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23区中古マンション、買い手市場・売り手市場を可視化する

中古マンションの新規登録物件(=新規に売り出された物件)と成約物件(=実際に契約に至った物件)のm2単価は、一般的には前者のほうが高くなると考えれている。

でも、細部をみていくと違った風景が見えてくる。

※投稿22年2月22日(更新23年1月24日:22年12月データ反映)


もくじ

中古マンション平均単価、通常は「新規登録物件>成約物件」なのだが

東日本不動産流通機構が23年1月23日に発表した「首都圏不動産流通市場の動向(2022年)」には「1m2当たり単価」の推移グラフが掲載されている(次図)。

新規登録物件(=新規に売り出された物件)と成約物件(=実際に契約に至った物件)のm2単価は、常に前者のほうが高くなっている。通常、新規に売り出された物件は、価格交渉の過程で値引きが行われて契約に至るからそのような傾向になっている。

平均値としてはそういうなのだろうが、交渉事なので、個々の取引では値引くだけでなく、買い手が多ければ逆に値上げして契約に至る物件もあるはずだ。

1m2当たり単価
首都圏不動産流通市場の動向(202年)P2より

同機構は毎月、「月例マーケットウオッチ」として、首都圏の中古マンション市場データを掲載している。23区を5つの地区(都心3区、城西、城南、城北、城東)に分けて、それぞれ新規登録物件と成約物件の平均単価データも掲載されている。

そこでHPに公開されている過去のデータをひも解き、5つの地区の単価の推移を可視化したところ、興味深い事象が浮かんできた。

地区と時期によっては、「新規登録物件>成約物件」の関係が逆転している場合があるのだ。新規登録物件の単価よりも成約物件の単価のほうが高いというのは、売り手市場であることを示唆している

以下、5つの地域の中古マンション単価の推移を順に示す。

※比較しやすいよう、各グラフの縦軸のスケールを揃えておいた。

都心3区:常に「新規登録物件>成約物件」

※都心3区:千代田、中央、港

都心3区は、新規登録物件と成約物件の単価のギャップが5つの地区のなかで最も大きい。すべての時期において、「新規登録物件>成約物件」の関係が成立している(次図)。

5つの地区の中では相対的に在庫が少ないにも拘らず新規登録物件と成約物件の単価のギャップが大きいのは、5つの地区の中で最も価格の高騰が進んでいることが影響しているのではないか。つまり、価格が高すぎて、買い手が慎重になっていることの表れではないのだろうか。

中古マンション単価・在庫の推移【都心3区】】

城東:「新規登録物件>成約物件」の逆転現象、2回発生

※城東地区:台東、江東、江戸川、墨田、葛飾、足立、荒川

城東地区は、「新規登録物件>成約物件」の逆転現象が発生した時期が2回ある(次図)。13~14年と20年以降。いずれも在庫が減少した時期と符合している。

マンション需要が増加し、複数の買い手が物件を取り合った結果、「新規登録物件>成約物件」の逆転現象が発生したのではないか。そうだとすれば、同地区の在庫は現在、増加傾向にあるので、やがて逆転現象の発生頻度は低下し、買い手市場になるのではないか。

中古マンション単価・在庫の推移【城東地区】

城南:「新規登録物件>成約物件」の逆転現象、頻繁に発生

※城南地区:品川、大田、目黒、世田谷

城南地区は、5つの地区のなかで「新規登録物件>成約物件」の逆転現象が発生した頻度が最も多い。15年以降、頻繁に逆転現象が発生している(次図)。在庫の増減との関係性は特に見られないことから、城南地区は売り手市場とも買い手市場ともいえない。

中古マンション単価・在庫の推移【城南地区】

城西:城南と同様の傾向

※城西地区:新宿、渋谷、杉並、中野

城西地区は、城南地区と同様の傾向が見られる(次図)。

中古マンション単価・在庫の推移【城西地区】

城北:城東と同様の傾向

※城北地区:文京、豊島、北、板橋、練馬

城北地区は、城東地区と同様の傾向が見られる(次図)。

中古マンション単価・在庫の推移【城北地区】

まとめ

23区の5つの地区(都心3区、城西、城南、城北、城東)について、中古マンションの「新規登録物件>成約物件」の推移を可視化してみると、地区と時期によっては、「新規登録物件>成約物件」の関係が逆転している場合があることが確認できた。

新規登録物件の単価よりも成約物件の単価のほうが高いというのは、売り手市場であることを示唆している。「新規登録物件>成約物件」の関係が逆転している地区のマンションは売主にとったチャンスだが、買主にとっては買い控える必要があるのかも。

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