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羽田新ルート|参院本会議、赤羽大臣「千葉県への騒音軽減等の観点」

第204回 国会参議院本会議において3月24日、大塚耕平議員(国民民主党・新緑風会)により「羽田新ルート」関連の質疑があった。

ネット中継録画をもとに、テキスト化(約2千800文字)しておいた。

※時間のない方は「質疑応答のポイント」と最後の「解説」をお読みいただければと。


質疑応答のポイント

大塚議員:日米地位協定や羽田新ルートなど、具体的で現実的な努力をするべき

大塚耕平 参議院議員
大塚耕平 参議院議員
(国民民主党、4期、早大卒・博士、元日銀、61歳)

日米同盟が我が国の安全保障にとって有効に機能するためには、駐留米軍に対する国民感情が良好であることが必要です。
2018年に沖縄県が独自にドイツやイタリアの実情を調査し、駐留米軍に対しても国内法適用が原則となっていることを確認しました。沖縄県の調査に敬意を表します。


一方、外務省のホームページには、長年にわたって、駐留外国軍に対して国内法が適用されないのは国際法の常識という趣旨の内容が記されていました。そのことに関して、国会で本格的に議論しようとした矢先の2019年1月、外務省のホームページからその記述が削除されました。一歩前進ですが、実態は変わっていません。


そこで伺います。駐留外国軍に対して原則として国内法の適用が及ぶというのが国際法の定めであり、日本政府も、そのような理解であるか否か、外務大臣に伺います


最近の米軍ヘリの都心上空低空飛行問題は、このことに起因します。
駐留米軍には、日本の航空法が適用されないため、危険な低空飛行が行われています

横田等の米軍基地と米軍六本木ヘリポートの間を飛行するパトリオットエクスプレス等の米軍機の飛行空域を保全するために、東京五輪を念頭に置いた民間機の羽田新ルートの空港への進入角度が急勾配に設定され、その危険性について、パイロットや国際民間航空組織から警鐘が鳴らされていたものの、昨年3月29日から羽田新ルートの運用がスタートしました。


開始直前の昨年3月24日、財政金融委員会において、その危険性を当時の安倍首相にお伝えしたところ、新ルート開始のことや問題点を明確には認識していませんでした。


横田空域やパトリオットエクスプレスの航路の見直しが、直ちには困難ということであればコロナ禍によって、入国者数も、航空便も少ないなか、東京五輪の外国人観光客断念も決定されたことでもあり、せめて羽田新ルートを一時凍結してはどうでしょうか

国交大臣に羽田新ルート設営の背景、進入角度が急勾配に設定された背景および、一時凍結に関する所見を伺います。

万が一にも事故が起き、駐留米軍に対する国民感情を害すれば、結局は日本の安全保障を害することになります。ホストネーションサポートに対する国民の理解を得るためにも、日米地位協定や羽田新ルートなどに関して、具体的で現実的な努力をするべきであることを申し述べて質問といたします。

茂木 外務大臣:外国軍隊に対する受け入れ国の法令の適用について調整が行われる

茂木敏充 外務大臣
茂木敏充 外務大臣
(自民党、9期、元マッキンゼー社員、東大経済卒、65歳)

最後に、駐留外国軍に対する国内法の適用についてでありますが、正確に申し上げますと、3つのポイントがあります。


まず第一に、一般に国家は、その領域内で主権を有しており、その領域内にある所には外国人を含め属人的にその国の法令が適用されます。


第二に、一般的に受け入れ国の同意を得て当該受け入れ国内にある外国軍隊およびその構成員等は受け入れ国の法令を遵守する義務を負いますが、その滞在目的の範囲内で行う公務については、受け入れ国の法令の執行や裁判権等から免除されると考えられています。こうした基本的な考え方は国際的に広く共有されていると理解をしております。


そして第三に、派遣国と受け入れ国との間で、外国軍隊の活動が、その滞在目的に沿った形で問題なく行われるように、個々の事情を踏まえ、受け入れ国の法令の適用について具体的な調整を行うため、地位協定を含む個別の取り組みが結ばれることが一般的であります。

今ご説明申し上げましたような中で、外国軍隊に対する受け入れ国の法令の適用について調整が行われることになります。

赤羽 国交大臣:千葉県への騒音軽減等の観点から、引き続き運用していく必要

赤羽一嘉 国交大臣
赤羽一嘉 国交大臣(公明党、8期、元三井物産社員、慶大卒、62歳)

大塚議員から羽田新飛行経路について3点お尋ねがございました。
まず、第一点目の新経路設営の背景についてお答えさせて頂きます。


昨年3月29日から運用を開始いたしました羽田空港の新飛行経路につきましては、主に2つの背景から導入されたものでございます。


第一に、我が国の国際競争力の強化等の観点から、首都圏空港の機能強化は必要不可欠であり、平成25年から学識経験者、専門家らを交えて議論を行った結果、羽田空港のさらなる発着容量の拡大のためには新飛行経路の導入が最善かつ唯一の方策と位置付けられたものでございます。


第二に、従来の経路では千葉県上空を航空機が飛行しておりましたが、千葉県および関係市町からはこの騒音影響の低減について継続的に要望を頂いてきたところでございます。東京都を含めた首都圏全体で騒音負担の共有を図る必要があったところでございます。


次に、新飛行経路における降下角引き上げの理由についてお答えさせて頂きます。

新経路につきましては平成27年以降、延べ136回以上において住民説明会を開催してまいりました。その中で、住民の皆様から騒音影響を軽減してほしいとの強いご意見、ご要望があったことを受けまして、着陸地点を海側に設置することによる飛行高度の引き上げや低騒音機の導入促進などの騒音対策に加え、降下角の引き上げによる飛行高度の引き上げを実施しているところでございます。


議員ご指摘の安全面につきましては、運用開始前に3.45度超で進入後、3度で着陸する2段階進入も可能であることなど、運行上の留意点につきまして外国航空会社を含む各航空会社に説明会等により周知を行い、安全運行に万全を期しております。


さらに昨年3月、新飛行経路を実際に飛行したパイロットから直接ヒアリングを実施をいたしました。パイロットからは降下角の引き上げ自体は技術的に困難ではなく、安全上、問題なく運行できていることを確認させていただきました。

実際にこれまでの運用面においても、安全上問題があるような事例があったとは承知をしておりません。


最後に、新飛行経路の一時凍結についてお答えさせて頂きます。

現下のコロナによる影響のため、国内航空・国際航空共に大幅に減便が生じておりますが、羽田空港の新飛行経路は将来的な航空需要の拡大を見据え、我が国の国際競争力の強化並びにかねてよりの懸案事項でありました千葉県への騒音軽減等の観点から導入したものであり、引き続き運用していく必要があると考えております。

他方、本件につきましては、地元の地方議員の皆様からの強い要望もあり、また私自身の新飛行経路の固定化回避、騒音軽減の問題意識から、航空機や航空管制の技術革新も新飛行経路の導入を提案した平成26年当時に比べ進展している点を踏まえ、新飛行経路の固定化回避、騒音軽減ための技術的選択肢を改めて検討したいと考え、昨年6月より、有識者およびパイロットの方々にも参画を頂きながら、羽田新経路の固定化回避に係る技術的方策検討会を立ち上げてご議論いただいているところであります。
引き続き検討をしっかり進めてまいりたいと考えております。以上でございます。

解説

「助走期間論」から「騒音負担共有論」へ

コロナ減便と東京五輪の外国人観光客断念決定を踏まえ、羽田新ルートを一時凍結してはどうかという大塚議員(国民民主)の提案。

赤羽大臣が一時凍結しないための理由として掲げたのが「千葉県への騒音軽減等の観点」、いわゆる「騒音負担共有論」(千葉県に偏っていた飛行騒音の負担を平準化する)である。

コロナ減便が長期化するなかで、「助走期間論」(コロナ減便期間を羽田新経路のフル運用に向けた助走期間と位置付けること)では、羽田新ルートの運用を強行し続けることに説得力がなくなってきた。

そこで航空局長が20年4月6日の衆議院「決算行政監視委員会第四分科会」で「騒音負担共有論」を持ち出したのである。新型コロナの影響で東京オリ・パラ中止や訪日外国人激減し、羽田新ルート導入の必要性3点(国際競争力強化、訪日外国人の増加、日本全国の地域活性化)の前提条件が崩れたことを取り繕うために官僚が言い始めたのである。その後、赤羽国交大臣は、機会あるごとにこの「騒音負担共有論」をPRするようになった。

 

※「騒音負担共有論」を最初に言い出したのは、13年4月15日衆議院「予算委員会」田村明比古航空局長(現、成田国際空港株式会社代表取締役社長)。奥野総一郎議員(千葉9区、当時の民主党)の質問に対する政府参考人としての答弁。

  • 奥野:(前略)なぜ羽田の騒音を千葉市民が我慢しなきゃいけないんだ、もっと首都圏全体で引き受けてくれないかという声があるんですが、その点についていかがでしょうか。
  • 田村:(前略)現在のルートを直ちに大きく変更するということはなかなか容易ではございませんけれども、首都圏全体での騒音共有という課題は、今後の機材の低騒音化、あるいは将来の技術の進展等にあわせて取り組むべき長期的課題として、引き続き検討してまいりたいというふうに考えております。
「騒音負担共有論」に妥当性はあるのか

では、この「騒音負担共有論」に妥当性はあるのか。

従来ルートは千葉県上空を5000ft(≒1.5km)あるいは4000ft(≒1.2km)以上で通過することになっている(次図)。

南風時に南側からB滑走路(RWY22)南風時に北側からD滑走路(RWY23)

従来ルートで騒音影響を受ける千葉県民(約7.3万人)の負担を軽減するために、その15倍の都民(約109万人)に影響を及ぼす羽田新ルートを運用するというロジックは合理的でないというのが筆者の考え。

「騒音負担共有論」は、飛行高度的にも騒音影響人口的にも無理筋に持ち出したロジックなのである。

詳しくは、「「騒音負担共有論」は妥当なのか?」参照。

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