木曜日にチラシが入ってきた。B4サイズの厚手のチラシだ。
金曜日でないところが奇妙だが、マンションチラシとも少々違う。
ゴマ粒サイズの概要欄に目を凝らすと、有料老人ホームのチラシであることに気づく。
【ホーム概要】
- 類型/介護付有料老人ホーム(自立型居室124戸、介護型居室30戸)
- 居住の権利形態/利用権方式
- 利用料の支払い方式/選択方式
- 入居時の要件/入居時自立・要支援・要介護
- 介護保険/東京都指定特定施設入居者生活介護事業者(一般型)
- 居住区分/全室個室・定員1〜2名(親族を対象)
- 介護に関わる職員体制/2:1以上
マンションチラシの場合には、「不動産の表示に関する公正競争規約」という規制ルールが適用される。
有料老人ホームのチラシの場合には、「有料老人ホームに関する不当な表示」(平成18年公正取引委員会告示第35号)と「『有料老人ホームに関する不当な表示』の運用基準」(平成18年事務総長通達第13号)が適用される。
「有料老人ホームに関する不当な表示」は全部で11項、次のように7つの内容から構成されている。罰則規定はない。
- 土地又は建物についての表示
- 施設又は設備についての表示
- 居室の利用についての表示
- 医療機関との協力関係についての表示
- 介護サービスについての表示
- 介護職員等についての表示
- 管理費等についての表示
入居者の大きな関心事の一つは、終身にわたって居住し、介護サービスの提供を受けられるかどうかではないだろうか。
この点につき、「有料老人ホームに関する不当な表示」では、次のような表示を不当な表示としている。
有料老人ホームにおいて、終身にわたって入居者が居住し、又は介護サービスの提供
を受けられるかのような表示であって、入居者の状態によっては、当該入居者が当該有料老人ホームにおいて終身にわたって居住し、又は介護サービスの提供を受けられない場合があるにもかかわらず、そのことが明りょうに記載されていないもの
終身にわたる居住と介護サービスについて、本日のチラシではどのように謳われているのか?
介護が必要になっても継続して住めそうなことが書いてある。
お元気な時から介護が必要になっても生活を継続でいます。※1
さらに「※1」として、ゴマ粒ほどの小さな文字に目を凝らしてみると――。
※1:常時介護が必要な場合には、本人の同意の上、当社が運営する介護居室へ住みかえていただく場合があります。その場合、当初の居室の権利は移行します。自立型の居室より狭い介護居室(個室)となります。月額費用は住みかえ先の介護居室に準ずるため、費用が上がる場合があります。
常時介護が必要になっても、自立型居室から介護居室へ住み替え可能なことまでは分かるが、終身にわたって住み続けられるのかどうかまでは分からない。
有料老人ホーム選びは、マンション選びよりも難しそうだ。開示されている情報が少ないうえに、そもそも有料老人ホーム選びをするような年齢になったら、若いときのような気力も知力もないからだ。
有料老人ホーム選びは人生終盤の生活の質を確保するうえで重要な割には、不明な点が多そうだ。実際のところ、泣き寝入りしている老人は多いのかどうか……。
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