4月21日の統一地方選挙では、羽田新ルートが通過する区のうち、次の7つの区長が改選となる。
羽田新ルート反対を公約に掲げることは、どの程度有効なのか。
豊島区の高野之夫区長(81)は2月19日、6選を目指して出馬を表明。現職高野氏(羽田新ルート容認派)に挑む対立候補に勝算はあるのか、シミュレーションしてみた。
※対立候補は未定(3月19日現在)。
- 現区長は過去5回、得票率58~71%で圧勝
- 対立候補は、羽田新ルート下の有権者票100%獲得でも勝てない
- 羽田新ルート周辺の有権者数3.6万人・15%(推定)
- 羽田新ルート周辺住民は救われない…
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現区長は過去5回、得票率58~71%で圧勝
何票取れば区長選を制することができるのか? まず、過去5回の区長選挙の結果を可視化してみよう(次図)。
過去5回の区長選は投票率42~47%。高野氏は、得票数5.2~6.2万票、得票率58~71%で圧勝。高野氏がこれまでと同様の推薦(自民・公明・民主・社民党)を受けるとなると、対立候補は得票数6万票を超えないと当選は難しい。
※得票率=得票数÷得票総数、絶対得票率=得票数÷当日有権者数
4月21日の統一地方選挙の投票率が従前並みであれば、自公の得票率が5割を超えているので対立候補が勝てる可能性は低い(次図)。
多選批判と81歳という高齢への懸念は争点の一部になるかもしれないが――
羽田新ルートを「容認」している現区長に勝つためには、対立候補は非自公票と無党派層の票を取り込むことが必須となる。
対立候補は、羽田新ルート下の有権者票100%獲得でも勝てない
対立候補は羽田新ルート反対を公約に掲げ、羽田新ルート周辺の有権者の票を100%取り込むことができても、それだけでは勝てないというのがシミュレーションの結果だ。
筆者の独自調査(詳細は後述)によれば、豊島区内の羽田新ルート500m範囲の現在の有権者数は3.6万人(推定)。過去5回の現区長の得票数は5.2~6.2万票だから、羽田新ルート下3.6万人を100%獲得しただけでは当選することはできない(次図)。
羽田新ルート周辺の有権者数3.6万人・15%(推定)
羽田新ルート周辺の有権者数を推定する。
結論を先にいえば、羽田新ルート500m範囲の現在の有権者数は3.6万人、豊島区の全有権者数の15%(推定)である。
以下、3.6万人を推定した手順を記しているので、時間がない方は次の見出し「羽田新ルート周辺住民は救われない…」まで読み飛ばしていただいても構わない。
豊島民15%(4万人)が騒音の影響を受けることについては、以前このブログで紹介した。
「豊島民15%(4万人)が騒音影響」より
※ピンク色のエリアは、羽田新ルート直下から水平距離で500mの範囲を示している。
「豊島区民15割(4万人)」という数字は、15年10月1日時点の国勢調査のメッシュ・データ(250mメッシュ)がもとになっている。
では、4月の統一地方選挙時点での、有権者数のうち何人くらいが羽田新ルートの影響を受けるのか?
15年国勢調査のメッシュデータには、総人口のほか、「20歳以上人口総数」と「外国人人口総数」も公開されている。ただ、残念ながら18歳以上の人口総数までは分からない。
そこでまず、「総人口」に占める「外国人人口総数」の割合を計算し、「20歳以上人口総数」から「外国人人口総数」の割合を差し引いたデータを「有権者数」として、羽田新ルート500m範囲のメッシュデータを集計した(次表)。
羽田新ルート500m範囲には、15年の国勢調査時点で豊島区全有権者数の16%(3.4万人)が住んでいることが確認できた。
では、現時点では、羽田新ルート500m範囲には何人くらい住んでいるのか? 15年の国勢調査時点3.4万人をベースに、その後の人口増と選挙権が18歳まで拡大されたぶんを補正してみよう。
補正に用いたのは、豊島区HPで公開されている住民基本台帳人口などのデータ。
最新データ(17年10月1日現在)で補正した結果、羽田新ルート500m範囲の現在の有権者数は3.6万人となった(次表)。
上表の推定根拠は次のとおり。
【羽田新ルート500m範囲の有権者3.6万人の推定根拠】
現在の羽田新ルート500m範囲の有権者数=2015年の羽田新ルート500m範囲の有権者数×人口割増(18年10月1日/15年10月1日)×18歳割増(選挙権拡大ぶん)
3.45万人×1.017×1.014=3.56万人
- 人口割増:1.017=258,101人÷253,891人
- 18歳割増:1.014=1+3,319人(18年10月1日18~19歳)÷229,839人(同18歳以上)
羽田新ルート周辺住民は救われない…
高野氏(羽田新ルート容認派)がこれまでと同様の推薦(自民・公明・民主・社民党)を受けるとなると、対立候補が勝てる可能性は低い。
羽田新ルート周辺の有権者3.6万人は、羽田新ルートの「見直し」や「撤回」を公約に掲げる区議会議員候補が選ばれることでしか、羽田新ルート反対の意思を反映することができない。
ただ、羽田新ルート反対派区議が多少増えただけでは、容認派首長の動きをけん制することは難しい。羽田新ルート周辺住民は、豊島区有権者の投票行動だけでは救われない可能性が高いのである。
ちなみに、羽田新ルートが通過する地域は、下記の5地域。
- 南長崎3丁目、長崎3丁目、長崎4丁目、千早3丁目、千早4丁
※本試算には慎重を期しているが、データの精度について保証するものではない。これらの情報をあなたが利用することによって生ずるいかなる損害に対しても一切責任を負うものではない。念のため。