不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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質問主意書(タワーマンション等の浸水対策)

第200回国会(19年10月4日~12月9日)の衆議院の質問主意書186件のなかに、121番目としてマンションに係る次の質問主意書が埋もれている。

早稲田夕季 衆議院議員(立憲民主党)が12月2日に提出した質問主意書に対する政府答弁書が公開されたのでひも解いてみた。

読みやすいように、一問一答形式に再構成しておいた。
※時間のない方は、「質疑応答のポイント」と文末の「雑感」をお読みいただければと。


質疑応答のポイント

早稲田夕季
早稲田夕季 衆議院議員(1期、立憲民主党、 早大法卒、61歳)

神奈川県川崎市中原区の武蔵小杉駅周辺のタワーマンションでの、台風19号による浸水被害を受けて、タワーマンション等の浸水対策指針を策定するため、国土交通省と経済産業省は、2019年11月27日に「建築物における電気設備の浸水対策のあり方に関する検討会」第1回(以下、「第1回検討会」という。)を開催した。
今後12月から来年2月にかけて検討を行い、来春のとりまとめ、公表をめざすとのことなので、以下質問する。

問1:基本は浸水のおそれのない高さに電気設備を配置するべき

第1回検討会の資料4、本検討会における検討の進め方(案)によれば、検討する浸水対策として、止水板や水密扉の設置が挙げられているが、そもそもその設備が電動なのでは停電時に動かない上、完全に水を防ぐことは短時間であっても非常に難しい。


新築時の対策にせよ、既存ストックの対策にせよ、基本は浸水のおそれのない高さに電気設備を配置するべきで、新築時は建物自体のマウンドアップの検討や浸水リスクのない高さへの電気設備の配置、既存ストックにあっても浸水リスクのない高さへの電気設備の移転を基本と考えるべきではないか。政府の見解をあきらかにされたい。

答1:今後の検討会において議論を行う予定

令和元年11月27日に国土交通省及び経済産業省が共同で開催した「建築物における電気設備の浸水対策のあり方に関する検討会」(以下「検討会」という。)の資料4は、検討会で取りまとめる予定のガイドラインに記載することが想定される建築物における電気設備の浸水対策等を例示したものであり、当該ガイドラインの具体的な内容については、今後の検討会において議論を行う予定である。

問2:「原則として地上1階、あるいは地下1階」、なぜこのような設備基準?

一般社団法人日本電気協会の配電規程の供給用変圧器室の設備基準によれば、集合住宅における供給用変圧器室は、「原則として地上1階、あるいは地下1階とする」とあるが、なぜこのような設備基準になっているのか
政府として承知しているところをあきらかにされたい。

答2(&3&5):民間団体の策定した基準、詳細を承知しておらず

(後述)

問3:「高層住宅」、電気設備が地上2階以上にある割合?

問2で述べた「原則として地上1階、あるいは地下1階とする」という基準は、1971年に策定以来、一度も変更されていないようだが、その結果、立地地域の水害の危険度を問わず全国のほとんどのマンションの供給用変圧器室が地上1階あるいは地下1階に設置されているのではないか

建設省が1995年に策定した「長寿社会対応住宅設計指針」においては、「6階以上の高層住宅にはエレベーターを設置する」とあるが、1995年以降に建設された6階以上のいわゆる「高層住宅」において、供給用変圧器室などの電気設備が地上2階以上にある割合はどのくらいか

政府として承知しているところをあきらかにされたい。

答(2&)3(&5):政府として承知していない

(後述)

問4:なぜ区分所有の集合住宅だけその取り組みが遅れている?

他方で、国や自治体の庁舎においては建築設備計画基準大規模災害発生時における地方公共団体の業務継続の手引き(5.4MBに基づき、新築時に電気設備を想定される最高水位より高い位置に配置したり、既存の建物でも電気設備を屋上等に移設する取り組みが進んでいると承知している。


また一般社団法人不動産協会が2012年に出した「都市の防災機能を高めるために不動産業の果たすべき役割研究会報告書」(2MBで、オフィスビルもマンションも新築・既存問わず、水害ハザードマップ等の想定に基づき、水害対策を推進するとあるにもかかわらず、なぜ区分所有の集合住宅だけその取り組みが遅れていると考えているか

答4:詳細を承知しておらず

区分所有の共同住宅における浸水対策の取組状況についてはその詳細を承知しておらず、お尋ねについてお答えすることは困難である。

問5:日本電気協会、浸水のおそれとは?

一般社団法人日本電気協会の配電規程の供給用変圧器室の設備基準には、集合住宅における供給用変圧器室は、「浸水のおそれのない場所に設置する」とあるが、ここでいう浸水のおそれとは、具体的に何を基準におそれがあるかないか判断することとなっているのか


洪水による浸水想定域などを記した市区町村作成のハザードマップがその判断基準であるべきと考えるが、実際にはそのように運用されていないのではないか。
政府として承知しているところをあきらかにされたい。

答(2&3&)5:民間団体の策定した基準、政府として承知していない

御指摘の「一般社団法人日本電気協会の配電規程の供給用変圧器室の設備基準」については、民間団体の策定した基準であり、その制定経緯や運用状況等の詳細を承知しておらず、当該基準に関するお尋ねについてお答えすることは困難である。


お尋ねの「1995年以降に建設された6階以上のいわゆる「高層住宅」において、供給用変圧器室などの電気設備が地上2階以上にある割合」については、政府として承知していない。

問6:水害リスクの情報提供、法令による義務付けを

2019年7月24日、全国知事会から、洪水による浸水想定域などを記した市町村作成のハザードマップについて、宅地建物取引業法を改正して、不動産業者が住宅購入者に説明することを義務付けるべきとの提言を受け、7月26日に国土交通省は公益社団法人全国宅地建物取引業協会に対し、不動産取引時にハザードマップを活用して水害リスクの情報提供を行うよう依頼する通知を行ったが、通知では不十分であり、法令による義務付けをすみやかに行うべきではないか。

答6:課題を聴取しているところ

「法令による義務付けをすみやかに行うべきではないか」とのお尋ねについては、不動産取引時にハザードマップを提示して水害リスクの情報提供を行うよう令和元年7月26日に協力依頼を行った公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会、公益社団法人全日本不動産協会、一般社団法人全国住宅産業協会、一般社団法人不動産協会及び一般社団法人不動産流通経営協会から、情報提供に際しての課題を聴取しているところであり、この結果等を踏まえ、検討を深めてまいりたい

雑感

台風19号による武蔵小杉駅周辺のタワーマンション浸水被害を受けて、国交省・経産省は11月27日に「建築物における電気設備の浸水対策のあり方に関する検討会」第1回を開催。

今後、下記検討スケジュールで、ガイドラインを取りまとめるとされている(「資料4 本検討会における検討の進め方(案)」より)。

  • 11月27日:検討の趣旨、進め方
  • 12月19日:ガイドライン骨子、事例紹介①
  • 1月~2月:ガイドライン案、事例紹介②
  • 3月:ガイドライン(事例集を含む)のとりまとめ
  •  2020年春:ガイドライン(事例集を含む)を関係業界等へ周知

不動産業者が住宅購入者にハザードマップの説明を義務化することに対して、政府は「(業界からの)情報提供に際しての課題を聴取しているところであり、この結果等を踏まえ、検討を深めてまいりたい」とお茶を濁している。

3月にまとまるガイドラインに要注目。

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