新築マンションの価格が高騰するにつれて、販売価格を抑えるために専有面積を小さくする傾向があることについては、このブログでもエビデンスを示しながら度々紹介してきた。
たとえば、次のグラフ。23区の新築マンションが過去10年間でより狭く、より高くなったことを示している。
「過去19年間の「首都圏新築マンション市場動向」を可視化」より
東京23区の新築分譲マンションの平均階高の推移を可視化
コストダウン方策として最も簡単でかつ効果が大きいのは専有面積を小さくすることなのだが、その次に効果が大きいのは階高を小さくすること。階高を小さくすることで、躯体工事費が減少し(コンクリートや鉄筋の量が減少)、内装工事費も減少(内装面積が減少)するからだ。その結果、天井高は低くなってしまう。
だが、その実態はあまり知られていない。残念ながら新築マンションの階高に係る公的な統計データは見当たらないからだ。
そこで東京都環境局のHPに公開されている「マンション環境性能表示」をひも解き、物件ごとの「工事着手年月日」「建築物の高さ」「階数」などのデータをもとに「階高」(≒建築物の高さ÷階数)を算出し、可視化することにした。
東京23区の新築分譲マンション998件につき、「20階建て以上」と「20階建て未満」に分けて、平均階高の推移を描いたのが次図。
意外なことに、平均階高は圧縮されるどころか、「20階建て以上」の新築マンションについてはむしろ大きくなっていたのである。
- 「20階建て以上」の平均階高:
漸増傾向にあり、最近では3.7mに達しようとしている。「20階建て未満」との差は徐々に開いている。 - 「20階建て未満」の平均階高:
リーマンショック(08年9月)の翌年をボトムに増加するものの、11年以降は概ね3.1mで推移している。
【メモ】
- 同HPに公開されているのは「完了の届出が提出されてから概ね5年間」(環境局環境都市づくり課 建築物担当 5月20日メール回答)ということなので、2年前に調査したデータと今回調査したデータ合わせて998件のデータをもとに分析することとした。
- 05年と20年のデータ数は少なかったので、グラフの表示範囲に含めていない。
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