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質問主意書(水害ハザードマップ)

第200回国会(19年10月4日~12月9日)の参議院の質問主意書125件のなかに、98番目として水害ハザードマップに係る次の質問主意書が埋もれている。

嘉田由紀子 参議院議員(無所属)が12月5日に提出した質問主意書に対する政府答弁書が公開されたのでひも解いてみた。

読みやすいように、一問一答形式に再構成。
※時間のない方は、「質疑応答のポイント」と文末の「雑感」をお読みいただければと。


質疑応答のポイント

嘉田由紀子 参議院議員
嘉田由紀子 参議院議員(1期、無所属、 京大院、ウィスコンシン大学大学院修了、69歳)

平成30年7月の西日本豪雨、令和元年10月の台風19号による暴風・豪雨など、広範な地域にわたり、河川氾濫や土砂災害を生じさせ、浸水被害をはじめとする深刻な被害をもたらす水害が多発している。

 政府には、こうした水害による犠牲者をなくし、財産的な被害を最小化するために、早急な対応が求められている。


 そこで、浸水被害から住民の暮らしを守る対応策として、第1に、中小河川や内水の氾濫による浸水を含む最新の浸水想定区域を掲載した精密なハザードマップの早急な作成が求められるとともに、第2に、住民に対して水害が生じる可能性を周知するために、土砂災害想定区域などと同様に、浸水被害想定区域についても、宅地建物の取引の中で「重要事項」として説明することが必要である。


 例えば、全国知事会は、令和元年7月23日の「来たるべき大規模災害に備え教訓に基づき行動するための提言」の中で、「地域の災害リスクを住民に浸透させるための具体的な手法として、宅地建物取引業法を改正し、市町村が作成したハザードマップの説明を、取引時に住宅購入者等へ説明が義務付けられる重要事項として位置づけること」を要望している。


この要望を受け、国土交通省は、同月26日に、公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会会長に対し、取引の相手方が水害リスクを把握できるように、宅地建物取引業者が「市町村が作成・公表する水害(洪水・内水・高潮)ハザードマップを提示し、当該取引の対象や宅地や建物の位置等を情報提供」するよう要請した。


 また、令和元年11月8日の参議院予算委員会で、赤羽一嘉国土交通大臣は、ハザードマップの活用について、「ハザードマップがもっと周知をされ(中略)宅地の制限、規制等々があれば被害を最小化できた」と答弁し、住民に対するハザードマップの周知とハザードマップに基づく土地利用規制の重要性を示した。


 そこで、住民の生命と暮らしを守るための水害ハザードマップの活用につき、以下質問する。

問1:ハザードマップ整備、来年の梅雨時期に間に合うように

令和元年10月の台風19号による河川氾濫の浸水被災地においても、水害ハザードマップが作成されていなかった自治体があったと報道されている。

前記の参議院予算委員会では、平成31年3月末時点で、2015年に改正された水防法に基づき、都道府県が管理する1,627河川中54.3パーセントに当たる883河川で浸水想定区域の指定を見直し済みであり、また、全国1,347市区町村中、水防法改正前の降雨規模で洪水ハザードマップを公表済みなのは98パーセントに当たる1,323市区町村、水防法改正後の降雨規模で洪水ハザードマップを公表済みなのは33パーセントに当たる447市区町村との答弁がなされた。


政府は、令和2年度末までに、全市区町村におけるハザードマップ整備を目指すとするが、来年の梅雨時期に間に合うように、早急な整備を支援するべきではないか。政府の見解を求める。

答1:令和2年度末までに・・・おおむね完了することを目指してまいりたい

水防法(昭和24年法律第193号。以下「法」という。)第14条第1項に規定する洪水浸水想定区域(以下「洪水浸水想定区域」という。)をその区域に含む市区町村において、法第15条第3項の規定に基づき、法第14条第1項に規定する想定最大規模降雨(以下「想定最大規模降雨」という。)に対応した水害ハザードマップの作成が促進されるよう、国土交通省においては、防災・安全交付金による財政的な支援に加え、同省作成の「水害ハザードマップ作成の手引き」の周知、水害ハザードマップ作成や活用に関する相談窓口の設置、水害ハザードマップ作成支援ツールの提供等の技術的支援を行っており、令和2年度末までに洪水浸水想定区域をその区域に含む市区町村による想定最大規模降雨に対応した水害ハザードマップの作成がおおむね完了することを目指してまいりたい

問2:浸水想定区域図の迅速な策定、全省庁が連携して支援体制を構築するべき

都道府県による浸水想定区域図の迅速な策定を支援するために、全省庁が連携して支援体制を構築するべきだと考えるが、政府の見解を求める。

答2:国土交通省においては、・・・財政的な支援、技術的支援を行っている

御指摘の「全省庁が連携して」の意味するところが必ずしも明らかではないが、都道府県において、法第14条第1項の規定に基づき、想定最大規模降雨により法第11条第1項又は第13条第2項の規定により指定した河川が氾濫した場合に浸水が想定される洪水浸水想定区域の指定がなされるよう、国土交通省においては、防災・安全交付金による財政的な支援に加え、洪水浸水想定区域図作成マニュアル等の提供等の技術的支援を行っている

問3:水害ハザードマップの説明も重要事項説明に含めるべき

宅地建物取引業法、同施行令、同施行規則を早急に見直し、水害ハザードマップの説明も重要事項説明に含めるべきだと考えるが、政府の見解を求める。

答3:宅建業法施行規則の改正の必要性も含め、検討を深めてまいりたい

「水害ハザードマップの説明も重要事項説明に含めるべき」との御指摘については、不動産取引時に水害ハザードマップを提示して水害リスクの情報提供を行うよう令和元年7月26日に協力依頼を行った公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会、公益社団法人全日本不動産協会、一般社団法人全国住宅産業協会、一般社団法人不動産協会及び一般社団法人不動産流通経営協会から、情報提供に際しての課題を聴取しているところであり、この結果等を踏まえ、宅地建物取引業法施行規則(昭和32年建設省令第12号)の改正の必要性も含め、検討を深めてまいりたい

問4:宅建業者による水害ハザードマップの活用状況

国土交通省は、令和元年7月26日に「水害ハザードマップの周知に関する不動産関係団体への協力について(依頼)」を発出し、都道府県に対して、宅地建物取引業者から問い合わせがあった場合に、適切に対応するように通知している。

その後、都道府県の対応状況及び宅地建物取引業者による水害ハザードマップの活用状況を、政府はどのように評価しているか

答4:宅建業者、水害リスクの情報提供を適切に行っていると認識

都道府県においては、「水害ハザードマップの周知に関する不動産関連団体への協力について」(令和元年7月26日付け国土動第47号の2・国水環第36号の2・国水下流第9号国土交通省土地・建設産業局不動産業課長、水管理・国土保全局河川環境課長及び水管理・国土保全局下水道部流域管理官連名通知)に基づき、水害ハザードマップの入手の方法や内容等について宅地建物取引業者かち問合せ等があった場合には、適切に対応するよう管内市区町村に対し周知を行っていると認識している。

また、宅地建物取引業者においては、三(答3)についてで述べた協力依頼に基づき、水害ハザードマップを活用した水害リスクの情報提供を適切に行っていると認識している。 

雑感(なぜ、答弁延期だったのか)

内閣は質問主意書を受け取った日から7日以内に答弁しなければならいことになっていて、7日以内に答弁できない場合には、その理由と答弁できる期限を明示しなければならない(国会法 第75条)。

12月5日に提出された嘉田議員の質問主意書は遅くとも12月12日までに答弁書が提出されなければならないはずなのがだ、内閣からは「12月17日まで答弁延期」の手続きが取られている(次図)。

12月17日まで答弁延期
水害ハザードマップの作成及び宅地建物取引における活用に関する質問主意書


なぜ、答弁が延期されたのか?

関係者が多忙ということもあろうが、答弁書の作成内容の調整に時間を要したのではないだろうか。そのように考えた理由は2つある。

1点目は、「政府は、令和2年度末までに、全市区町村におけるハザードマップ整備を目指すとするが、来年の梅雨時期に間に合うように、早急な整備を支援するべき」という質問への対応に頭を抱えたからなのではないか。

10月12日に関東地方に上陸した台風19号の甚大な被害は首都圏民の記憶が生しい。ところが、全市区町村におけるハザードマップ整備はなかなか進まない。国土強靭化を重点施策に掲げている政府としては迅速な姿勢を示したかったのだろうが「おおむね完了することを目指してまいりたい」と答えるのが精一杯だった

2点目は、「水害ハザードマップの説明も重要事項説明に含めるべき」という質問への対応に、関係業界との調整に時間を要したのではないか。

早稲田夕季衆院議員が提出した「タワーマンション等の浸水対策指針の早期策定に関する質問主意書」(12月2日質問書提出、12月13日答弁書受理)では、「法令による(水害リスクの情報提供)義務付けをすみやかに行うべき」との質問に対して、政府は「情報提供に際しての課題を聴取しているところであり、この結果等を踏まえ、検討を深めてまいりたい」と応じていた。

ところが、今回の嘉田議員への答弁では、「宅地建物取引業法施行規則(昭和32年建設省令第12号)の改正の必要性も含め、検討を深めてまいりたい」と、法改正の可能性含みの踏み込んだ発言をしているのである。  

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