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羽田新ルート|港区に寄せられた意見、743名・13万文字を可視化

港区は3月22日、羽田新ルートに係る「ご意見一覧」を公表した。

743名の意見は約12万9,800文字と膨大な量なので、全体像を把握すべく、テキストマイニング手法を駆使し可視化してみた。

※実態調査の実現に至る経緯等については「羽田新ルート|在住・在勤・在学者を対象とした実態調査始まる(港区)」を参照。


もくじ

高齢者からの意見が多い

港区は3月22日、羽田新ルートに係る「ご意見一覧」を公表した。

21年年11月21日から22年1月31日まで区内在住・在勤・在学者を対象にネット、郵送・ファックス・直接持参で受け付けた743名の意見が、地区・年代・在住別に表示されている(次図)。

ご意見一覧

 

地区別では高輪地区がダントツで多く、年代別では高齢者が多い(50代23%、60代16%、70代23%)(次図)。

羽田新ルートに係る実態調査結果 (年齢・地区別の意見提出者数)

 

武井雅昭 港区長は3月18日、国土交通省を訪れ、743名の意見と共に、要望書「羽田空港機能強化に係る要請について」を提出。同要望書のなかに、743名の意見についても若干触れられている。

743名の意見は約12万9,800文字と膨大な量なので、全体像を把握すべく、テキストマイニング手法を駆使して可視化してみよう。

※フリーソフト「KH Coder」を使うことで、意見として記された文章を単語や文節で区切り、それらの出現回数や出現傾向などを解析することができる。

地区的な特徴

まずは、港区を通過する羽田新ルートの位置確認。港区は5つの地区(芝・麻布・赤坂・高輪・芝浦港南)に分かれている。特に、高輪・芝浦港南・麻布地区は羽田新ルートの影響を大きく受ける(次図)。

芝・麻布・赤坂・高輪・芝浦港南
港区人口25万人突破」を可視化分析」に加筆

 

743名の意見の中から、特徴的な言葉上位10語を地区別に整理した結果を次表に示す。

羽田新ルートの影響を大きく受ける高輪・芝浦港南地区とそうでない地区との違いが鮮明に出ている。

  • 高輪・芝浦港南地区
    航空機騒音に係る特徴語(騒音・音・窓)が上位10語に含まれている
  • 麻布地区
    航空機騒音と危険性に係る特徴語が上位10語に含まれている
  • 上記以外の地区
    危険性に係る特徴語(落下物・事故・危険)が上位10語に含まれている

地区別「特徴語」上位10語

 

次に、対応分析(コレスポンデンス分析)の結果を次図に示す。特徴語(上位60語)をクロス集計した結果を可視化することで、743名の意見を俯瞰することが期待できる。

地区的な特徴(上位60語)
(円の大きさは特徴語の出現頻度の多さを、四角の大きさは件数の多さを示す)

対応分析の結果の解釈の仕方は様々ある。筆者は次のように、横軸は「騒音影響」、縦軸は「事故・落下物」を示していると解釈した。

  • 羽田新ルートの騒音影響を大きく受ける高輪・芝浦港南地区は図の右側に、両地区の次に騒音影響を受ける麻布地域は中央に位置している。
  • 羽田新ルートの騒音影響が少ない赤坂・芝地区は、図の左側(事故・落下物)に位置している。

 

以上のことから、航空機騒音の影響を受けている地区は騒音に係る意見が多く、そうでない地区は落下物・事故に係る意見が多いということが浮かび上がる。

年齢的な特徴

743名の意見の中から、特徴的な言葉上位10語を年代別に整理した結果を次表に示す。

年代による違いが鮮明に出ている。

  • 20代以下
    羽田新ルートの経済効果に係る特徴語(経済・効果)が上位10語に含まれている
  • 現役世代(30~50代)
    航空機騒音に係る特徴語(騒音・窓)が上位10語に含まれている
  • 引退間近世代(60代)
    航空機騒音危険性に係る特徴語が混在している
  • 引退世代(70代以上)
    危険性に係る特徴語(落下物・事故・危険)が上位10語に含まれている

年代別「特徴語」上位10語

 

次に、対応分析(コレスポンデンス分析)の結果を次図に示す。

年齢的な特徴
(円の大きさは特徴語の出現頻度の多さを、四角の大きさは件数の多さを示す)

対応分析の結果の解釈の仕方は様々ある。筆者は次のように、横軸は「安全性/騒音」、縦軸は「現役/引退」を示していると解釈した。

上述したとおり、年代による違いが鮮明に出ている。

以上のことから、現役世代は航空機騒音に係る意見が多く、引退世代は危険性に係る意見が多いということが浮かび上がる。

外国人の意見

743名の意見のなかに6件の英語が含まれている。内訳を次表に示す。

英語6件の内訳

 

英語6件につき、機械翻訳により、和英比較をまとめておいた(PDF:675KB)。

6件ともすべて羽田新ルートを問題視している。

たとえば、高輪地区に在住の50代の外国人からの意見は次のとおり。

羽田空港への新飛行ルートがもたらす悪影響は、港区民の間でも賛否両論を呼んでいます。なぜなら、新路線に最も近い場所に住み、働き、勉強している人たちが、最も悪影響を受けるからです。しかし、港区の他の地域では、その悪影響は少ないのです。しかし、港区はコミュニティとケアの精神を推進しています。新路線に反対する声をひとつにまとめたいものです。

まとめ

743名の意見(約12万9,800文字)の文章を対象にテキストマイニング手法を駆使することで、次のような全体像を把握することができた。

  • 地区的な特徴
    航空機騒音の影響を受けている地区は騒音に係る意見が多く、そうでない地区は落下物・事故に係る意見が多い。
  • 年齢的な特徴
    現役世代は航空機騒音に係る意見が多く、引退世代は危険性に係る意見が多い。

あわせて読みたい

テキストマイニング手法を駆使して、羽田新ルートに係る膨大な意見を分析した過去記事。

※日付は投稿日。

2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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