不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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サブリース契約、未だ無人居室のNHK受信契約の扱いについて(政府回答)

第201回国会(20年1月20日~6月17日)の参議院の質問主意書を眺めていて、ずいぶんとマニアックな質問主意書があることに気が付いた。

  • いわゆる家具・家電付の賃貸マンションにおける放送法六十四条の「受信設備を設置した者」の解釈に関する質問主意書

参院でN国議員活躍中!?

質問者が誰なのか、多くの人はすぐに気づいたに違いない。議員の名前は分からなくても、NHKから国民を守る党の所属であることは分かるはずだ。N国党首の立花孝志氏が参院選埼玉県選挙区補欠選挙に立候補し、参議院議員を自動失職したため繰り上げ当選したタナボタ議員。個人得票数が全国で2番目に少ない 浜田 聡氏(42歳)である。

へんな人かと思いきや、必ずしもそうではない。東大教養学部理科3類に入学後、教育学部身体教育学コース進学・卒業。大学院教育学研究科で2年間を過ごした後、京都大学医学部へ再入学し卒業。岡山県内の病院で放射線科医としての勤務経験を持つ、なんともユニークなキャリアの持ち主なのである。

参議院では下記4つの役職に就いている(2月16日現在)。

  • 財政金融委員会
  • 地方創生及び消費者問題に関する特別委員会
  • 東日本大震災復興特別委員会
  • 国民生活・経済に関する調査会

浜田氏がユニークなのはキャリアパスだけでなく、質問主意書の件数の多さだ。今国会だけでも全44件のうち、下記に示す13件(3割)も投じている(2月16日現在)。

※( )内の数字は、提出番号。

  1. (4)不正行為防止のためにNHK訪問員に対して住民側が録音録画するとNHK訪問員が拒絶することに関する質問主意書
  2. (5)不退去罪を犯した者を私人が現行犯逮捕することに関する質問主意書
  3. いわゆる家具・家電付の賃貸マンションにおける放送法六十四条の「受信設備を設置した者」の解釈に関する質問主意書

  4. (7)リース、レンタカー、カーシェアリング契約などの車両におけるNHKの放送を受信することのできるカーナビに関する質問主意書
  5. (13)NHKのテレビ番組とインターネット配信による「常時同時配信」の実施において、パソコンやワンセグ機能のないスマートフォン所持の場合の受信契約の義務に関する質問主意書
  6. (16)香川県ゲーム規制条例案とeスポーツに生きがいを感じている重度障害者に関する質問主意書
  7. (18)NHKが行っている外国人差別に関する質問主意書
  8. (22)総務省がワンセグ携帯のみを利用している者に対する放送受信料値下げをNHKに要請したとする報道に関する質問主意書
  9. (26)イラン国内で我が国の総理大臣が「アメリカ人は常に自分たちの信念と見解を他国に押しつけたいと考えてきた」と発言したとされていることに関する質問主意書
  10. (28)神奈川県警による刑事告訴拒否に関する質問主意書
  11. (29)いわゆる家具・家電付の賃貸マンションにおける内見時に受信機を使用できる状態に置いた場合の放送法六十四条「受信設備を設置した者」の解釈に関する質問主意書
  12. (38)マスクの買い占め・転売行為に対し、物価統制令、国民生活安定緊急措置法、買い占め防止法等を活用することに関する質問主意書
  13. (44)国家公務員法八十一条の三による検事長の定年延長等、公務員法に関する質問主意書

冒頭に掲げた提出番号6の質問主意書「いわゆる家具・家電付の賃貸マンションにおける・・・」は、政府答弁に満足しなかったと見えて、さらに追加質問がなされた(提出番号29)という熱の入れようだ。

このブログの読者は不動産に関心を持たれる方が多いので、「いわゆる家具・家電付の賃貸マンションにおける・・・」の質疑応答文書を整理しておいた。

※時間のない方は、「質疑応答のポイント」をお読みいただければと。


質疑応答のポイント

浜田 聡 参議院議員
浜田 聡 参議院議員(1期、所属会派はみんなの党、東大教育学部⇒京大医学部卒、42歳)

質問:サブリース契約、未だ無人居室のNHK受信契約

いわゆるサブリース契約において、土地及び当該土地に建設されているマンションを所有する者(以下「オーナー」という。)のマンションを一括で借り受け、個人または法人に転貸することを生業とする者(以下「転貸人」という。)が、オーナーから当該マンションを借り受けたのち、家具・家電付物件として借家人に貸し出すことを目的に、当該マンションの居室に放送法64条1項にいう「協会の放送を受信することのできる受信設備」(以下「受信機」という。)を設置した物件が多数存在している。
 右を踏まえて、以下質問する。

↓ 筆者注:放送法64条1項

第64条 協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならないただし、放送の受信を目的としない受信設備又はラジオ放送(音声その他の音響を送る放送であって、テレビジョン放送及び多重放送に該当しないものをいう。第126条第1項において同じ。)若しくは多重放送に限り受信することのできる受信設備のみを設置した者については、この限りでない。

質問1:受信設備を設置した者は、オーナーか?転貸人か?

放送法64条1項にいう「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者」は、オーナーか。それとも転貸人か。

回答1:一概にお答えすることは困難

放送法(昭和25年法律第132号)第64条第1項に規定する「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者」については、個々の受信設備の設置状況等により判断されることから、一概にお答えすることは困難である。

質問2:未だ無人の居室、「放送の受信を目的としない受信設備」に該当?

転貸人から賃借する者がおらず、未だ無人の居室における受信機については、放送法64条1項における「放送の受信を目的としない受信設備」に該当するか

回答2:該当しない(受信料払え!)。なお、受信契約の締結を求めていない

放送法第64条第1項ただし書に規定する「放送の受信を目的としない受信設備」とは、受信設備の設置目的が客観的に放送の受信を目的としないものと解されているところ、御指摘の「転貸人から賃借する者がおらず、未だ無人の居室における受信機」については、客観的に放送の受信を目的としないものと認めることができないため、同項ただし書に規定する「放送の受信を目的としない受信設備」に該当しないものと考えている。

なお、日本放送協会においては、当該受信機を占有使用して放送を受信することができる状態にある者が一切いない場合、同条第3項の規定に基づき総務大臣の認可を受けた日本放送協会放送受信規約第1条第2項に規定する設置に当たらないため、受信契約を締結することを求めていないものと承知している。

再質問:未だ無人居室、内見時の扱い

再質問:内見時、NHKとの受信契約義務を負うか?

令和2年1月31日に私が提出した「いわゆる家具・家電付の賃貸マンションにおける放送法64条の「受信設備を設置した者」の解釈に関する質問主意書」(第201回国会質問第6号)に対する答弁(内閣参質201第6号)において、政府は「なお、日本放送協会においては、当該受信機を占有使用して放送を受信することができる状態にある者が一切いない場合、同条第3項の規定に基づき総務大臣の認可を受けた日本放送協会放送受信規約第1条第2項に規定する設置に当たらない」と答弁している。

 日本放送協会(以下「協会」という。)放送受信規約では、「設置」とは、「使用できる状態におくこと」と定義されている

 賃貸物件を賃借しようとする者は、通常実際の物件を内見するものであり、家具・家電付の賃貸マンションにおいては、家具・家電がきちんと動作するか内見時に確認するものである

つまり、平時においては答弁書にあるように、「当該受信機を占有使用して放送を受信することができる状態にある者が一切いない」ことがあるが、物件の内見時には、転貸人(いわゆるサブリース契約において、土地及び当該土地に建設されているマンションを所有するもの(以下「オーナー」という。)のマンションを一括で借り受け、個人または法人に転貸することを生業とする者をいう。以下同じ。)や、転貸人から依頼を受けた不動産仲介業者が、受信機を正常に動作する状態にする、すなわち、放送受信規約にいう受信機を「設置」した状態にするのである。


 内見時、家具・家電付の賃貸マンションを賃借しようとする者に受信機が正常に動作することを確認させるために、受信機を使用できる状態に置いた転貸人は、協会と放送受信契約を締結する義務を負うか

 また、転貸人が放送受信契約の締結義務を負わない場合、オーナーは、協会と放送受信契約を締結する義務を負うか。

 さらに、転貸人もオーナーも放送受信契約の締結義務を負わない場合、転貸人から依頼を受けた不動産仲介業者は、協会と放送受信契約を締結する義務を負うか。

 なお、本質問については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、転送から7日以内での答弁は求めない。国会法75条2項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から21日以内には答弁されたい。

再回答:受信契約を締結することを求めていない

参議院議員浜田聡君提出いわゆる家具・家電付の賃貸マンションにおける内見時に受信機を使用できる状態に置いた場合の放送法64条「受信設備を設置した者」の解釈に関する質問に対する答弁書御指摘の「内見時」の意味するところが必ずしも明らかではないが、日本放送協会においては、入居者がいない家具・家電付の賃貸マンションを賃借しようとする者に受信機が正常に動作することを確認させたとしても、当該受信機を占有使用して放送を受信することができる状態にある者がいないため、放送法(昭和25年法律第132号2第64条第3項の規定に基づき総務大臣の認可を受けた日本放送協会放送受信規約第1条第2項に規定する設置に当たらないものとして、受信契約を締結することを求めていないものである。

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