駐車場利用率低下問題を回避するためにも、新築マンションの駐車場は将来を見通した適切な台数の設置が望まれる。でも、残念ながら、新築マンションの駐車場の設置状況に係る国交省の統計データはない。
そこで、駐車場データがしっかり掲載されている「アットホーム」のデータを利用して、1都3県の現在の新築分譲マンションの駐車場設置率を算出してみた。
マンション駐車場の利用率低下問題
中古マンションの駐車場利用率低下問題。利用率の低下による駐車場利用料収入の減少は、マンション管理組合の財政に悪影響を与える可能性がある。特に、少ない修繕積立金に駐車場収入を補充していた管理組合ほど、その影響は大きい。平置き駐車場はともかく、機械式駐車場となると、毎月の維持管理費だけでなく、経年劣化による更新・撤去費用問題が加わる。
この駐車場利用率低下問題を回避するためにも、新築マンションの駐車場は将来を見通した適切な台数の設置が望まれる。
では、新築マンションの駐車場の設置状況はどうなっているのか。残念ながら、新築マンションの駐車場の設置状況に係る国交省の統計データはない。
唯一あるのは、不動産経済研究所が6年近く前(17年9月11日)に発表した「首都圏の新築分譲マンション 駐車場設置率の数」という資料である。同資料には07年から17年までの11年間の1都3県のエリア別駐車場設置率が掲載されている(次表)。
※次表の「設置率」は、物件ごとに計算した設置率の平均値ではなく、エリアごとに計算した設置率であることに要留意。
現在の1都3県の駐車場設置率はどうなっているのか。
以下、筆者の独自調査結果を記す。
新築分譲マンションの駐車場設置率の推移(1都3県)
不動産情報サイト「アットホーム」に掲載されている1都3県の新築マンション373件(重複分92件を除く。23年3月12日現在)につき、エリアごとに駐車場設置率(=エリアの総駐車場台数÷エリアの総戸数)を算出し、前述の不動産経済研究所データと合わせて可視化したのが次図。
※SUUMOやライフルホームズではなく、アットホームのデータを用いた理由は後述。
不動産経済研究所(年間データ)とアットホーム(23年3月時点データ)では、対象データが異なるので、両者データの不連続性を勘案する必要があるものの、現在の23区の駐車場設置率約33%、千葉県の駐車場設置率約62%というレベルに違和感はないのでは。
最近の23区の新築マンションの駐車場設置率が3割程度であるのに対して、2000年代に竣工した中古マンション駐車場設置率は4割を超えている。
このことから、駐車場(機械式)設置率4割超の中古マンションを選ぶ際には、マンション管理組合の財政悪化リスクに注意が必要なことが分かる(マンション駐車場の利用率低下問題)。
新築分譲マンションの駐車方式別の設置率(1都3県)
アットホームのデータを利用して、1都3県の新築分譲マンションの駐車場設置状況につき、平置式・機械式(含むタワーパーキング)の割合を調べた結果を次図に示す。
23区の駐車場設置率は、他のエリアと比べて、平置式(自走式を含む)が最も少なく5.7%、タワーパーキング式は最も多く7.5%。また、駐車場に占める機械式(含むタワーパーキング式)の割合は約83%。
【参考】SUUMOでなく、アットホームデータを利用した理由
不動産情報サイト3者(SUUMO、LIFULL HOME'S、アットホーム)のうち、人気の高いSUUMOやLIFULL HOME'Sでなく、なぜアットホームデータを利用したのか。
SUUMOとLIFULL HOME'Sは、アットホームに比べて、駐車場データが掲載されていない物件が多いというのが理由。
※アットホームに駐車場データが掲載されていない場合は、各物件サイトをひも解いた。
アットホームは、SUUMOとLIFULL HOME'Sと比べて、人気はともかく、掲載物件数において遜色ないので(次図)、駐車場データを分析するうえで問題ないと判断した。
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