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政府答弁書|廃墟化マンション解体、慎重な検討が必要!?

第198回国会(19年1月28日~6月26日)の衆議院の質問主意書309件のなかに、239番目として廃墟化マンションの解体に係る次の質問主意書が埋もれている。

松平浩一 衆議院議員(立憲民主党)が6月18日に提出した質問主意書に対する政府答弁書が公開されたのでひも解いてみた。

読みやすいように、一問一答形式に再構成しておいた。
※以下長文。時間のない方は、「質疑応答のポイント」と文末の「雑感」をお読みいただければと。


質疑応答のポイント

松平浩一 衆議院議員
松平浩一 衆議院議員(1期、 立憲民主党、 弁護士、上智大卒、44歳)

2019年5月29日の国土交通省の発表によれば、築40年超のマンションは現在81.4万戸であり、ストック総数に占める割合は約1割となっている。この数字は、10年後には約2.4倍の197.8万戸、20年後には約4.5倍の366.8万戸となる見込みである。

また、国土交通省の「平成30年度マンション総合調査」(2019年4月26日公表)によれば、「所在不明・連絡先不通住戸(組合員(区分所有者)名簿により所有者が直ちに判明しておらず、または判明していても所有者に連絡がつかないもの)」の割合は、全体の3.9%を占めるとされている。

マンションの老朽化や所在不明・連絡先不通住戸の増加は、マンションの管理不全、廃墟化の原因ともなっており、適切な対策を怠ると、居住用建物としての用をなさないことになるばかりか、崩落等により周囲への危害を発生させる可能性がある。
以上を踏まえ、以下質問する。

平成30年度マンション総合調査
マンション総合調査の調査結果からみたマンション居住と管理の状況(P4)|国交省

質問1:全員一致の要件を緩和、制度の創設が必要

居住の用に供するには限界となったマンションについて建て替えをすることは、経済的に見合わない場合には難しい。その場合、区分所有権を解消し敷地を売却するという方法も選択肢となりうるが、この場合には全員一致が必要という条件があり実現困難である。

この点、被災マンションと耐震強度不足のマンションについては、5分の4の賛成で区分所有権の解消と敷地の売却ができることとなっている(被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法及びマンションの建替え等の円滑化に関する法律参照)。

今後は、被災マンションや旧耐震基準のマンション以外の一般のマンションについても、全員一致の要件を緩和し区分所有関係の解消と敷地売却が可能となる制度の創設が必要と考えるが、政府の見解を示されたい。

回答1:再生に向けた対策の検討を進めてまいりたい

マンション及びその敷地等の売却について、被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法(平成7年法律第43号)第9条第1項又はマンションの建替え等の円滑化に関する法律(平成14年法律第78号)第108条第1項に規定する場合に該当するときは、マンションの区分所有者等の各5分の4以上の多数で決議することができるとされているが、これらの場合に該当しないときは、一般に、当該マンションの区分所有者の全員の合意が必要であるとされているところである。

政府としては、老朽化した御指摘の「一般のマンション」の再生は重要な課題であると認識しており、引き続き、その再生に向けた対策の検討を進めてまいりたい

質問2:実情に合わせた空き家対策特別特措法の改正も必要

滋賀県野洲市では、廃墟化した1972年築のマンションにおいて建物の崩落やアスベスト検出等周辺への危害が発生していたが、管理組合の実体もなく、区分所有者による管理や建て替え等が困難であることから、同市は空家等対策の推進に関する特別措置法(以下、「空き家対策特別特措法」という。)に基づく「特定空家等」に指定の上、行政代執行による解体をする方針を決定している。

この事案ではマンションの全室が空室であったため空き家対策特別措置法が適用できたが、居住者がいるマンションについても、管理不全のために危険な状態となることも十分に想定される。

したがって、居住者がいるマンションであっても、周辺への危害が発生する等の客観的状況がある場合で、かつ、管理組合や区分所有者らによる自主的な解決が困難な場合には、代執行手続を利用可能とするなどマンションの実情に合わせた空き家対策特別特措法の改正も必要だと思料するが、政府の見解を示されたい。

回答2:慎重な検討が必要である

空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号)は、居住その他の使用がなされていないことが常態である建築物等を対象としたものである。

一方、御指摘のような「居住者がいるマンション」に対し、同法に定められているような御指摘の「代執行手続」を設けることについては、慎重な検討が必要であると考えている。

質問3:居住者がいるマンションが管理不全、地方公共団体の対応?

居住者がいるマンションが管理不全のために危険な状態となった場合、地方公共団体としてはどのように対応するのが適切であると考えるか政府の見解を示されたい。

回答3:情報提供や技術的支援等を行うことが重要

御指摘のようなマンションについては、地方公共団体においてその実態の把握を行うとともに、その所有者等に対して、管理の適正化や建替え等の円滑化に向けた情報提供や技術的支援等を行うことが重要であると考えられる。

雑感(慎重な検討が必要!?)

質問書(約1千300文字)と答弁書(約700文字)は別々の文書なので、上記のように一問一答形式に再構成しないと、内容を的確に把握することはできない。

居住者がいるマンションであっても、周辺への危害が発生する等の客観的状況があり、自主的な解決が困難な場合には、代執行手続できるよう空き家対策特別特措法の改正してはどうかという松平議員の提案。これに対して政府は「慎重な検討が必要である」という回答。

「慎重な検討が必要である」というのはお役所言葉としては、「何もやらない」と同義。昨日のブログ記事「政府答弁書|老朽化マンション解体費用問題は先送り!? 」でも触れた、政府お馴染みのお役所言葉である。

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