不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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マンションポエム2019(千葉・埼玉・神奈川編)

先日、「マンションポエム2019(東京23区編)」を投稿し、普段見ない言葉遣いや漢字、今後日常語になるかもしれない新語・造語などを紹介した。

今回はさらに、千葉・埼玉・神奈川のマンションポエムを調べてみた。


もくじ

調査対象はSUUMOの新築マンション292件

調査対象としたのはSUUMOに掲載されている、千葉県・埼玉県・神奈川県の新築マンション366件(19年1月24日現在)のうち、マンションポエムの元になりそうなキャッチコピーが掲載されている292件(79.8%)とした。

各県の内訳は次のとおりである。
※( )内は、マンションポエムの元になりそうなキャッチコピーがない物件や、既に完売済みで物件情報そのものが掲載されていない物件数を含む件数。

  • 千葉県:52件(62件)
  • 埼玉県:80件(87件)
  • 神奈川県:160件(217件)

なお、物件によっては、トップページの画面が自動的に切り替わり、キャッチコピーが複数表示されるケースがあることから、原則、インパクトのあるキャッチコピーを対象とした。

以下の分析には、23区のときと同様、テキストマイニングができるフリーソフト「KH Coder」を利用した。

「特徴語上位10語」比較

「KH Coder」を使って、地域ごとに抽出した特徴的な言葉のうち上位10語を次表に示す。地域ごとの特徴語が異なることが確認できる。

たとえば、千葉の1位である「暮らし」は、埼玉にはなく、神奈川では6・7位。また、千葉の3位である「街」は、埼玉では2位、神奈川では4位。さらに、千葉の「邸宅」は6位だが、埼玉では3位、神奈川ではなし。

地域別の特徴語上位10語

マンションポエムの特徴

3県のマンションポエムをつぶさに見ていくと、次の3つの表現に地域性が見られることに気づかされる。

  • 古めかしい表現を用いたマンションポエム
  • 駅チカ/駅前を強調したマンションポエム
  • 地名が入ったマンションポエム

念のため、各表現が含まれるマンションポエムの割合を次図に示す。次図からは、埼玉だけが異端であることくらいしか分からないのだが……。

各表現が含まれるマンションポエムの割合


以下、順に説明していこう。 

千葉:軽快なカタカナ表現が多い

千葉では、古めかしい表現を用いたマンションポエムの割合(4%)は、23区(3%)とあまり変わらない。

(古めかしい表現)

  • たおやかに。(ウィザースレジデンス蘇我)
  • 格調高い意匠を纏った美しき邸宅。(シティテラス松戸)


どちらかと言えば、明るく、軽快なイメージを抱かせるマンションポエムが目立つ。田舎臭さを避けるために(失礼!)、カタカナの効果を狙っているポエム。

(千葉に多い、軽快なカタカナ表現)

  • 千葉を見晴らすビューティフルライフという贅沢。(クレアホームズ千葉センタークロス)
  • 快適なアクセスが、アクティブな暮らしを叶える。(クレアホームズ幕張駅前)
  • 洗練された南仏スタイルデザインを追求。(ルピアコート市川妙典)


都心へのアクセスは、23区マンションより劣るのは明らかだが、それでも駅近を謳う。

(駅近/駅前を強調)

  • 「稲毛」駅徒歩5分の真実。(アーバンパレス稲毛)
  • 本八幡 圧巻の駅近(エクセレントシティ本八幡駅前サザンライズ)
埼玉:駅近/駅前を強調

埼玉は、他の地域と比べると異端。「古めかしい表現を用いたマンションポエム」や「駅近/駅前を強調したマンションポエム」の割合が大きい一方で、「地名が入ったマンションポエム」の割合は小さい。

(古めかしい表現)

  • 。氷川参道の静謐と新都の華やぎを。(ザ・パークハウス大宮吉敷町)
  • 上質な時間へといざなう、迎賓のしつらえ。(クレアホームズ武蔵浦和 プレミアフォート)


(駅近/駅前を強調)

  • 駅近を超えた駅前をあなたに(シティインデックス与野駅前)
  • 駅前庭園邸宅、新たな暮らしの花が舞い上がる。(エステムコート川口並木サウスガーデン)


(地名入り)

  • 所沢の高みへ(シティタワー所沢クラッシィ)
  • 静謐と緑景に抱かれた川口並木で、新たな人生の門を開く。(ライオンズ川口並木グランゲート)


(埼玉固有)

「さいたま新都心」や「レイクタウン(大相模調節池)」といった、埼玉でしか謳えない固有のポエム。

  • 新都心から、日本の幸せを変えよう。(SHINTOCITY(シントシティ))
  • レイクタウンに、新たな街並を。(ガーデンハウス越谷レイクタウン)
神奈川:「海」「丘」がキーワード

神奈川では、古めかしい表現を用いたマンションポエムの割合が小さい(1%)。

(駅近/駅前を強調)

  • 駅前という優越を(ヴェレーナ横浜反町駅前)
  • 駅徒歩2分にして、この空、この開放感。(プレミスト東林間さくら通り)


(地名入り)

  • まだ見ぬ鎌倉が、ここにある。(オハナ西鎌倉)
  • 湘南、江ノ島。日常がリゾートになる。(クリオ片瀬江ノ島)
  • 厨子を誇る真邸。(ザ・パークハウス逗子)


(神奈川固有)

「海」(9件)や「丘」(8件)をキーワードにした、明るく軽快なイメージを抱かせるポエムが目立つ。

  • に抱かれた陽光きらめく街。 ( リムテラス鵠沼海岸 )
  • と暮らす日々を、軽やかに楽しむ。 ( グランレ・ジェイド湘南江ノ島R134 )
  • ずっと、離れたくないになる。 ( インプレスト青葉台 )
  • の新しいシンボルが、優雅な輝きに満ちる。 ( ジェイグランディア日吉 )

購入層の違いがマンションポエムの違いに表れている!?

対応分析(コレスポンデンス分析)の結果を次図に示す。特徴のある言葉(特徴語)の上位60語を可視化することで、マンションポエムの地域的な特徴の理解が進むことが期待できる。

対応分析(上位60語)

対応分析結果の解釈の仕方は色々ある。筆者は次のように、横軸は「都市・自然環境」、縦軸は「時間」を示していると解釈した。その理由は次の通りだ。

  • 図の左側に「都心」「邸/邸宅」、右側に「潤い」「緑」「空」といった都市環境と自然環境に係る言葉が分布していることから、横軸は「都市・自然環境」を示していると解釈した。
  • 図の上側に「日々」「誕生」「日常」「未来」、下側に「時間」「新しい」「人生」といった時間に関わる言葉が分布していることから、縦軸は「時間」を示していると解釈した。

横軸、縦軸を解釈してみたものの、「だから何?」と言われそうだ。

 

そこでさらに考えてみた。

上図のなかで、23区・3県の中心分布(赤い四角で表示されている)は、千葉と埼玉のマンションポエムは近い関係にあることを示唆している。これは何を意味しているのだろうか?

ヒョットして、マンションの購買層との関連があるのではないのだろうか。新築マンションの平均単価は次の順に高い傾向がある(次図)。

  • 23区>神奈川>埼玉≒千葉

23区のバカ高いマンションが買えるのはパワーカップルや投資家、外国人だし、神奈川県内のやや高いマンションを買える層の収入レベルもそれなりに高い。一方、それらのマンションに手が出ない層(失礼!)は埼玉県や千葉県のマンションに向かう。つまり購入層の違いがマンションポエムの違いに表れているというのが筆者の見立てである。

m2単価の推移(1都3県)
首都圏新築マンション市場動向(18年12月)」より

まとめ

テキストマイニングができるフリーソフト「KH Coder」を使って、マンションポエムは、東京23区と千葉・埼玉・神奈川でどのような違いがあるのか調べてみた。

  • 「特徴語上位10語」を比較してみると、地域ごとの特徴語が異なることが確認できる。たとえば、千葉の1位である「暮らし」は、埼玉にはなく、神奈川では6・7位。

  • 3県のマンションポエムをつぶさに見ていくと、「古めかしい表現」「駅チカ/駅前を強調」「地名入り」に地域差があることに気づかされる。

  • 対応分析の結果は、千葉と埼玉のマンションポエムは近い関係にあることを示唆している。購入層の違いがマンションポエムの違いに表れているというのが筆者の見立てである。

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