第213回国会(24年1月26日~6月23日)の衆議院の質問主意書44件のなかに、19番目として羽田衝突事故に係る次の質問主意書が埋もれている(2月13日現在)。
松原仁 衆議院議員が1月29日に提出した質問主意書に対する政府答弁書が公開されたのでひも解いてみた。
※読みやすいように、一問一答形式に再構成。
松原仁 衆議院議員(無所属)
(衆議院 外務委員会 23年11月17日 動画より)
松原仁 衆議院議員(8期、立憲民主党⇒無所属、早大商卒、67歳)
本年1月2日に羽田空港で発生した民間旅客機と海上保安庁所属の航空機による衝突事故について、国土交通省ホームページに「羽田空港航空機衝突事故対策検討委員会」の設置とその方針が示されている(https://www.mlit.go.jp/koku/koku_tk13_000045.html)。
ホームページ内「資料2-1本検討委員会の設置趣旨及び今後の進め方」では、第1ステップが緊急対策、第2ステップが羽田空港航空機衝突事故対策検討委員会、第3ステップが運輸安全委員会の調査報告を受けた抜本的対策と3段階のプロセスが示されている。
(資料2-1本検討委員会の設置趣旨及び今後の進め方)
問1:「緊急対策」、既に実施されている対策を示されたい
第1ステップの「緊急対策」について、本件事故に関連しうる原因を想定し、羽田空港または本邦各空港において既に実施されている対策を示されたい。
答1:「管制機関及び航空事業者等への基本動作の徹底指示」、ほか
御指摘の「本件事故に関連しうる原因を想定」の意味するところが必ずしも明らかではないが、お尋ねについては、国土交通省が令和6年1月9日に取りまとめた「航空の安全・安心確保に向けた緊急対策」において、「管制機関及び航空事業者等への基本動作の徹底指示」、「管制官による監視体制の強化」、「パイロットによる外部監視の徹底、視覚支援」、「滑走路進入に関するルールの徹底」及び「関係者間のコミュニケーションの強化」といった対策を緊急的に講ずることとしており、これらの緊急対策については、同年2月2日の参議院本会議において、斉藤国土交通大臣が「既に羽田空港においては全ての緊急対策を実施済みであり、その他の空港においてもほぼ全ての緊急対策を実施しております」と答弁したとおりである。
問2:検討目的、「滑走路上における航空機等の衝突防止」に限定?
第2ステップ「羽田空港航空機衝突事故対策検討委員会」において、主な検討事項としてパイロットと管制官に対する注意喚起システムの強化の必要性、パイロットと管制官の交信の見直しの必要性などが示されている。
本項において検討される対策の具体的な目的は「滑走路上における航空機等の衝突防止」に限定されるか。その他に想定される目的があれば示されたい。
答2:「滑走路上における航空機等の衝突防止」に限定
お尋ねについては、御指摘のとおり「「滑走路上における航空機等の衝突防止」に限定」される。
問3:抜本的対策、羽田空港航空機衝突事故対策検討委員会の今後の関係性
第3ステップの「運輸安全委員会の調査報告を受けた抜本的対策」について、同時並行で議論される運輸安全委員会による調査及び報告と羽田空港航空機衝突事故対策検討委員会の今後の関係性について示されたい。
答3:お尋ねの「今後の関係性」についてお答えすることは困難
羽田空港航空機衝突事故対策検討委員会は御指摘の「第2ステップ」における検討のために設置したものであり、今後、御指摘の「第3ステップ」において、同委員会を存続させるか否かについては、現時点で決まっておらず、また、運輸安全委員会において事故調査報告書の作成に向けて調査中であるため、お尋ねの「今後の関係性」についてお答えすることは困難である。
雑感(「お答えすることは困難」というお役所言葉)
「お答えすることは困難」という表現は質問主意書でときおり見かけるお役所言葉。
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24年1月29日:羽田衝突事故|管制体制・滑走路の構造的処理能力に関する質問主意書
- お尋ねの「公の立場で再検証」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「体制や能力」を検証するか否かについては決まっておらず、現時点でお尋ねについてお答えすることは困難である。
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23年11月24日:不動産の流通に関する質問主意書
- お尋ねの「全ての告知内容・発言について参照可能な文書で交わすこと」の意味するところが明らかではないため、お尋ねについてお答えすることは困難である。
- 22年10月28日:円安がキャピタルフライトをもたらすリスク
- 政府としては、為替レートを円安の方向に誘導する政策は採っておらず、そのような政策を前提とした質問にお答えすることは困難である。
- 22年10月28日:不動産を取得した外国法人の実質的支配者情報の収集
- お尋ねの「資本取引を行うことについて許可を受ける義務を課した不動産」及び「凍結した不動産」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。
- 22年4月22日:大規模地震発生後の復興財源「お答えすることは困難」
- 御指摘の南海トラフ地震や首都直下地震等からの復旧・復興に係る財源の確保については、それぞれの地震の規模や被害の状況等に応じて対応するものと考えており、お尋ねの「復興事業費の調達方法」について一概にお答えすることは困難である。
「お答えすることは困難」という文言は、「差し控える」と同様、説明責任を果たすことから免れるための言葉として使われていないだろうか。
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