第214回国会(臨時会)(24年10月1日~10月9日)の参議院の質問主意書を眺めていて、外国人の公営住宅への入居に係る件名があることに気が付いた。
公営住宅への入居に関して、外国人よりも日本国民を大切にする政治を行うことを強く求めているのが、浜田聡 参議院議員(N党)のスタンス。
同議員が10月7日に提出した質問主意書に対する政府答弁書が公開されたのでひも解いてみた。
読みやすいように、一問一答形式に再構成した。
※時間のない方は、「質疑応答のポイント」と文末の「まとめ」をお読みいただければと。
浜田聡 参議院議員(NHKから国民を守る党)
(参議院 総務委員会 24年6月18日 動画より)
浜田 聡 参議院議員(1期、NHKから国民を守る党、東大教育学部⇒京大医学部卒、47歳)
令和6年3月1日の神戸市会令和6年予算特別委員会第一分科会では、自由民主党神戸市会議員団の上畠寛弘議員が、外国人の公営住宅への入居に関する質疑を行った。
上畠寛弘 神戸市議(3期、自民、慶応卒、36歳)
(上畠寛弘議員|神戸市会 令和6年予算特別委員会(第1分科会3月1日)動画より)
上畠議員は、日本国民であっても外国人であっても抽選によって入居を決めており、日本国民を優先せず、平等の名の下に日本国民と外国人を同等に取り扱う悪しき平等となっている点を指摘するとともに、既に外国人は永住許可者のみならず、中長期在留者も同様に取り扱っている点について確認した。
これに対して、片野建築住宅局副局長は、「外国人の入居申込資格に関しましては、国土交通省から通知がございます。これも理事御指摘のとおりですけれども、特別永住者については認めるものと、その他の外国人についても、出入国管理及び難民認定法の、いわゆる中長期在留者については、地域事情を勘案の上、可能な限り地域住民と同様に入居資格を認めるものとすることとありまして、実際、他の政令指定都市でも神戸市と同様に、中長期在留者も含めて入居資格を認めておるという事実はございます。入居申込資格がある以上は、国籍により取扱いを変えるというのはできないと考えておりますので、抽せんで入居者を決めておるということでございます。」と答弁した。
上畠議員は、前記答弁の根拠は、「平成30年12月25日、国住備第134号、国土交通省住宅局住宅総合整備課長から各都道府県・政令市住宅主務部長宛て、公営住宅への外国人の入居に関する取扱いについて」という通知(以下「当該通知」という。)であり、「出入国管理法の関係に規定する中長期在留者についても、地域の実情を勘案の上、可能な限り地域住民と同様の入居申込資格を認める取扱いとしていただきたい」との記載がある旨指摘した。
また、上畠議員は、中長期在留者には留学ビザも含まれるのかと質疑し、片野副局長は「御指摘のとおり、留学生の方であっても、中長期在留資格があって、あとは単身でないとか、そういった条件に合う場合に関しては、通常の申込みができるというふうに理解しております。」と答弁した。
上畠議員は、自身の選挙区内においても日本人が市営住宅の抽選に外れているとの相談を受けていることを踏まえ、平等の名の下に、中長期在留者にも入居資格を認めていることについて批判し、当該通知にある地域の実情の勘案について疑問を呈し、日本国民を最優先にする住宅政策を強く要求したところである。
以上を踏まえ、石破茂内閣総理大臣には、外国人よりも日本国民を大切にする政治を行うことを強く求めるとともに、以下質問する。
質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第75条第2項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から21日以内の答弁となっても私としては差し支えない。
問1:通知(外国人の入居申込資格)、地方自治体は遵守義務ある?
当該通知について、地方自治体は遵守する義務はあるのか。政府の見解を示されたい。
答1:技術的助言、法律上これに従うべき義務を負うものではない
御指摘の「当該通知」は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項の規定に基づく技術的助言であり、地方公共団体においては、法律上これに従うべき義務を負うものではない。
問2:中長期在留者に係る取扱い
当該通知には、「(出入国管理及び難民認定)法第19条の3第1項に規定する中長期在留者については、地域の実情を勘案の上、可能な限り地域住民と同様の入居申込資格を認める取扱いとしていただき、あわせて外国語による入居者募集案内等の広報の充実にも努めていただきますようお願いいたします。」と記載されている。
問2-1:中長期在留者に係る取扱い、地方自治体の裁量決定可能?
中長期在留者に係る取扱いについては、地方自治体の裁量によって決定するものであると解釈することは可能か。政府の見解を示されたい。
答2-1:地方公共団体において、適切に判断されるべきもの
お尋ねのとおりであるが、住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(平成19年法律第112号。以下「法」という。)第2条第1項に規定する住宅確保要配慮者には日本の国籍を有しない者も含まれることや、「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策(令和6年度改訂)」(令和6年6月21日外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議決定。以下「関係閣僚会議決定」という。)において「公営住宅に関し、在留資格を持つ外国人について、日本人と同様の入居申込資格を認める取扱いとするよう、地方公共団体に要請を行っているところ、このような地方公共団体における取組を更に推進する」としていることも踏まえ、地方公共団体において、お尋ねの「中長期在留者に係る取扱い」について適切に判断されるべきものと考えている。
問2-2:「地域の実情」とは?
「地域の実情」とは具体的には何を想定するものであるか。政府の見解を示されたい。
答2-2:住宅に困窮する低額所得者の状況や公営住宅を含む賃貸住宅の供給状況等
お尋ねの「地域の実情」については、例えば、各地方公共団体における住宅に困窮する低額所得者の状況や公営住宅を含む賃貸住宅の供給状況等が考えられる。
問3:中長期在留者は、地域住民と同様の入居申込資格を認める取扱いとはしないことは現行制度上可能?
地方自治体が運営する公営住宅の供給が不足し、日本国民たる地域住民さえも入居が困難である場合において、中長期在留者は、地域住民と同様の入居申込資格を認める取扱いとはしないことは現行制度上可能であるか。政府の見解を示されたい。
答3:地方公共団体において、適切に判断されるべきもの
お尋ねのとおりであるが、答2-2で述べた「地域の実情」を勘案し、法や関係閣僚会議決定の趣旨も踏まえ、地方公共団体において、御指摘の「中長期在留者」の取扱いについて適切に判断されるべきものと考えている。
まとめ
公営住宅への入居に関して、外国人よりも日本国民を大切にする政治を行うことを強く求めているのが、浜田聡 参議院議員(N党)のスタンス。
- 国交省の通知(外国人の入居申込資格)を踏まえ、公営住宅への入居に関しては、日本国民であっても外国人であっても抽選によって入居を決めており、日本国民を優先せず、平等の名の下に日本国民と外国人(永住許可者のみならず、中長期在留者も)を同等に取り扱うこととされている。
- 国交省の通知は「技術的助言」なので、地方公共団体には法律上の順守義務はないと政府は断言。
- 一方、中長期在留者に係る取扱いについて、地方自治体の裁量によって決定できるのかという質問に対して、地方公共団体において「適切に判断されるべきもの」という解釈の余地を残したのが政府答弁。
- また、中長期在留者は、地域住民と同様の入居申込資格を認める取扱いとはしないことは現行制度上可能であるかという質問に対して、住宅に困窮する低額所得者の状況や公営住宅を含む賃貸住宅の供給状況等「地域の実情」を勘案し、地方公共団体において「適切に判断されるべきもの」という、ここでも解釈の余地を残した政府答弁。
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