羽田新ルート問題に関連して、22年の品川区長選挙候補者や23年渋谷区長候補者らの懐事情(政治資金)については、すでに記事化した。
政治資金については、筆者が不案内なこともあり、調べれば調べるほど確認したいことが出てくる。とりわけ確認したくなったのは、品川区長や渋谷区長の政治資金は他の区長と比べて多いのか少ないのかという、相場観である。
ということで今回、東京23区の各区長の政治資金を調べてみた。
以下長文。時間のない方は、冒頭の「23区長に係る資金管理団体の収入額比較」と文末の「考察」をお読みいただければと。
※一部、敬称略
- 23区長に係る資金管理団体の収入額比較
- 各区長の資金管理団体の収入額内訳
- 千代田区長:初出馬、政治団体からの寄付20万円
- 中央区長:資金管理団体なし?
- 港区長:選挙年、政治団体からの寄付141万円
- 新宿区長:資金管理団体なし?
- 文京区長:年間6万円(事務所無償提供)
- 台東区長:選挙年202万円
- 墨田区長:選挙年、個人からの寄付420万円
- 江東区長:年間ゼロ円
- 【前】品川区長:ほぼゼロ
- 目黒区長:個人からの寄付のみ(35~185万円/年)
- 大田区長:主に本人からの寄付
- 世田谷区長:「機関紙誌の発行その他の事業による収入」が多い
- 渋谷区長:選挙年のみ413万円
- 中野区長:会費3万円(3人)
- 【前】杉並区長:毎年1千万円超の政治資金パーティー@京王プラザホテル
- 豊島区長:資金管理団体なし
- 北区長:年間ゼロ円
- 荒川区長:選挙年508万円
- 板橋区長:年間ほぼゼロ円
- 練馬区長:年間ほぼゼロ円
- 足立区長:選挙年2,848万円
- 葛飾区長:選挙年1,111万円
- 江戸川区長:選挙年のみ1,941万円
- 【参考】区長の政治資金を調べる方法
- 【参考】資金管理団体について
- ★考察★
23区長に係る資金管理団体の収入額比較
23区長に係る資金管理団体の3年分(19~21年)の収入額を比較したのが次図。
- 近藤弥生 足立区長(4期)、保坂展人 世田谷区長(3期)、田中良【前】杉並区長(3期)の収入額は突出していて、かつ選挙の年に限らず毎年収入が多いのが特徴。
- 斉藤猛 江戸川区長(1期)は、初めて出馬した19年に2千万円近く集めたのが目立つ。
- 次の5区長の収入額は0~数万円。
- 成澤廣修 文京区長、山﨑孝明 江東区長、酒井直人 中野区長、花川與惣太 北区長、坂本健 板橋区長
- 3区長(中央・新宿・豊島)については、資金管理団体が見当たらない。
※豊島区長は現在、資金管理団体を登録していないことにつき、同区秘書室に電話確認済み(23年1月16日)。
※収入額は東京都選挙管理委員会HPに掲載されている政治資金報告書を元に調べた(後述)。
各区長の資金管理団体の収入額内訳
以下、区長ごとに解説する。
※金額は千円単位で四捨五入
千代田区長:初出馬、政治団体からの寄付20万円
樋口高顕(1期)「都民ファーストの会ひぐちたかあき後援会」設立17年4月3日
21年の区長選挙(5月8日投開票)で、都民ファーストの推薦を受け、他の3候補(うち自公推薦1人、維新推薦1人)に競り勝つ。
区長選挙(21年1月31日投開票)初出馬の前後に、医師政治連盟と宅建政治連盟からそれぞれ10万円の寄付あり。
- 19年:235万円
- 個人からの寄付:74万円(本人+事務所無償提供)
- 政治団体からの寄付:161万円(都民ファースト)
- 20年:561万円
- 個人からの寄付:144万円(事務所無償提供)
- 政治団体からの寄付:194万円(都民ファースト)
- 機関紙誌の発行その他の事業による収入:223万円(千代田都政セミナー2020)
- 21年:169万円 ※区長選挙(1月31日投開票)初出馬
- 個人からの寄付:120万円(事務所無償提供)
- 政治団体からの寄付:20万円
- 東京都医師政治連盟神田支部:10万円(1月21日)
- 東京都宅建政治連盟千代田中央支部:10万円(2月1日)
中央区長:資金管理団体なし?
山本泰人(1期)
※資金管理団体なし?(区に照会中、1月19日現在)
19年の区長選挙(4月21日投票)で、自公の推薦を受け、他の4候補(うち1人立民・共産・自由・社民推薦)に圧勝。
港区長:選挙年、政治団体からの寄付141万円
武井雅昭(5期)「たけい雅昭後援会」設立04年4月27日
20年の区長選挙(6月7日投票)で、自公・国民・都ファ・社民の推薦を受け、他の4候補(うち1人共産推薦)に圧勝。
区長選挙(20年5月8日投開票)の直後、政治団体からの寄付。
- 19年:323万円
- 個人からの寄付:310万円(本人×3回)
- 機関紙誌の発行その他の事業による収入:12.5万円(役員暑気払い+役員忘年会)
- 20年:904万円 ※20年5月8日投開票の区長選挙で5選
- 個人からの寄付:763万円(本人+港区教育長・港区副区長ほか)
- 政治団体からの寄付:141万円
- 自由民主党東京都支部連合会:30万円(5月15日)
- 国民民主党東京都総支部連合会:20万円(5月18日)
- 東京商工連盟:10万円(5月22日)
- 東京都医師政治連盟港支部:10万円(5月27日)
- 全日本不動産政治連盟東京都本部:10万円(5月28日)
- 東京都歯科医師連盟芝支部:10万円(5月30日)
- 東京都歯科医師連盟麻布赤坂支部:10万円(5月30日)
- 21年:310万円
- 個人からの寄付:310万円(本人)
新宿区長:資金管理団体なし?
吉住健一(3期)
※資金管理団体なし?(区に照会中、1月19日現在)
22年の区長選挙(11月13日投票)で、自公の推薦を受け、4党推薦(立憲、共産、れいわ、社民、生活者ネット)抑えて当選。
文京区長:年間6万円(事務所無償提供)
成澤廣修(4期)「新世紀政経懇話会」設立01年7月11日
19年の区長選(4月21日投票)では、共産推薦候補に圧勝。
台東区長:選挙年202万円
服部征夫(2期)「服部ゆくお後援会」設立76年4月23日
19年の区長選挙(3月17日投票)で、自公の推薦を受け、他の2候補(うち1人共産推薦)に圧勝。
主な原資は、総決起大会(19年、169万円)と本人からの借入金(20・21年@50万円)。
- 19年:202万円
- 個人からの寄付:3万円
- 機関紙誌の発行その他の事業による収入:199万円
- 服部ゆくお総決起大会:169万円(1月31日浅草公会堂)
- 服部企画スタッフ納涼懇親会:30万円(7月30日グリーンパーク)
- 20年:53万円
- 個人からの寄付:3万円
- 借入金:50万円(本人)
- 21年:50万円
- 借入金:50万円(本人)
墨田区長:選挙年、個人からの寄付420万円
山本亨(2期)「すみだの夢を実現する会」設立15年3月13日
19年の区長選(4月21日投票)では、共産推薦候補に圧勝。
- 19年:563万円
- 個人からの寄付:420万円
- 政治団体からの寄付:143万円
- 東京商工連盟:10万円(4月6日)
- 東京都医師政治連盟隅田支部:80万円(4月11日)
- 全日本不動産政治連盟東京都本部:10万円(4月12日)
- 自由民主党東京都墨田区第二十五支部:30万円(4月14日)
- その他:13万円
- 20年・21年:ゼロ
※前年からの繰越金428万円・362万円。
江東区長:年間ゼロ円
山﨑孝明(4期)「やまざき孝明後援会」設立82年12月25日
19年の区長選(4月21日投票)では、他の2候補(うち1人共産推薦)を抑えて圧勝。
【前】品川区長:ほぼゼロ
濱野健(4期)「健友政経研究会」設立06年5月23日
18年の区長選(9月30日)では自公推薦を受け、他の2候補(うち1人は野党4党推薦)を抑えて当選。
※区長選が実施された18年の「政治資金収支報告書」は公開されていない(23年1月19日現在)。
※前年からの繰越金259万円(19年)・35万円(20年)・7万円(21年)。
※「はまの区政の継承と発展」を掲げて22年の再選挙(11月20日投票)で圧勝した森沢区長の都議時代の政治資金については、「2022品川区長選挙【再選挙】候補らの懐事情(政治資金)を可視化」参照。
目黒区長:個人からの寄付のみ(35~185万円/年)
青木英二(5期)「新都政研究会」設立91年7月8日
20年の区長選(4月19日投票)では、自公推薦を受け、元区議(立憲・共産・社民推薦)と、維新推薦候補を退けて辛勝。
大田区長:主に本人からの寄付
松原忠義(4期)「松原忠義後援会」設立82年10月14日
19年の区長選(4月21日投票)では自公推薦を受け、他の2候補(うち1人は野党5党推薦)を抑えて圧勝。
- 19年:393万円
- 個人からの寄付:366万円(本人150万円、事務所無償提供108万円、その他97万円)政治団体からの寄付:27万円
- 20年:208万円
- 個人からの寄付:208万円(本人100万円、事務所無償提供108万円)
- 21年:108万円
- 個人からの寄付:108万円(事務所無償提供108万円)
世田谷区長:「機関紙誌の発行その他の事業による収入」が多い
保坂展人(3期)「保坂展人と元気印の会」設立02年2月27日
19年の区長選(4月21日投票)では、自民推薦候補を抑えて当選。
政治資金は23区長の中で、足立区長に次いで多い。また、他の区長と異なり、「機関紙誌の発行その他の事業による収入」が多いのが特徴。
各年の収入内訳を以下に示す。
他の区長には見られないのは、「会費」と「政治資金パーティー」。
- 19年:2,609万円
- 会費:196万円(410名)
- 個人からの寄付:783万円(うち本人427万円)
- 政治団体からの寄付:126万円
- 玉川医師政治連盟:40万円(3月18日)
- 世田谷医師政治連盟:40万円(3月18日)
- 市民教育経済研究会:30万円(11月25日)
- その他:16万円
- 機関紙誌の発行その他の事業による収入:1,005万円
(うち、出版記念会866万円6月24日京王プラザホテル) - 借入金:477万円
- その他収入:21万円
- 政治資金パーティー:57万円
- 東京都医師政治連盟玉川支部:27万円(5月21日)
- 世田谷医師政治連盟:30万円(6月14日)
- 20年:1,227万円
- 会費:165万円(359名)
- 個人からの寄付:150万円
- 機関紙誌の発行その他の事業による収入:767万円
(うち、研修セミナー575万円10月24日CIRQ新宿イベントホール) - 借入金:123万円
- その他収入:23万円
- 政治資金パーティー:47万円
- 世田谷医師政治連盟:24万円(9月24日)
- 東京都医師政治連盟玉川支部:23万円(9月29日)
- 21年:1,318万円
- 会費:167万円(331名)
- 個人からの寄付:158万円
- 政治団体からの寄付:2万円
- 機関紙誌の発行その他の事業による収入:978万円
(うち、研修セミナー829万円12月15日京王プラザホテル)- 政治資金パーティー:117万円(研修セミナー)
- A氏(歯科医師):30万円(11月15日)
- B氏(医療福祉法人代表):30万円(11月29日)
- 東京都医師政治連盟玉川支部:27万円(11月2日)
- 世田谷医師政治連盟:30万円(11月19日)
- 政治資金パーティー:117万円(研修セミナー)
- その他収入:14万円
渋谷区長:選挙年のみ413万円
長谷部健(2期)「ハセベケンの会」設立03年2月21日
19年の区長選(4月21日投票)では公明の推薦を受け、共産推薦候補に圧勝。
- 19年:413万円
- 個人からの寄付:97万円
- 政治団体からの寄付:316万円
- 東京都医師政治連盟渋谷支部:300万円(4月13日)
- 全日本不動産政治連盟東京都本部:10万円(4月13日)
- ほか:6万円
- 20年・21年:ゼロ
※前年からの繰越金135万円。
中野区長:会費3万円(3人)
酒井直人(2期)「あなたと創る明日の中野の会」設立18年2月19日
22年の区長選(5月22日投票)では、元区議・稲垣淳子氏に圧勝。
【前】杉並区長:毎年1千万円超の政治資金パーティー@京王プラザホテル
田中良(3期)「東京良友会」設立93年11月9日
22年の区長選(6月19日投票)で、4期目を目指した現職の田中裕太郎氏は、立憲民主党、共産党、れいわ新選組、社民党、地域政党の生活者ネットワークが推薦する岸本聡子氏に187票差で競り負けた。
政治資金の98%を「1千万円以上の政治資金パーティー」が占めている。
各年の収入内訳を以下に示す。
他の区長には見られないのは、毎年「1千万円以上の政治資金パーティー」が開催されていること。
- 19年:1,308万円
- 個人からの寄付:23万円
- 1千万円以上の政治資金パーティー:1,285万円
(田中良区長を囲む会4月4日京王プラザホテルコンコードボールルーム)
- 20年:1,035万円
- 個人からの寄付:18万円
- 1千万円以上の政治資金パーティー:1,017万円
(田中良区長を囲む会10月21日京王プラザホテルコンコードボールルーム)
- 21年:1,084万円
- 個人からの寄付:19万円
- 1千万円以上の政治資金パーティー:1,065万円
(田中良区長を囲む会10月20日京王プラザホテルコンコードボールルーム)
豊島区長:資金管理団体なし
高野之夫(6期)
19年の区長選(4月21日投票)では、他の3候補(うち1人は共産推薦)抑えて圧勝。
資金管理団体なし。
※豊島区長は「現在、資金管理団体を登録していない」ことにつき、同区秘書室に電話確認済み(23年1月16日)。
北区長:年間ゼロ円
19年の区長選(4月21日投票)では、音喜多駿候補に競り勝つ。
花川與惣太(5期)「花川与惣太後援会」設立76年2月26日
荒川区長:選挙年508万円
20年の区長選挙(11月8日投票)では自公の推薦を受け、共産・社民支持の候補にダブルスコアで5選。
西川太一郎(5期)「西進会」設立95年1月10日
- 19年:174万円
- 機関紙誌の発行その他の事業による収入:49万円
(西川太一郎初詣の会1月20日横浜ローズホテル) - 借入金:125万円(借入先:西川千恵子(妻))
- 機関紙誌の発行その他の事業による収入:49万円
- 20年:508万円
- 個人からの寄付:332万円
- 政治団体からの寄付:132万円
- 東京商工連盟:10万円(10月21日)
- 東京都医師政治連盟荒川支部:100万円(11月4日)
- 機関紙誌の発行その他の事業による収入:44万円
(西川太一郎初詣会1月19日横浜)
- 21年:47万円
- 借入金:47万円(借入先:西川千恵子(妻))
板橋区長:年間ほぼゼロ円
19年の区長選挙(4月21日投票)では自公・国民の推薦を受け、4党推薦候補(立民・共産・自由・社民)に圧勝。
坂本健(4期)「「いたばし力」ナンバーワンを実現する会」設立07年3月2日
練馬区長:年間ほぼゼロ円
22年の区長選挙(4月17日投票)では自公・国民・都ファの推薦を受け、4党推薦候補(立憲・共産・社民・ネット)を僅差で破る。
前川燿男(3期)「前川あきお後援会」設立14年3月26日
足立区長:選挙年2,848万円
19年の区長選挙(5月26日投票)では自公の推薦を受け、共産推薦候補に圧勝。
近藤弥生(4期)「足立創生政策研究会」設立08年2月22日
- 19年:2,848万円
- 個人からの寄付:1,113万円
- 政治団体からの寄付:1,211万円(イキイキ足立を創る会)
- 機関紙誌の発行その他の事業による収入:42万円
(懇親会2月16日浅草ビューホテル83名×5千円) - その他の収入:482万円(貸付金返戻)
- 20年:2,217万円
- 個人からの寄付:1,217万円
- 21年:1,204万円
- 個人からの寄付:1,201万円
- その他の収入:3万円
葛飾区長:選挙年1,111万円
21年の区長選挙(11月7日投票)では自公の推薦を受け、元区議に圧勝。
青木克德(4期)「青木かつのり後援会」設立09年8月3日
- 19年:571万円
- 個人からの寄付:79万円
- 機関紙誌の発行その他の事業による収入:493万円
- 区政報告会:406万円(3月16日)
- 地区代表者懇親会:22万円(7月1日)
- 女性部会懇親会:13万円(8月28日)
- 区政報告会:53万円(11月18日)
- 20年:645万円
- 個人からの寄付:333万円
- 機関紙誌の発行その他の事業による収入:311万円
- 区政報告会:311万円(3月14日開催予定、延期中)
- 21年:1,111万円
- 個人からの寄付:881万円
- 政治団体からの寄付:204万円
- 葛飾区歯科医師連盟:50万円(10月23日)
- 東京都医師政治連盟葛飾支部100万円(10月28日)
- 自由民主党東京参議員比例区第七十八支部:10万円(11月1日)
- 東京都宅建政治連盟葛飾支部:10万円(11月1日)
- 自由民主党東京都第十七選挙区支部:10万円(10月31日)
- 東京商工連盟:10万円(11月2日)
- 全日本不動産政治連盟東京都本部:10万円(10月29日)
- 機関紙誌の発行その他の事業による収入:25万円
- 区政報告会:25万円(9月9日)
江戸川区長:選挙年のみ1,941万円
19年の区長選挙(4月21日投票)では、他の2候補(うち1名共産推薦)を抑えて圧勝。
斉藤猛(1期)「斉藤たけし後援会」設立19年2月5日
- 19年:1,941万円
- 個人からの寄付:1,941万
- 円政治団体からの寄付:448万円
- 自由民主党東京都第十六選挙区支部:10万円(2月13日)
- 自由民主党江戸川総支部:10万円(2月13日)
- 江戸川区歯科医師連盟:100万円(4月4日)
- 全日本不動産政治連盟:10万円(4月9日)
- 束京都医師政治連盟江戸川支都:100万円(4月10日)
- 自由民主党東京都第十七選挙区支部:10万円(4月14日)
- 東京商工連盟:10万円(4月16日)
- 東京都宅地政冶連盟江戸川支部:5万円(4月14日)
- 東京都宅建政冶連盟江戸川支部:3万円(4月23日)
- その他の収入:1万円
- 20年・21年:ほぼゼロ
※前年からの繰越金1,196万円。
【参考】区長の政治資金を調べる方法
以下、長谷部健 渋谷区長の資金管理団体「ハセベケンの会」を例に説明する。
※全ての区長が資金管理団体を登録しているわけではないことに要留意。
区長の政治資金を調べるには、まず当該区長に係る「資金管理団体」を知る必要がある。
同資金管理団体は、東京都選挙管理委員会HPに公開されている「政治団体名簿」のうち「政党以外の政治団体」に掲載されている一覧表のなかから(次図)、「代表者」が区長名で「資金管理」が「有」と表示されている政治団体(資金管理団体)を選び出す。
次に、資金管理団体に係る「政治資金収支報告書」を調べるために、東京都選挙管理委員会HPに公開されている「定期公表」にアクセスする(次図)。
調査したい年のリンクを開くと「資金管理団体」の「頭文字」一覧が表示される(次図)ので、調べたい資金管理団体の頭文字をクリックする。
選択した頭文字に係る資金管理団体が表示されるので(次図)、リンク先を開くと「収支報告書」を閲覧することができる(次々図)。
【参考】資金管理団体について
資金管理団体とは何か?
総務省「なるほど!政治資金 政治資金の規正」や東京都選挙管理委員会「政党、資金管理団体とは」に詳述されているが、厳密に記されているので逆に分かりにくい。
コトバンクの「資金管理団体」が分かりやすいので、以下に引用する。
ポイントは、自分が代表を務める政治団体のなかから一つだけ指定できること、寄付の上限は年間1人当り150万円だが、自分の資金管理団体への寄付は年間1000万円まで許されていること。
- 国会議員、地方議員、地方公共団体の首長などの政治家やその候補者が政治活動のための資金(政治資金)を受け取るために指定する団体。
- 政治団体の一種であり、自分が代表を務める政治団体のなかから一つだけ指定できる。
- 政治資金を扱う団体をできるだけ一本化し、政治にかかる金の流れをわかりやすくして公開する目的で、1995年(平成7)の改正政治資金規正法施行に伴って設けられた。
(中略)- 資金管理団体の収入の多寡は政治家の資金力をみる指標の一つといえる。
- 個人から受け取ることができる寄付や献金の上限額は、特定の個人が特定の政治家に対する突出した影響力をもつことを防ぐため、年間一人当り150万円までに制限されている。ただし政治家自身による自分の資金管理団体への寄付は年間1000万円まで許されており、資金管理団体の資金繰りが苦しくなったときに自ら寄付できる特典がある。(以下略)
★考察★
政治資金規模と選挙結果の関係
- 選挙に圧勝した区長
政治資金が潤沢な区長(足立・葛飾・江戸川)がいる一方で、ほぼゼロを含む少額の区長(中央・文京・江東・太田・中野・豊島・板橋)もいる。前者は潤沢な資金がゆえに圧勝し、後者は盤石なので少額だったということなのか。 - 選挙で接戦あるいは辛勝した区長
政治資金がゼロを含む少額な区長が多い(千代田・新宿・品川・目黒・北・練馬)。政治資金が少ないと苦戦するということなのか。
例外は、田中良【前】杉並区長(毎年1千万円超の政治資金パーティーを開催したのに、野党が推薦する岸本聡子氏に187票差で競り負けた)。
政治資金が多い区長
近藤弥生 足立区長(4期)、保坂展人 世田谷区長(3期)、田中良【前】杉並区長(3期)の収入額は突出している。しかも、選挙の年に限らず毎年収入が多い。
3区長の収入をつぶさに見ると、次のように大きな違いがある。
- 近藤弥生 足立区長
個人からの献金が多いのが特徴(毎年1千万円超)。 - 保坂展人 世田谷区長
「機関紙誌の発行その他の事業による収入」が多いのが特徴(毎年1千万円前後)。
京王プラザホテルでの出版記念会866万円(19年)、CIRQ新宿イベントホールでの研修セミナー575万円(20年)、京王プラザホテル研修セミナー829万円(21年)など、1回のイベントでの収入規模が大きい。 - 田中良【前】杉並区長
毎年、京王プラザホテルコンコードボールルーム(最大収容人数1,500人)で開催される1千万円以上の政治資金パーティーが主な収入源だった。
資金管理団体を登録していない(?)区長
山本泰人 中央区長(1期)、吉住健一 新宿区長(3期)、高野之夫 豊島区長(6期)については、資金管理団体が見当たらない。
※豊島区長は現在、資金管理団体を登録していないことにつき、同区秘書室に電話確認済み(23年1月16日)。中央・新宿区長については、両区に照会中(1月19日現在)。
資金管理団体に登録することのメリットよりもデメリットのほうが上回るということなのか。資金管理団体を登録していない区長は、選挙に係る資金の管理をどのように行い、どのように透明化を担保しているのか。政治資金を扱う団体をできるだけ一本化し、政治にかかる金の流れをわかりやすくして公開するという改正政治資金規正法施行の流れに反していないのか……。
選挙の年になると寄付をする政治団体
選挙の年になると、一部の区長に寄付をする主な政治団体は次の5団体。医師政治連盟は一桁大きい。
- 東京商工連盟:@10万円
- 東京都医師政治連盟○○支部:@100万円
- 東京都宅建政治連盟○○支部:@10万円
- 全日本不動産政治連盟東京都本部:@10万円
- 自由民主党東京都○○支部:10~30万円
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