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質問主意書(津波・洪水時における首都圏の地下街・地下鉄の浸水対策)

第201回国会(20年1月20日~6月17日)の衆議院の質問主意書207件(5月27日現在)のなかに、198番目として首都圏の地下街・地下鉄の浸水対策に係る次の質問主意書が埋もれている。

青山雅幸 衆議院議員(無所属)が5月14日に提出した質問主意書に対する政府答弁書が公開されたのでひも解いてみた。

読みやすいように、一問一答形式に再構成しておいた。
※以下長文。時間のない方は、「質疑応答のポイント」と文末の「雑感」をお読みいただければと。


質疑応答のポイント

青山雅幸 衆議院議員(写真:青山まさゆき公式ウェブサイト)
青山雅幸 衆議院議員(1期、立民⇒無所属、弁護士、東北大法学部卒、58歳)

関東周辺で地震が頻発し、先日は千葉県・茨城県で太平洋プレートと北米プレートのプレート境界付近で地震が発生しました。空白地である東京で、内陸直下型大地震が起こることが懸念されています。また近年、記録的な豪雨により洪水等の大災害も多く発生をしています。

このような状況の中、津波が発生した場合、また、記録的豪雨時に地震が発生し荒川などの堤防が決壊した場合、大きな人的被害の発生が想定されるのが地下街、地下鉄の浸水であります。

そこで、首都圏の地下街・地下鉄における、津波、堤防決壊時の浸水対策、避難誘導に関して、政府の見解を伺います。

問1:ハード面での浸水防止整備の進捗率?

地下街、地下鉄への浸水対策として止水板や防水ゲート等のハード面の整備が進められているが、想定されるレベルの津波、洪水に対するハード面での浸水防止整備の進捗率はいかほどと認識しているか。

答1:地下街21/24箇所、地下駅202/285駅

お尋ねの「想定されるレベルの津波、洪水に対するハード面での浸水防止整備」の意味するところが必ずしも明らかではないが、国土交通省が平成30年9月に全国の地下街(公共の用に供される地下歩道(地下駅の改札口外の通路、コンコース等を含む。)と当該地下歩道に面して設けられる店舗、事務所その他これらに類する施設とが一体となった地下施設(地下駐車場が併設されている場合には、当該地下駐車場を含む。)であって、公共の用に供されている道路又は駅前広場の区域に係るものをいう。以下同じ。)を対象に行った調査によると、首都圏に所在する地下街は24箇所であり、そのうち当該地下街の地下街管理会社等から当該地下街の出入口若しくは換気・通気口のいずれかにおいて又はこれらのいずれにおいても止水板の設置等の浸水防止対策を実施済みであるとの回答があったものは21箇所である。

また、同省が令和元年6月に全国の鉄道事業者を対象に行った調査によると、首都圏の地下鉄事業者(東京地下鉄株式会社、東京都交通局及び横浜市交通局をいう。以下同じ。)が設置する地下駅は285駅であり、そのうち当該地下駅の出入口の止水板の設置等の浸水防止対策の実施が完了しているとの回答があったものは202駅である。

問2:大規模な浸水、乗客の避難誘導に関して

地下鉄では、大規模な浸水が起こり、かつ、車両が駅と駅の間で動けなくなった場合、乗客が避難をする時間的余裕がなく、多くの人命が失われることが想定されます。乗客の避難誘導に関してどのような対策が取られているか、以下の点について政府の見解を伺います。

問2-1:地震発生時の地下鉄の脱線防止対策?

地震発生時の地下鉄の脱線防止対策はどの程度進んでいるか。

答2-1(&2-3):一定の揺れを検知、列車停止システムの導入完了

(後述)

問2-2:停電時に直近の駅まで、システムの導入の進捗率?

地震発生直後、停電時に地下鉄が直近の駅まで速やかに運行できるシステムの導入の進捗率はいかほどか。

答2-2:蓄電池を搭載1事業者2路線、変電所に蓄電池を設置3事業者5路線

お尋ねの「システムの導入の進捗率」の意味するところが必ずしも明らかではないが、首都圏の地下鉄事業者が運行している路線のうち、蓄電池を搭載しており停電時にも走行可能な車両を導入しているものは1事業者の2路線であり、変電所に蓄電池を設置しており停電時にも車両への電力供給を可能としているものは3事業者の5路線の全線又は一部区間であると承知している。

問2-3:地震により軌道が損傷、脱線防止策?

地震により軌道が損傷した場合、地震発生直後に運行させた電車が脱線する恐れがあるが、その防止策は取られているか。

答(2-1&)2-3:安全の確認を行った上で、列車の運行を再開

地震発生時の地下鉄の脱線対策としては、地震発生時に速やかに列車を停止させること及び施設の耐震補強を行うことが有効であると考えており、首都圏の地下鉄事業者においては、沿線に設置した地震計で一定の揺れを検知した場合に速やかに列車を停止させるシステムの導入及び施設の耐震補強の実施が完了していると承知している。


さらに、首都圏の地下鉄事業者においては、地震発生後、その震度等に応じて、施設の点検等の安全の確認を行った上で、列車の運行を再開することとしていると承知している。

問2-4:JRや私鉄、地下鉄の車両同様の対策?

JRや私鉄から地下鉄への乗り入れが進んでいるが、それらの車両も地下鉄の車両同様の対策が取られているか

答2-4:停電時にも走行可能な車両の導入が進められている

お尋ねの「地下鉄の車両同様の対策」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、首都圏の地下鉄事業者が運行する路線に乗り入れている一部の鉄道事業者においては、蓄電池を搭載しており停電時にも走行可能な車両の導入が進められていると承知している。

問2-5:駅と駅の中間で運行不能、乗客全員を避難させる対策?

地震発生後、車両が駅と駅の中間で運行不能となった場合、乗客が安全な場所に避難するためにかなりの時間を要する。避難のために必要と想定される時間内に乗客全員を避難させる対策はどの程度進んでいるか

答2-5:避難させる訓練を定期的に行っている

首都圏の地下鉄事業者においては、地震発生時に列車が駅間に停車した場合等の非常時を想定し、車内に避難に必要な降車用はしご等を配備するとともに、トンネル内に非常灯等を整備しており、また、乗務員等による乗客の降車誘導により、乗客を最寄りの駅等の安全な場所まで避難させる訓練を定期的に行っていると承知している。

問3:今後どのような政策?

質問1、2の状況を踏まえて、首都圏の地下街、地下鉄における津波、堤防決壊時の浸水対策に関して、また地下鉄乗客の避難誘導に関して、今後どのような政策を講じていくつもりか。

答3:支援を通じて対策を促進してまいりたい

お尋ねの「首都圏の地下街、地下鉄における津波、堤防決壊時の浸水対策」については、地下街の浸水対策としては、地下街管理会社等による浸水対策の実施を促進するために、国土交通省において「地下街等における浸水防止用設備整備のガイドライン」や「地下街等に係る避難確保・浸水防止計画作成の手引き」(PDF:1.9MB)を策定し、技術的助言を行うとともに、地下街防災推進事業等により、地下街への雨水等の流入を防止する設備の整備等に対して支援を行っているところであり、引き続き、こうした支援を通じて対策を促進してまいりたい。


また、地下鉄の浸水対策としては、首都圏の地下鉄事業者による浸水対策の実施を促進するために、同省において、都市鉄道整備事業等により、地下駅の出入口の止水板の設置やトンネルへの防水扉の設置等に対して支援を行っているところであり、引き続き、こうした支援を通じて対策を促進してまいりたい。


お尋ねの「地下鉄乗客の避難誘導」については、2の5についてでお答えした対応が適切に行われるよう、引き続き、首都圏の地下鉄事業者を指導してまいりたい。

雑感

津波や洪水が発生したとき、首都圏の地下街や地下鉄は大丈夫なのか。青山議員の質問は3つの観点(浸水対策、避難誘導策、今度の取り組み)から構成されている。

これに対して、政府の回答は、いつものことながら句点(。)が少なくてとても読みづらい。この読みづらい文章に辛抱強く目を通していくと、非の打ち所がないように見えた回答のなかに、不安材料が潜んでいることに気づく

停電時にも車両が走行可能かどうかに対する政府の次の回答である

答2-2

(略)蓄電池を搭載しており停電時にも走行可能な車両を導入しているものは1事業者の2路線であり、変電所に蓄電池を設置しており停電時にも車両への電力供給を可能としているものは3事業者の5路線の全線又は一部区間であると承知している。

答2-4

(略)首都圏の地下鉄事業者が運行する路線に乗り入れている一部の鉄道事業者においては、蓄電池を搭載しており停電時にも走行可能な車両の導入が進められていると承知している。 

ようするに停電対策は100%完了していないのである。

政府回答が不誠実なのは、「1事業者の2路線」や「3事業者の5路線」、「一部区間」や「一部の鉄道事業者」としか言っておらず、分母を明らかにしていないことである。

ちなみに、日本地下鉄協会のホームページ「日本の地下鉄」に列挙されている首都圏の地下鉄は次の8社20路線。

  • 公営地下鉄(2社6路線)
    都営地下鉄(4路線)、横浜市営(2路線)
  • 民営・準公営地下鉄(6社14路線)
    東京メトロ(9路線)、北総鉄道(1路線)、埼玉高速鉄道(1路線)、東葉高速鉄道(1路線)、横浜高速鉄道(1路線)、東京臨海高速(1路線)

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