントロール

巨大地震発生後、ディープソート(量子コンピュータ)が為替市場の安定化に向けてコントロールする姿が描かれている。

 大阪の北浜に移されていた財務省では、チームバベルの経済再建チームのサポートを受けて、世界経済の混乱を避ける必死の努力がなされていた。最初に、円を売る動きが加速した。ディープソートは、それらの動きをほぼ完全に読みきっていた。下降が踊り場に達した時、ディープソートはさらに下降するように誘導し、円売りを加速させた。売り越した時点で、一気に大量の円買いをディープソートが行い、わけがわからず狼狽した市場は、さらに大混乱になった。

 世界のディーラーや投資家たちの動向を十分に分析していたディープソートは、その混乱を利用して主導権を取り、為替市場の安定化に向けてコントロールを行った。もともと十分な外貨準備がある日本は、王様ゲームで、使えるカードに不足はなかった。結果として復興に必要な大量のドルを蓄積していった。各国のディーラーたちは、呆然と指標の動きを示すディスプレイを見ていたが、その裏で大きな力が働いているのではないかと疑いを持ち始めていた。

(P250-251/15.地震発生)

本書には専門用語が多数出てくる。それらが深く理解できなくても、意味するところは読者の知識に応じてイメージはできる。

何度も登場するジャズボーカリストの裕美や、奮闘半ばで事故死した仲間の遺体をカヤックに乗せて葬送するシーンなど、ストーリーとしても飽きさせない工夫が凝らされている。

本書の構成

全286頁。

  • プロローグ
  • 1.城ヶ島
  • 2.旧友との再会
  • 3.海鳴り
  • 4.ディープソート
  • 5.プレート観測
  • 6.アスペリティ
  • 7.メタンハイドレート
  • 8.審議官
  • 9.首都圏地震対策室
  • 10.チームパンドラ
  • 11.チームバベル
  • 12.チームノア
  • 13.Ⅹデイに向けて
  • 14.Ⅹデイ
  • 15.地震発生
  • 16.首都圈の復興
  • 17.仙台
  • エピローグ

首都圏大震災

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2020年6月1日、このブログ開設から16周年を迎えました (^_^)/
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