羽田新ルートの20年3月29日の本格運用開始を受けて、それまで実務的に深く関わってきた航空局の2人の室長はそれぞれ異動。鈴木信昭氏は同年4月1日付で茨城県営業戦略部空港対策監に、また、飯田修章氏は同年7月1日付で近畿運輸局交通政策部長に。
高飛車型の飯田修章室長の後釜となったのが、低姿勢でゴマすり型の森住直樹室長(金子快之渋谷区議会議員談)。
※詳しくは、「航空局の役者交代、高飛車型からゴマすり型!?」参照。
国交省としては、人も入れ替え、羽田新ルートの件はすっかり終わったこと扱いにしていないだろうか。予算的にも羽田新ルートは終わった扱いになってしまっているように見える。
3月30日に公表された「令和3年度国土交通省関係予算の配分について」をひも解くと、以前にはみられた「首都圏空港の機能強化」という見出しがなくなっている。
※投稿21年4月9日(更新23年4月3日:22・23年度予算配分方針を追記)
航空局関係予算配分方針の変化
あらためて、2016年度(平成28年度)以降の「航空局関係予算配分方針」の変化を確認してみよう。
16年度:羽田空港の飛行経路の見直し等に必要となる事業を実施
フェーズ1の「オープンハウス型」説明会が開催されたのは2015年7月から9月。フェーズ2は同年12月11日から翌年1月31日。
その後本格化していく航路下住民への対応などの時期を迎え、16年度の予算配分方針では、「羽田空港の飛行経路の見直し等に必要となる事業を実施する」と明記された。
平成28年度 航空局関係予算配分概要(PDF:1.6MB)
(1)首都圏空港の機能強化
国際航空の拠点となる首都圏空港について、国際競争力を強化し経済成長を促進するために必要な施設整備を重点的に実施するとともに、羽田・成田両空港の空港処理能力の約8万回拡大に向けた羽田空港の飛行経路の見直し等に必要となる事業を実施す
る。
17年度:オリパラ、国際競争力の強化、増加する訪日外国人旅行者、地方創生
17年度はフェーズ3・4の「オープンハウス型」説明会が開催された時期。
17年度の予算配分方針では、オリパラの円滑な開催に加え、羽田新ルート導入を必要とする3つの前提条件(国際競争力の強化、増加する訪日外国人旅行者、地方創生)が明記された。
※この段階ではまだ、「騒音負担共有論」は掲げられていなかった。
平成29年度 航空局関係予算配分概要(PDF:1.1MB)
(1)首都圏空港の機能強化
2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の円滑な開催、さらにはその先を見据え、首都圏の国際競争力の強化、増加する訪日外国人旅行者の受け入れ、地方創生等の観点から、首都圏空港の機能強化に向けて、羽田空港の飛行経路の見直し等により2020年までに羽田・成田両空港の空港処理能力を約8万回拡大することに取組みます。
18年度:オリパラ
18年度はフェーズ4・5の「オープンハウス型」説明会が開催された時期。
18年度の予算配分方針では、前年度と同様、オリパラの円滑な開催と空港処理能力約8万回拡大は明記されていたが、羽田新ルート導入を必要とする3つの前提条件(国際競争力の強化、増加する訪日外国人旅行者、地方創生)は消えた。
平成30年度 航空局関係予算配分概要(PDF:1.4MB)
[1]首都圏空港の機能強化
2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の円滑な開催、さらにはその先を見据え、首都圏空港の機能強化に向けて、羽田空港の飛行経路の見直し等により2020年までに羽田・成田両空港の空港処理能力を約8万回拡大することに取り組みます。
19年度:オリパラ
19年度は、制限表面設定や飛行検査など、羽田新ルート運用に向けた最終的な事務処理が行われた時期。
19年度の予算配分方針では、3年続けてオリパラの開催に言及。
平成31年度 航空局関係予算配分概要(PDF:2.2MB)
(1)首都圏空港の機能強化
2020 年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催とその先を見据え、首都圏空港の機能強化に向けて、羽田空港の飛行経路の見直し等により、2020 年までに羽田・成田両空港の空港処理能力を約8万回拡大することに取り組みます。また、国際競争力の強化等に必要となる施設の整備を引き続き重点的に実施します。
20年度:年間約100 万回に拡大
20年度は実機飛行確認(実機での飛行テスト)が実施され、21年3月29日から本格運用が開始された時期。
20年度の予算配分方針では、「首都圏空港の機能強化」という見出しが消え、16年度以降掲げられていた「(2020 年までに羽田・成田両空港の)空港処理能力を約8万回拡大」が「年間約100 万回に拡大することを目指」に置き換わった。
令和2年度 航空局関係予算配分概要(PDF:4.1MB)
(1)航空ネットワークの充実
首都圏空港の発着容量を世界最高水準の年間約 100 万回に拡大することを目指し、引き続き国際競争力強化等に資する施設整備をはじめ、空港アクセスの利便性向上を図ります。
21年度:旅客需要が大幅に減少
21年度は、羽田新ルートが本格的に運用されている時期。
20年度の予算配分方針では、羽田新ルートを連想させる文言はなく、「旅客需要が大幅に減少」に関連した航空会社支援にテーマが移った。
令和3年度 航空局関係予算配分概要(PDF:3.1MB)
(1)航空会社・空港会社への支援と安全・安心な航空輸送の実現
旅客需要が大幅に減少している中、航空ネットワークを維持するとともに、(以下略)
22年度以降
※23年4月3日追記
羽田新ルートを連想させる文言はない。
- (1)航空関連業界への支援パッケ-ジ
- ①空港機能強化に対する空港会社等支援(無利子貸付による支援)
- (2)コロナ禍からの回復に向けた安全・安心な航空輸送の実現と需要回復・増大への的確な対応
- 首都圏空港や地方空港等の機能強化等事業、空港の防災・減災・国土強靱化事業
- (1)航空会社・空港会社等航空関連業界の経営基盤強化等への措置
- ①空港機能強化等に対する空港会社等への支援(無利子貸付による支援等)
- (2)安全・安心な航空輸送の実現と需要回復・増大への的確な対応
- 首都圏空港や地方空港等の機能強化等事業、空港の防災・減災・国土強靱化事業
まとめ
最初はオリパラと空港処理能力約8万回拡大が喧伝されていたが、羽田新ルート運用が始まると「首都圏空港の機能強化」という見出しそのものがなくなった。
- 16年度から19年度までは予算配分方針のなかに、「2020 年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の(円滑な)開催」と「(2020 年までに)羽田・成田両空港の空港処理能力を約8万回拡大」が入っていた。
- 20年度の予算配分方針では、オリパラの話が消え、「(2020 年までに羽田・成田両空港の)空港処理能力を約8万回拡大」が「年間約100 万回に拡大することを目指」に置き換わった。
- 21年度の予算配分方針では、羽田新ルートを連想させる文言はなく、「旅客需要が大幅に減少」に関連した航空会社支援にテーマが移った。
- 22・23年度の予算配分方針には、羽田新ルートという表現はない。
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