不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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過去50年間の新築マンション市場を可視化(首都圏)

不動産経済研究所は毎月中旬、「首都圏新築分譲マンション市場動向」として、首都圏で発売される新築分譲マンションの発売戸数や発売単価などのデータを発表している。
同発表を受けて、メディアは発売戸数が〇か月連続で増えたとか減ったとか近視眼的に報じている、と私は思う。

このブログでは、同研究所の08年1月1日以降の発表データに、毎月発表されるデータを加えることで、マンション市場の長期的な推移を俯瞰できるような情報を提供している。

本日は、さらに73年1月まで遡って、過去50年間の首都圏新築分譲マンション市場を可視化してみた。

※73年から07年までのデータについては、不動産経済研究所が13年10月7日に発行した「全国マンション市場40年史」を参照した。


もくじ

発売戸数・発売単価・販売在庫の推移

発売戸数・発売単価・販売在庫の推移を下図に示す。

主な特徴は次のとおりである。

  • 発売戸数(青色折れ線)
    • 94~05年は、月間5,000~1万戸。08年以降は5千戸を下回るとともに減少傾向が見られる。
  • 発売単価(緑色折れ線)
    • バブル期をピークに03年ころに反転するまで下落し続け、第2次安倍政権が発足した12年12月あたりから激しく高騰。20年に入り下落傾向が見え始めた。
  • 販売在庫数(赤色折れ線)
    • バブル期前の大幅な変動に比べると、バブル崩壊後の変動は小さい。

発売戸数・発売単価・販売在庫の推移(首都圏)
※バブル期:86年12月~91年2月

発売戸数・契約率の推移

発売戸数・契約率の推移を下図に示す。

発売戸数・契約率の推移(首都圏)

メディアは不動産経済研究所の発表を受けて、「契約率70%は好不調の目安」というお決まりの表現をよく使うのだが、ホントに正しい使い方なのだろうか。

たしかに、年間発売戸数が8万戸(月平均7千戸)あった94~06年の頃であれば、その表現は適切だったのかもしれない。

でも、発売戸数が大幅に減少した08年以降も「契約率70%は好不調の目安」という表現を使い続けているのは適切とは言えないのではないか。

契約戸数(分子)が減少してくる(売れ行きが悪くなる)と、供給量を抑えることによって発売戸数(分母)も減少してくるので、契約率は一定程度維持される。「契約率」という指標は、このような“負のスパイラル状態”を適切に表現できていないのである。

もっと分かりやすくいえば、94~06年頃の契約率70%と08年以降の契約率70%では、数値の持つ意味が違うということだ。

市場規模の推移

市場規模(=供給戸数×平均価格)と平均価格の推移を下図に示す。

首都圏新築分譲マンションの市場規模は、2010年の2.1挑円をピークに縮小傾向を見せている。

もう少し詳しく述べると次のとおりだ。2000年代前半まで3.5兆円前後で推移していたが、耐震偽造事件(05年11月)の翌年度から縮小し始めて、リーマンショック(08年11月)の翌年度が1.65兆円のボトム。その後、消費税増税8%(14年4月)の前年度まで拡大するが再び縮小傾向。

一方、平均価格は、第2次安倍政権発足(12年12月)から異常なほどに高騰し続け、18年以降はそれまでの勢いがないとはいえ高騰し続けている。

市場規模と平均価格の推移(首都圏新築分譲マンション)

価格が高騰しているのに市場が縮小している状況は、富裕層でないと新築マンションを買えなくなってきている事態を示している。

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2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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