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マンションをグループホームに使ってはダメなのか(政府回答)

第208回国会(22年1月17日~6月15日)の参議院の質問主意書を眺めていて、マンション管理クラスタの関心を引きそうな件名があることに気が付いた。

大阪地裁は22年21月20日、障害者の住宅以外の使用を禁止するマンション管理規約に反するとして、大阪市淀川区の某マンションにおいてグループホーム(GH)としての使用を禁止した。

これに関連して浜田聡 参議院議員の質問「GHとしての部屋の使用がマンションなどで軒並み認められなくなる可能性」「どのような対策を講ずべきものと考えているか」に対して、政府回答は……。


もくじ

得票数が全国で2番目に少ない浜田議員、質問件数はダントツ

質問者が浜田議員だと言われても、いったい誰なのか。議員の名前は分からなくても、NHK党を知っている人は多いだろう。党首の立花孝志氏が参院選埼玉県選挙区補欠選挙に立候補し、参議院議員を自動失職したため繰り上げ当選したタナボタ議員。個人得票数が全国で2番目に少ない 浜田 聡氏(44歳)である。

へんな人かと思いきや、必ずしもそうではない。東大教養学部理科3類に入学後、教育学部身体教育学コース進学・卒業。大学院教育学研究科で2年間を過ごした後、京都大学医学部へ再入学し卒業。岡山県内の病院で放射線科医としての勤務経験を持つ、なんともユニークなキャリアの持ち主なのである。

浜田 聡 参議院議員
浜田 聡 参議院議員(1期、所属会派はみんなの党、東大教育学部⇒京大医学部卒、44歳)

参議院では下記4つの役職に就いている(22年2月7日現在)。

  • 財政金融委員会
  • 行政監視委員会
  • 北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会
  • 国民生活・経済に関する調査会

 

浜田氏がユニークなのはキャリアパスだけでなく、質問主意書の件数の多さだ。提出された全11件のうち、下記6件(55%!)も投じている(22年2月7日現在)。

  1. 日本商工会議所が政府に導入を促している二対一ルールに関する質問主意書
  2. 国会の専権事項である予算審議に関する記事を財務事務次官が寄稿したことに関する質問主意書
  3. 生活保護世帯への臨時特別給付金の支給に関する質問主意書
  4. SDGsの「貧困をなくそう」という目標に寄与しない森林環境税に関する質問主意書
  5. 障害者グループホームとマンション管理規約に関する質問主意書
  6. 緊迫するウクライナ情勢と日本政府の北方領土を取り戻す意思に関する質問主意書

質問主意書・政府答弁

以下、障害者グループホームとマンション管理規約に関する質問主意書と政府答弁書。読みやすいように、一問一答形式で再構成した。

2022年1月20日、大阪地方裁判所にて、分譲マンションの管理組合が、社会福祉法人に対し、障害者が暮らすグループホーム(以下「GH」という。)としての部屋の使用は、住宅以外の入居を禁止する管理規約に違反するとの理由に基づきGHとして部屋を使わないように求めた訴訟の判決があった。


報道によれば、当該マンションは1988年築の15階建て、社会福祉法人は約20年前から2部屋を借りてGHを運営しており、障害者6人が生活しているとのことである。


また、判決では、自力での避難が難しい障害者らのGHがあることで、マンションは、毎年、消防法令上の点検義務を負い、将来的に消防用設備の設置に伴う金銭的負担も想定されるところ、管理組合は管理のあり方が変わらないように部屋の用途を管理規約で住宅に限定していたために、GHとしての使用は「(他の入居者らを含む)共同の利益に反する」と判示したとのことである。


一方で、障害者のGHは都市部を中心に約2割がマンションなどの共同住宅にあるとされているとの報道もあるところ、この現状を放置すれば、障害のある人が地域で暮らすために不可欠なGHとしての部屋の使用が、マンションなどで軒並み認められなくなる可能性が出てくると考える。

右を踏まえて、以下質問する。

問1:障害者、どこで誰と生活するかを選択する機会を有しているものと認識?

政府は、一般論として、障害者の権利に関する条約第19条が存在することとともに、障害のある人が、地域社会で生活する平等の権利を有し、地域社会に完全に包容されるだけでなく、居住地を選択し、どこで誰と生活するかを選択する機会を有しているものと認識しているか

答1:障害者の権利に関する条約・・・承知している

お尋ねについては、障害者の権利に関する条約(平成26年条約第1号)第19条において、「この条約の締約国は、全ての障害者が他の者と平等の選択の機会をもって地域社会で生活する平等の権利を有することを認めるものとし、障害者が、この権利を完全に享受し、並びに地域社会に完全に包容され、及び参加することを容易にするための効果的かつ適当な措置をとる」と規定されており、また、障害者基本法(昭和45年法律第84号)第3条第2号において、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現は、「全て障害者は、可能な限り、どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと」等を旨として図られなければならないと規定されているほか、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)第1条の2においても、「障害者及び障害児が日常生活又は社会生活を営むための支援は、(中略)どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと・・・を旨として、総合的かつ計画的に行わなければならない」と規定されているものと承知している。

問2:障害者のGHの何割、マンションなどの共同住宅にあると認識?

政府は、一般論として、障害者のGHの何割ほどが、都市部を中心に、マンションなどの共同住宅にあると認識しているか

答2:24.7パーセント

御指摘の「都市部」の意味するところが必ずしも明らかではないが、平成30年度障害者総合福祉推進事業において全国のグループホームを対象として実施した「グループホームを利用する障害者の生活実態に関する調査研究」の結果においては、建物の種類を問う質問に対して回答のあったグループホームのうち、マンション等の集合住宅にあるグループホームの割合は24.7パーセントであると報告されている。

問3:GHとしての部屋の使用、認められなくなる可能性?

一般論として、障害のある人が地域で暮らすために不可欠なGHとしての部屋の使用がマンションなどで軒並み認められなくなる可能性について、政府としては、どの程度認識・予見し、どのような対策を講ずべきものと考えているか。また、この観点から、すでに実際に講じた政策には、どのようなものがあるか

なお、本質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、転送から7日以内での答弁は求めない。国会法第75条第2項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から21日以内には答弁されたい。
右質問する。

答3:当該可能性を踏まえた特段の対応は行っていない

お尋ねの「一般論として、・・・GHとしての部屋の使用がマンションなどで軒並み認められなくなる可能性について、・・・どの程度認識・予見し、どのような対策を講ずべきものと考えているか」については、御指摘の判決に係る事案のその後の状況を含め、今後のグループホームを取り巻く状況等を踏まえて検討すべきであると考えており、現時点でお答えすることは困難であり、また、当該可能性を踏まえた特段の対応は行っていない


政府としては、障害者が地域生活を安心して送ることができるよう、障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針(平成29年厚生労働省告示第116号)を定め、都道府県障害福祉計画等に基づくグループホームの計画的な整備を推進するとともに、令和3年度障害福祉サービス等報酬改定において、グループホームにおける重度障害者支援加算の対象者の拡充を図るなど、地域における居住の場としてのグループホームの充実を図ってきたところであり、引き続き、障害者が希望する多様な地域生活の実現に向けた支援の充実を図ってまいりたい

まとめ・雑感

  • マンションをグループホームに使ってはダメなのか? 「今後のグループホームを取り巻く状況等を踏まえて検討すべきであると考えており、現時点でお答えすることは困難」というのが政府の回答。
  • また、グループホームとしての部屋の使用がマンションなどで軒並み認められなくなる可能性への対策について、「当該可能性を踏まえた特段の対応は行っていない」と答えている。
  • 政府は「引き続き、障害者が希望する多様な地域生活の実現に向けた支援の充実を図ってまいりたい」としているが、すでにマンション等のグループホームで暮らしている障がい者らはこの先も安心して暮らしていけるのだろうか。
  • 今後新築されるマンションの規約に今回の判決を踏まえた内容が厳格に反映されることになると、マンションでのグループホーム運営は困難になってしまうのだが……。

あわせて読みたい(浜田議員の質問主意書)

※日付は記事の投稿日を示す。

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