マンションを選ぶときに、間取りや駅距離などについては、十分に時間をかけて検討するだろうが、駐輪場についてはあまり検討していないのではないか。
新築マンションに設定されている自転車のための1世帯当たりの台数(以下、「駐輪場設置率」)は、意外と少ない。敷地内に空きスペースがあれば増設は可能だが、そうでない場合は、マンション管理組合を悩ませることになる。
では、駐輪場設置率の実態はどうなっているのか? 残念ながら、公的な統計データは見当たらない。そこで、駐輪場データがしっかり掲載されている「アットホーム」のデータ(23年3月12日現在)を利用して、以前に投稿した駐車場に続き、1都3県の現在の新築分譲マンションの駐輪場設置率を算出してみた。
駐輪場設置率(首都圏)
1都3県の新築分譲マンションの駐輪場設置率について、次図に示す。
23区の平均駐輪場設置率は151%。つまり1世帯あたり約1.5台しかないということ。神奈川県の平均駐輪場設置率はさらに少なく、129%(1世帯あたり約1.3台)。都下、埼玉県および千葉県の平均駐輪場設置率は、23区や神奈川県よりも高いが、それでも200%を下回っている。
調査対象物件には、4人家族や3人家族だけでなく、夫婦のみや単身者が含まれているにしても、23区で1世帯あたり約1.5台という水準は少なくないだろうか。
【メモ】
- 駐輪場設置率は、物件ごとの設置率の平均値ではなく、エリアごとに総駐輪場台数を調査対象戸数で除した値。
- サイクリングポートが設置されている物件については、1区画=2台として、設置率を計算した。
- SUUMOでなくアットホームデータを利用したのは、前者は後者に比べて駐輪場データが掲載されていない物件が多いというのが理由。詳細は、「SUUMOでなく、アットホームデータを利用した理由」参照。
駐輪場設置率と駅徒歩時間の関係
次に、駐輪場設置率と駅徒歩時間の関係を可視化する。
駐輪場設置率と駅徒歩時間の関係(首都圏)
まず、1都3県の新築マンション373件(重複分92件を除く。23年3月12日現在)について、横軸に駅徒歩時間、縦軸に駐輪場設置率、円の大きさを総戸数として描いたのが次のグラフ。
駅徒歩時間が長くなるほど、駐輪場設置率が高くなる傾向が見られる。
駅から遠くなるなるほど、通勤・通学に自転車が必須であることから、この結果には納得できる。
駅徒歩時間別の駐輪場設置率(23区)
次に、23区の新築分譲マンション192件(駐輪台数が判明した件数)について、駅徒歩時間別に駐輪場設置率を可視化したのが次図。
駅徒歩時間と駐輪場設置率との相関は特に見られない。
駅徒歩時間にかかわらず、駐輪場設置率は130~170%程度と理解するのがいいのかもしれない。
※駐輪場設置率は、物件ごとの設置率の平均値ではなく、駅徒歩時間ごとに総駐輪場台数を調査対象戸数で除した値。
【参考】駐輪場設置率と総戸数の関係(首都圏)
念のため、駐輪場設置率と総戸数の関係についても確認しておこう。
首都圏の新築分譲マンション373件について、横軸に総戸数、縦軸に駐輪場設置率として描いたのが次のグラフ。
やはりというか、総戸数のほうは、駅徒歩時間と違って、駐輪場設置率との相関は特に見られない。下図から分かることは、設置率200%を超えるマンションは少ないということ。
これだから、マンションの駐輪場問題はなくならない(2018マンション総合調査結果|トラブル発生状況)。
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