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羽田新ルート|在住・在勤・在学者を対象とした実態調査始まる(港区)【追記あり】

港区HPの新着情報に11月21日付けで羽田新ルートの意見募集が掲載されたことをご存じだろうか(次図)。

で羽田新ルートの意見募集

港区は11月21日、羽田新ルートに係る実態調査を開始。「広報みなと」11月21日号と区HPを使って、その旨を周知し始めた。

※投稿21年11月21日(追記22年3月10日


もくじ

実態調査の実現に至る経緯

自治体独自で住民等を対象に羽田新ルート問題の実態調査をするのは初めてのことである。航空機騒音の影響が大きい品川区でさえ、実現していない。それだけ画期的なことである。なぜ、港区では実現することができたのか。

港区議会では羽田新ルートを推進する自公と都民ファーストを合わせると18人。全議員数34人の過半数を1人だけ上回るという微妙なパワーバランスである。「みなとの空を守る会」が6月17日に提出した「羽田都心飛行ルート下の住民・勤労者を対象とした実態調査と調査結果の公表を求める請願」に対して、交通・環境等対策特別委員会 で都民ファースト議員が「採択」賛成に回ったことから請願が採択されることになったのである(次表)。

交通・環境等対策特別委員会における請願表明の内訳

※詳細は、「都民ファースト議員が「採択」賛成に」参照。

意見の提出方法

意見は、22年1月31日(月)までに、郵送・ファックス・直接持参、またはネット経由で提出することになっている。

具体的には「広報みなと」11月21日号の2枚目に、「羽田空港機能強化について ご意見募集」が掲載されている(次図)。左側に区内を通過する経路図と料金着払いのラベル。右側に「区の取り組み」と「国の取り組み」。右下に応募方法「意見募集について」が記されている。

※区HPにも同様の情報「羽田空港機能強化についてご意見をお寄せください」がアップされている。

「広報みなと」11月21日号

意見募集について 

区では、羽田空港機能強化に関するご意見を募集し、国に届けていきます。

意見募集の対象者

  • 区内在住・在勤・在学者

意見の提出方法

  • 港区ホームページから提出できます。また、郵送・ファックスまたは直接、ご意見と併せて、区内在住・在勤・在学の別、住所(町名・丁目のみ)、年代を明記の上、令和4年1月31日(月)までに、左記の料金受取人払いの様式を利用し、送付してください。詳しくは、港区ホームページをご覧ください。
  • ※郵送料無料の意見はがきを、環境課、各総合支所協働推進課、各港区立図書館、各いきいきプラザ等に置いています。

※住所は「町名・丁目のみ」の記入なので、区内在住・在勤・在学でなくても提出可能となってしまっている。

ネット経由の提出、正当性が担保されていない!?

意見はネット経由でも提出することができる。

東京電子自治体共同運営協議会が運用している「東京共同電子申請・届出サービス」の「羽田空港機能強化に関するご意見入力フォーム」をクリックし、必要事項を入力し、「回答内容確認」ボタンを押す(次図)。修正事項が無ければ「回答する」ボタンを押して完了。とっても簡単!

羽田空港機能強化に関するご意見入力フォーム

氏名も校名も社名も入力する必要はないし、所在地は「町丁目(例:港区新橋1丁目)のみ」の入力となっている。これでは港区と全く関係ない人が投稿しても検証のしようがない。プライバシーを確保することは重要だが、集まった意見の正当性が担保されていない。

港区議会の「21年第3回定例会」決算特別委員会の総括質疑(10月5日)で、福島宏子議員(共産)に「(固定化回避)検討会で結論が出る前に、航路下の皆さんの意見を集約することが重要」と迫られて、武井区長は「区民の意見を聞き国に届けるための効果的な方法について検討しております」と答弁していた。

効果的な方法を検討した結果、意見の正当性が担保されていない手法が採用されたとすれば、決算特別委員会(9月24日)で風見利男 議員(共産)の質問をノラリクラリとかわしていた環境課長の本気度が問われることになるのでは。

※国交省に実態調査結果を提出しても、「港区の在住・在勤・在学者以外の意見が混在している可能性があるので、参考扱いにもならない」と言われないことを祈る……。

【追記】実態調査結果

※追記22年3月1日(更新22年3月10日)

港区はHPで22年2月23日、「羽田空港機能強化のご意見募集の結果」を公開。

この度、ご意見募集の結果がまとまりましたので、お知らせします。

区は、区民の皆さんの貴重なご意見を、国に対して確実に届けます。

寄せられた743人からの意見として、「地区別の意見提出者数」「在住・在勤・在学別の意見提出者数」「意見の種類別件数」の内訳が掲載されている。

それぞれの数字を可視化して、雑感とともに以下に示す。

※筆者が港区に「意見提出方法の内訳」を照会したところ3月9日、区HPに同内訳データが公開されたので、以下のグラフを差し替えた(3月10日)。

意見提出方法:はがき65%、電子申請34%

寄せられた743人のうち、はがきが486人(65%)と最も多い。次い電子申請250人(34%)。その他5人(0.7%)は「ご意見はがき」を除く郵便によるもの。FAX2人(0.3%)。

羽田新ルートに係る実態調査結果 (意見提出方法の内訳)

意見提出方法のデータが開示されたことにより、投稿意見の正当性を確認できるようになった。すなわち、ハガキやFAX、その他(「ご意見はがき」以外の郵便)により寄せられた意見は虚偽情報が含まれている可能性は低い。逆に言えば、電子申請の場合は1人が複数の投稿をしたり、所在地区を偽装したりできるので、投稿内容を100%信頼することはできない。

地区別の意見提出者数:高輪地区ダントツ

寄せられた743人のうち、高輪地区が452人(60.8%)とダントツで多い。

高輪地区は、C滑走路到着ルートが通過する高輪・白金を含むので、意見数が突出しているのであろう。ただ、高輪地区の人口は61,117人(22年1月1日現在)だから、寄せられた意見は0.74%に過ぎない。

高輪地区の意見が住民からのものなのか、通勤・通学者からの意見なのか、あるいは本当に高輪地区と関係がある人からの意見なのかも分からないものの、1%にも満たない意見では説得力がないのではないか(どこの誰でもネット経由で投稿自由だから、「参考扱いにもならない」と国交省に受け止められないだろうか……)

※意見提出方法のデータが開示されたことで、高輪地区の意見提出者数の68%(307人)はハガキで、31%(141人)が電子申請であることが明らかになった。少なくとも高輪地区から寄せられたとされる意見の7割近くは同地区から発信されたものであると言えそうだ(電子申請の場合は高輪地区を偽装することができる)

羽田新ルートに係る実態調査結果 (地区別の意見提出者数)

在住・在勤・在学別の意見提出者数:在学からの意見はたったの2人

寄せられた743人のうち、港区在住者が587人(79.0%)とダントツで多い。次いで、港区以外(その他)からの意見107人(14.4%)。

学生(在学)からの意見はたったの2人(0.3%)。若者は羽田新ルートへの関心が低いのか……

羽田新ルートに係る実態調査結果 (在住・在勤・在学別の意見提出者数)

意見の種類別件数:1位騒音、2位新ルートの見直し

寄せられた意見の合計は1,483件(1人が複数意見を記載する場合があるため、提出者数と意見の件数は一致しない)。

寄せられた意見を種類別に分類すると、「騒音」が486件(32.8%)と最も多く、次いで「新ルートの見直し」385件(26.0%)。

羽田新ルートに係る実態調査結果 (意見の種類別件数)

「新ルートで可」38件(2.6%)とあるのは、羽田新ルートは特に問題ないという意味なのか。

※港区からの回答(3月3日)

ご質問にありました、「意見の種類別件数(単位:件)として、新ルートで可」とは、新ルートの運用に関して反対ではないとの趣旨のご意見になります。

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