不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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マンション管理受託戸数、減少/増加した会社

普通に考えれば、親会社が分譲したマンションは子会社が管理受託することになるのだが、必ずしもそうではないようだ。
マンション総合管理受託戸数ランキング上位10社のうち、親会社が分譲会社である7社につき、可視化分析してみた。


もくじ

1位日本ハウズイング、2位大京アステージとの差は年々拡大

マンション総合管理受託戸数ランキング上位10社の過去12年間のマンション管理戸数の推移を可視化したのが次のグラフ。

日本ハウズイングの増加は著しく、17年に大京アステージを抜きその差は年々広がっている。

大京アステージ、東急コミュニティー、三菱地所コミュニティ、長谷エコミュニティ、三井不動産レジデンシャルサービルは、グループ会社が販売したマンションを自動的に管理受託しているから自ずと戸数が多くなる。独立系の管理会社である日本ハウズイングが管理受託戸数を伸ばしているのは、低コストを武器に他社の受託戸数を侵食しているからなのであろう。

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詳しくは、「マンション管理会社、総合管理受託戸数ランキング2021」参照。

管理受託戸数が減少/増加した会社

上図の元データとなった「マンション管理新聞」20年5月25日号によれば、上位の業者の管理受託戸数が伸びていないのは、分譲マンションの供給戸数の減少と管理委託費見直しの動きがあるからだという。住友不動産建物サービスの1割近く解約解除と三菱地所コミュニティの見直しの例が記されている。

(前略)上位15社は総じて前回から受託戸数の伸びを鈍化させている。その要因の一つが分譲マンションの供給の減少だ。(中略)受託戸数の伸びが鈍化したもう一つの大きな理由が「管理委託費見直し」の動きだ。あくまでも管理継続を前提としながら、昨今の人手不足や人件費高騰、協力会社などからの値上げ要求を受け、業務の効率化や経費の見直しなどの経営努力だけでは原価増加分を吸収できないとして、管理組合に「管理委託費値上げ」「管理仕様の変更」等の要求を実施した結果の現れだ。

 また、費用面以上に『管理組合の要求・注文が不合理」だとして「現状ではサービス品質が保てない」と、管理会社の方から契約辞退を申し出る動きも見られた。

 昨年の調査では住友不動産建物サービスが受託管理組合の「1割近く」に契約解除の申し入れを実施したことで、大幅に受託戸数を減らした。今年の調査でもこの動きが続いている状況が見れる。

 三菱地所コミュニティも前年から1906戸減らしたのも「管理委託契約書や管理仕様の見直し」の動きの結果といえよう。
 親会社である三菱地所レジデンスのマンション供給状況(18年3614戸、19年3365戸)を考慮すると、単純に5千戸強ほど、既存マンションの受託管理戸数を減らした形だ。(以下略)

(マンション管理新聞 21年5月25日号)


普通に考えれば、親会社が分譲したマンションは子会社が管理受託することになる。従って、その子会社が管理受託する戸数は年々増加していくはずだ。ところが、最近は上述したように見直し・解除が行われるので、必ずしも管理受託戸数が増高しているとは限らないということになる。

実際にはどうなのか。親会社が過去4年間(17~20年)に分譲したマンションの戸数と子会社が翌年4年間(18~21年)に管理受託した戸数との関係を可視化してみた。

【メモ】
  • マンション管理受託戸数データは、マンション管理新聞に掲載されているデータに拠った。
  • 分譲戸数データは、不動産経済研究所が毎年2月に発表する「全国マンション市場動向」に掲載されている「売上・事業主別発売戸数(全国)」に拠った。
管理受託戸数が減少した会社(3社)

上位10から独立系2社と長谷工コミュニティを除いた7社のうち、管理受託戸数が減少しているのは3社。以下、順に説明する。

野村不動産/野村不動産パートナーズ

野村不動産パートナーズの管理受託戸数は4年間(18年~21年)で15,397戸増加。野村不動産が4年間(17~20年)に分譲した戸数は18,114戸なので、その差▲2,717戸。
つまり、これまでに野村不動産が分譲したマンションのうち約2,700戸の管理受託が子会社以外の管理会社に変更になったと考えられる。

変更理由としては、日本ハウズイングなど、低価格な提案(これを「リプレイス」という)を仕掛ける独立系の管理会社への変更や、昨今の人手不足による人件費高騰を背景とした契約辞退の可能性が考えられる。

分譲戸数と管理受託戸数との関係 野村不動産/野村不動産パートナーズ

三井不動産R/三井不動産Rサ一ビス

三井不動産レジデンシャルサ一ビスの管理受託戸数は4年間(18年~21年)で▲125戸減少。三井不動産レジデンシャルが4年間(17~20年)に分譲した戸数は11,684戸なので、その差▲11,809戸。
つまり、これまでに三井不動産レジデンシャルが分譲したマンションのうち約1万2千戸の管理受託が子会社以外の管理会社に変更になったと考えられる。

変更理由としては、低価格な提案(これを「リプレイス」という)を仕掛ける独立系の管理会社への変更や、昨今の人手不足による人件費高騰を背景とした契約辞退の可能性が考えられる。

分譲戸数と管理受託戸数との関係 三井不動産R/三井不動産Rサ一ビス

住友不動産/住友不動産建物サ一ビス

住友不動産建物サ一ビスの管理受託戸数は4年間(18年~21年)で▲10,120戸減少。住友不動産が4年間(17~20年)に分譲した戸数は23,756戸なので、その差▲33,876戸。
つまり、これまでに住友不動産が分譲したマンションのうち約3万4千戸の管理受託が子会社以外の管理会社に変更になったと考えられる。

変更理由としては、低価格な提案(これを「リプレイス」という)を仕掛ける独立系の管理会社への変更だけなく、昨今の人手不足による人件費高騰を背景とした契約辞退の可能性も考えられる。

分譲戸数と管理受託戸数との関係 住友不動産/住友不動産建物サ一ビス

管理受託戸数が増加した会社(4社)

上位10から独立系2社と長谷工コミュニティを除いた7社のうち、管理受託戸数が減少しているのは4社。以下、順に説明する。

大京/大京アステージ

大京アステージの管理受託戸数は4年間(18年~21年)で5,072戸増加。大京が4年間(17~20年)に分譲した戸数は4,573戸なので、その差499戸。

大京アステージは、親会社の分譲マンション以外にも営業して管理受託戸数を伸ばしているということなのだろうか。

分譲戸数と管理受託戸数との関係 大京/大京アステージ

東急不動産/東急コミュニティー

東急コミュニティーの管理受託戸数は4年間(18年~21年)で11,170戸増加。東急不動産が4年間(17~20年)に分譲した戸数は5,848戸なので、その差5,322戸。

東急コミュニティーは、親会社の分譲マンション以外にも営業して管理受託戸数を伸ばしたのか、あるいは東急コミュニティーグループ間で管理受託戸数の融通を行った結果なのか。

分譲戸数と管理受託戸数との関係 東急不動産/東急コミュニティー

東急コミュニティーグループ間で管理受託戸数の融通を行った可能性を考えたのは、東急コミュニティーグループ全体の管理受託戸数525,694 戸に対して、東急コミュニティー単体の管理受託戸数は341,642戸(65%)と必ずしも高くないからである(次図)。

マンション総合管理戸数の推移(上位11グループ)

三菱地所レジデンス/三菱地所コミュニティ

三菱地所コミュニティの管理受託戸数は4年間(18年~21年)で13,659戸増加。三菱地所レジデンスが4年間(17~20年)に分譲した戸数は11,847戸なので、その差1,812戸。

三菱地所コミュニティは、20年までは親会社の分譲マンション以外にも営業して管理受託戸数を伸ばしていたが、21年には昨今の人手不足による人件費高騰を背景とした契約辞退し始めた可能性が考えられる。

分譲戸数と管理受託戸数との関係 三菱地所レジデンス/三菱地所コミュニティ

大和ハウス工業/大和ライフネクスト

大和ライフネクストの管理受託戸数は4年間(18年~21年)で18,793戸増加。大和ハウス工業が4年間(17~20年)に分譲した戸数は7,466戸なので、その差11,327戸。

大和ライフネクストは、親会社の分譲マンション以外にも営業して管理受託戸数を伸ばしたのか、あるいは大和ハウスグループ間で管理受託戸数の融通を行った結果なのか。

分譲戸数と管理受託戸数との関係 大和ハウス工業/大和ライフネクスト

大和ハウスグループ間で管理受託戸数の融通を行った可能性を考えたのは、大和ハウスグループ全体の管理受託戸数376,168戸に対して、大和ライフネクスト単体の管理受託戸数は275,140戸(73%)と必ずしも高くないからである(次図、再掲)。

マンション総合管理戸数の推移(上位11グループ)

まとめ

親会社が過去4年間(17~20年)に分譲したマンションの戸数と子会社が翌年4年間(18~21年)に管理受託した戸数との関係を可視化分析した結果は、以下の通りである。

親会社が分譲した戸数よりも管理受託戸数が減少したのは、次の3社。
減少理由としては、低価格な提案(これを「リプレイス」という)を仕掛ける独立系の管理会社への変更だけなく、昨今の人手不足による人件費高騰を背景とした契約辞退の可能性も考えられる。

  • 野村不動産/野村不動産パートナーズ
  • 三井不動産R/三井不動産Rサ一ビス
  • 住友不動産/住友不動産建物サ一ビス

親会社が分譲した戸数よりも管理受託戸数が増加したのは、次の4社。
親会社の分譲マンション以外にも営業して管理受託戸数を伸ばしたということだけではなさそうだ。

  • 大京/大京アステージ
  • 東急不動産/東急コミュニティー
  • 三菱地所レジデンス/三菱地所コミュニティ
  • 大和ハウス工業/大和ライフネクスト

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2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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