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羽田新ルート|「VOICES」パイロットが経験した不安全飛行

パイロットが経験した不安全飛行を報告する航空安全情報自発報告制度(VOICES)
略語が多用されていて門外漢には読みづらいが、パイロットらが羽田新ルートの難しさを訴えていることだけは理解できる。


もくじ

航空機減便でパイロットの技量低下(ビジネスジャーナル)

コロナ禍で乗務機会が大幅に減ったパイロットの技量低下を懸念している元JAL機長で航空評論家の杉江宏氏の論考を読んでいて、「航空安全情報自発報告制度(VOICES)」の存在を知った。

航空機減便でパイロットの技量低下、安全面に深刻な影響…羽田新ルートの危険性も重なる

(前略)パイロット自身が経験した不安全飛行を報告する航空安全情報自発報告制度(VOICES)でも、多くのパイロットが南西風による強い横風(クロスウインド)に苦労したり、高度1000フィートで風の変化が激しくなったり、降下率が瞬時に毎分1000フィートの降下率を超えることによってゴーアラウンド(進入着陸復航)する事例を紹介し、状況によっては以前の南西風に正対する海上ルートに戻す柔軟な運用を求める意見も出されている。(以下略)

ビジネスジャーナル 3月13日

航空安全情報自発報告制度(VOICES)とは

航空安全情報自発報告制度(VOICES)とは、国土交通省航空局が民間航空の安全に関する情報を幅広く収集するため14年7月10日に始まった制度。

第三者機関として公益財団法人航空輸送技術研究センターがVOICES(VOluntary Information Contributory to Enhancement of the Safety)を運営している。

航空安全情報自発報告制度(VOICES)
(VOICESのトップページ)

 

VOICESには、業務実施者間で共有すべき重要な安全情報として「FEEDBACK」が公開されている(次図)。

VOICES

パイロットが経験した不安全飛行の内容(一例)

杉江氏が記事で言及していた羽田新ルート問題に係る情報は、20年12月21日に発行された「VOICES共有情報 FEEDBACK No.2020-02号」全49頁(次図)から読み取ることができる。

VOICES共有情報 FEEDBACK No.2020-02号

たとえば、4人のパイロットからの報告(内容は省略)に対して、それぞれVOICES コメントが付されている。

45.Tailored NAV Database を使っていれば…(P16)

  • VOICES コメント:
    RNAV RWY16L Approach については、Tailored NAV Database が設定され外気温の目安を持って運用している会社もあるようです

46.羽田 RWY 16 運用について(P16-18)

  • VOICES コメント:
    天候やトラフィック量に応じて、柔軟な対応が行われることにより安全で効率的な運航が可能になるかもしれませんので、新運用開始後のリスク再評価が必要かもしれません

47.羽田南風時の柔軟な RWY 運用を経験(P18)

  • VOICES コメント:
    新運用開始後に様々なところで意見が出され、柔軟な運用が見られるようです。引き続き、安全運航に寄与する滑走路運用が望まれますね

49.羽田の STAR で降下指示の遅れ(P19-20)

  • VOICES コメント:
    羽田の新運用に関しては、Flight Operation だけではなく、管制の Operation にも影響を与えている可能性があります。新運用開始後のリスク再評価が必要かもしれません。(以下略)

 

パイロットはどのような不安全飛行を経験し、どのような留意・改善事項を報告しているのか。その一例として「46.羽田 RWY 16 運用について」をひも解いてみよう。

略語が多用されていて門外漢には読みづらいが、パイロットらが羽田新ルートの難しさを訴えていることだけは理解できる。

少しでも理解が進むよう、滑走路に係る略号を次図、羽田新ルートに係る主な表示を次々図に示しておいた。

滑走路に係る略号
羽田空港飛行コースホームページ|国交省


羽田新ルートに係る主な表示
(同上)

 

※以下、( )付きの薄いグレー文字は、素人が理解しやすいように私が加筆した。

その 1-南西風強風時の 16L 着陸

南西強風時にC滑走路到着ルートで苦労したパイロットから、従来のB/D滑走路の運用を柔軟に行うべきという報告。

気温28℃、最終的なTWR通報値210/21でのRNAV RWY 16L での着陸でした。羽田の運用方式によりRWY 16L でしたが、対地 200ft での降下率が 921fpmになり対地 100ft でのバンクも左へ 9.3°となっての着陸でした。

騒音対策より安全な進入が大切なのは明らかです。様々な理由があるのは承知していますが、組織を通してでも強風時には RWY 22、23 の運用を柔軟に行うよう働きかけることの必要性を強く感じました

私自身も今後、必要な場合は管制にリクエストするつもりです。

その 2-RNAV RWY16R APCH での Tail Wind

都心上空で追い風(北風)が卓越しているとA滑走路到着ルートでの着陸は厳しいという報告。

当日は、GODIN R ARR に沿って LIDEN(雷監視システム)の情報に Echo Line があり、STAR より南側を Radar Vector にて TS を避け Flight。都心上空では北風が卓越しており、以下の状況で各 WPT を通過。

REMUS : Flap 10, 200kt, 5,000ft RIPOD に向け降下を開始するも減速せず、Gear DN RIPOD : Flap 15, Gear DN, 170kt, 3,800ft通過直後、Tailored の Steep Path に乗るために加速傾向が出たので、一旦 Flap 25 にした後、LDG Flap30。その頃から、風が前に回ってきたため、暫く Idle Thrust のまま。気温は 28℃でした。

このように上空で追風が卓越していると、この Profile での Approachは構えていないとかなり厳しいものになります。この高度で追風が吹きそうな場合は、事前に情報があると対処しやすくなるかと思います(前日の天気予報でたまたま、都心上空では、北風が吹くのを見ていた)。あるいは、Noise の関係もあるのでしょうが、Profile そのものの見直しも必要かと思われます。

その 3-強風時における RWY 16 運用

悪天候下で、実施する機会がほとんど無い進入を強いられたパイロットからの報告。

当日は前線を伴う低気圧の通過により、悪天候下での運航となった。

ATIS は RNAV RWY 16L/R 220/20G31 を報じていた。NOTAM により、RWY16Rは Non-Grooved 運用であり、横風制限超過による GA(ゴーアラウンド)や RWY(滑走路) 変更、Low VIS/CIG に伴う ILS Approach の可能性を想定した準備が必要となった。

実施する機会がほとんど無い Approach ということもあり、STAR を含め非常に負荷の高い運航となった。もちろんフライト中も揺れを避けるための雲避け操作や、低気圧への対応など Briefing を阻害する要因が多かった。

TAF Amendment なども確認しながら降下を開始し、TYO APP に移管された後、横風制限超過に伴い ILS RWY16L を Request した。ATC (管制)も STAR Clearance の発出を忘れるような状況だった。途中、Workload が高まったことにより、250kt 以下への減速や Checklist の実施を忘れそうになった。Short Final Very Rough from B773 の PIREP もあった。

最終的に確認したATISではILS 22/23に運用が変わっていた。実施機会が少なく、STAR を含め、非常に複雑なApproach の Briefing を RNAV RWY16L/R と ILSRWY16L/R と複数実施しなければならず、低高度での CDU(control display unit) への再入力操作などが発生する。天気状況に応じ、最も安全に運航できる RWY 運用が望まれる

その 4-悪天候・横風強風下の羽田 RWY 16L/R Approach の Threat

悪天候・横風強風下での着陸は滑走路の選択が複数あり、予測して着陸準備を全て整えておくことが難しいという報告。

当日、羽田の天候は時折 Light SHRA(しゅう雨) が報じられており、RWY 16R は Non Grooved RWY(水膜によって路面の溝が無くなったツルツル状態) 扱いであった。

RNAV 16R Approach が許可され、進入開始時の Windは 220/25kt であった。TWR からの通報では 16R のRWY Condition は DRY であった。Landing Breifing において ALWIN(Airport Low Level Wind shear Information)で確認したとおり、500ft までは 50kt 程度の風速であり、それ以下で風速が変化したため、Speed とCenter Line の Keep に注意が必要であった。着陸直前に報じられた Wind は 220/33kt であった。着陸することはできたが、次のような問題があったと思い報告します。

当日のような降水の可能性がある場合、強風横風時の HND 南風運用では Approach Type、RWY の選択肢が複数あり、予測して着陸準備を全て整えておくことが難しく Error や UAS (Undesirable Aircraft State: 望ましくない機体の状態) を引き起こしかねないThreat となっている。

不安定になった場合は着陸復行を行えば良いのではあるが、Safety Margin が低下していた可能性があると懸念します。早めの余裕がある気象状態で Approach Type と RWY を変更する運用にすることが望まれます。

その 5-羽田空港 南西強風時の RWY の運用

新ルートなのか従来ルートなのか何らかの基準を設定する必要性を訴える、南西強風時にA滑走路到着ルートで着陸したパイロットからの報告。

当日は TAF (運航用飛行場予報気象通報式)上でも Actual でも 220/25G35 程度となっており、気温が 30 度ほどであったが HND の運用方式により RNAV T RWY16R で進入した。

2,000ft付近でも風が 40kt ほどの中、Approach は安定していたものの 1,000ft 以下では非常に Rough Condition であり、降下率も一時的に 1,000fpm を超えるような状況であったため、Control に苦心した。

種々の理由はあろうかと推察しますが、このような状況であれば何らかの基準を設定し、それを超えた場合 B、D 滑走路を使用するような柔軟な運用の必要性を強く感じました

その 6-羽田悪天時は ILS の柔軟な運用を

羽田悪天時は降下角3度の進入は難しいので、RNAV(人工衛星を利用する進入方式)ではなく、進入経路の状況を加味した柔軟な ILS(地上からの精密な誘導電波を利用する進入方式) 運用を希望するというパイロットからの報告。

羽田では南風時、15-19 時の時間帯に、RNAV RWY16L/R が運用されているが、Approach Area の気象状態を総合的に判断し、ILS 進入の柔軟な運用を希望する

7 月中旬、XX 便(STA1715L)の FAF 通過後、高角度進入で減速できず、通常は使わない Flap 25 とSpeed Brake の併用で減速し Final Landing Flap を Setし着陸に至った

〈天気概況〉

到着予定時刻の TAF では南風から北風にシフトと予報され、空港北側にはシアラインが存在し、徐々に南下する状況で使用滑走路は南風運用から北風運用に変更されるかどうかの境界となる時間帯だった。また空港近傍では大気不安定のためCB(積乱雲) が発生しやすい状況であり、STAR 経路上の Echoも気になる状況だった。

AKSEL L ARR の経路上は SCOPE-SOPPY 間にTCU(塔状積雲) 群が存在し、Radar Vector による Short Cut でSNARE に向かった。空港 Abeam まで 10,000ft を維持した。

10,000ft から SNARE 6,000ft への降下は南風のため Speed Brake Full Extend が必要となった。LAUDA(FAF)3,400ft を Gear Down、Flap 15、170ktで通過し、VNAV PATH のまま Flap 15 SPD をCommand したが、追い風成分約 20kt、3.77°Path では減速しなかった。減速のため Flap 25 とし、Speed Brake を 1/2 Extend した。

3,000-2,000ft の間で前線帯を通過、Tailwind(追い風) から左前方の Headwind(向かい風) となる間、一時的に増速した。風向がVariableだったため1,500ftの 3° Path に乗るまで LDG Flap 30(Limit 175kt)とすることはできなかった

ほぼ 3° Path に乗ったのと減速を確認後 Speed Brake を Down し 1,300ft で LDG Flap 30、Speed Brake Arm、LDG Checklist 実施。1,100ftで Stabilized Approach Condition 確立。我々の後続機着陸後 RWY Change となり、ILS RWY34L/R となった。

〈結論〉

気温 30℃、Tailwind(追い風) Condition では 1,000ftまでに Stabilized Condition にするには ILS 進入の方が遥かに容易で、その分 ATC、Traffic、Weather 等に注意を向けることができる。

Tailwind (追い風)での高角度進入は Configuration Set に Monitor が集中する傾向にあり、他の Monitor が疎かになりやすい。よって VISと Ceiling だけではなく進入経路の状況を加味した柔軟な ILS 運用を希望する

その 7-HND(羽田)で南風における滑走路選定

使用滑走路がいつどう変わるかが直前まで確定しないのは、運航乗務員としては大きな不安全要素であると、改善を訴えるパイロット。

HND(羽田) への到着便において使用滑走路の選定に不安全要素を感じました。

夕刻 16:30 着陸予定のフライトでした。予報では同じく夕刻から空港北側に活発な積乱雲の発達が予想されており、風は南風の予報(160/08 だったと思います)。RWY 16R/L ですと進入コース上にちょうど積乱雲が重なってしまうので、使用滑走路がどうなるのか当初から気になっていました。

実際は Tailwind(追い風) での Highway VisualRWY34R でした。しかしながら実際の風は Limit ギリギリの Tailwind(190/15 だったと思います)。しかも気温 34℃だったので CACAO を 4,000ft で通過すると 3 度の Path より高くなります

Tailwind と高温により CACAO 以降 1,500ft/min で降下しましたがなかなか 3 度の Path に会合せず、会合したのは 2,000ft手前だったと思います。

  • ① 夕刻時間帯に RWY 22/23 も使用滑走路の選択肢の一つに加えていただきたい。
    Tailwind 運用限界に近い Operation を強いてまで 22/23 を使わないのは安全性に懸念があります。同様に 220 度(南西)方向からの強風時での RWY 16R/L (A/C滑走路)の使用についても、横風制限に近い Operation を強いるのは安全性に懸念があります。

  • ② Highway Visual RWY34R での CACAO の通過高度を真高度(気圧高度に標準大気の補正を加えて海面からの高度)で 4,000ft にしていただきたい。
    先に述べたとおり気圧高度(その場所の大気圧を換算した高度) 4,000ft では高温時にわざわざ安定した進入から外れる Operation をせざるを得なくなり安全性に懸念があります。

  • ③ 15 時から 19 時の間の 3 時間程度、というような使用滑走路がいつどう変わるかが直前まで確定しないのは、運航乗務員としては大きな不安全要素なので改善を望みます。
VOICES コメント

天候やトラフィック量に応じて、柔軟な対応が行われることにより安全で効率的な運航が可能になるかもしれませんので、新運用開始後のリスク再評価が必要かもしれません。

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2021年6月1日、このブログ開設から17周年を迎えました (^_^)/
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