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羽田新ルートの特異性、パイロット団体の声明文をひも解く

ALPA Japan(日本乗員組合連絡会議)は4月20日、羽田新ルートの3.45 度の進入方式に係る声明文「東京国際空港 RNAV RWY16L/R進入方式に関する考え方」をホームページに公開した。

3.45度の進入方式が直ちに「危険」であるとは言えないが、羽田は他の空港と異なるので十分な準備と周知期間が必要だとして、その理由を4つ掲げている。

同会議から引用許諾を得たので、以下紹介しよう。


もくじ

東京国際空港 RNAV RWY16L/R 進入方式に関する考え方 (声明)
ALPA Japanの声明文書(A4×2枚)

羽田新ルートの4つの特異性

航空局が公示した3.45度の進入方式が直ちに「危険」であるとは言えないが、羽田は他の空港と異なるので十分な準備と周知期間が必要だとして、その理由を4つ掲げている。

  • 交通量の多さ
  • 多くの大型機が運航する
  • 3.45度
  • 気象環境

以下、順にみてみよう。

交通量の多さ

多くのパイロットが3度を超える進入方式を初めて経験することになる。

まず、第一に「交通量の多さ」が挙げられます。

東京国際空港の離発着回数は、世界的に見ても上位の交通量を誇ります。これだけ交通量が多い空港であるにも関わらず、南風運用で好天時では3度を超える進入角を有する進入方式のみが主な運用となることが想定されています。

3度の進入角を有する進入方式が世界の空港全体の99%以上であることから考えると、この運用を東京国際空港で実施するということによって、多くのパイロットが3度を超える進入方式を初めて経験することになる、ということになるのです。

多くの大型機が運航する

大型の航空機が3度を超える進入角による進入着陸を実施する場合、安全上のスレット(筆者注:Threat 脅威)も高まる。

第二に、「多くの大型機が運航する」ことが挙げられます。

東京国際空港を離発着する航空機は国内線でも大型機が比較的多いこと、そして欧米を中心とした長距離路線が多く就航していることから、東京国際空港では大型機の比率が高いのが特徴です。

大型機は中小型機に比べて重量が重く、国際線の大型機はさらに重重量となります。重量に比例して進入速度も速くなることから、大型の航空機が3度を超える進入角による進入着陸を実施する場合、安全上のスレット(筆者注:Threat 脅威)も高まることが分かっています。

3.45度

羽田新ルートのような、「交通量が多く」「大型機が多く運航する」という2つの環境下にある空港で、3.45度程度の深い進入角による進入方式を設定しているところは存在しない。

第三に「3.45度」という進入角が挙げられます。

日本国内や海外の空港を見回してみても、「交通量が多く」「大型機が多く運航する」という2つの環境下にある空港で、3.45度程度の深い進入角による進入方式を設定しているところは存在しません (3.2度程度の進入角による進入方式を設定している空港は複数存在します)。

3.5度の進入角を有する進入方式を設定している海外の「交通量が多く」「大型機があまり多くない」大きな空港は幾つか存在しますが、それらの空港は滑走路が2本以上あり、パイロットは3度の進入角を有する進入方式を実施出来る滑走路を選択することが出来ます

また、3.5度の進入角を有する進入方式を設定している「大型機が運航する」国内外の空港も存在しますが、大型機が就航している航空会社と便数は限定されることから、スレット(筆者注:Threat 脅威)の周知について比較的容易であると考えられます。

他方、東京国際空港における新しい運用方法では、2本の滑走路での進入方式がいずれも3.45度に限定されており、パイロットが3度の進入方式を選択することは原則として出来ず、運航する全てのパイロットがそのスレットに対して準備しておく必要があります

もしも3度の進入角を有する進入方式をパイロットが要求した場合、適切な管制間隔を設定するために30分から1時間程度の待機時間が必要であると予想されています。

つまりこういうこと(次図)。

 羽田新ルートの特異性

気象環境:横風で進入

RWY16LとRWY16Rによる運用(南風時の到着ルート)となった場合、強い横風下で進入することになるため、比較的高度な操縦技術が要求される。

そして第四に「気象環境」が挙げられます。

一概に南風と言っても、東京国際空港で南風が卓越する場合、その多くは「南西風」であることがよく知られています。

現在、南風運用の場合はRWY22とRWY23を使用しますが、強い南西風が卓越している場合はほぼ向かい風となるため、進入着陸の操縦技術はそれほど難しくありません。

一方でRWY16LとRWY16Rによる運用となった場合、強い横風下で進入することになるため、比較的高度な操縦技術が要求されるでしょう。

これは現在の成田国際空港で同方向の滑走路において難易度の高い進入着陸が求められることからも充分に予想されます。これに3度を超える進入角が付加されると、操縦にかかる負荷は更に高まります

つまりこういうこと(次図)。

卓越風と到着ルートの関係

3.45度の進入方式、安全上のリスクが存在し続ける

羽田新ルートの「未知数と言える部分が潜在的に多数ある」として、パイロットは留意すべき点を事前に熟知しておくために、IFALPAとALPA Japanは、「IFALPA Safety Bulletin」と「ALPA Japan Technical Information」を公開したのだという。

こうして見ていくと、東京国際空港でこの新しい運用を確実に実施することについて、未知数と言える部分が潜在的に多数あることが分かります。

そのため、この新しい進入方式を実施するにあたり、パイロットは留意すべき点を事前に熟知しておかなければなりません

そこでThe International Federation of Air Line Pilots’ Association (IFALPA) とAir Line Pilots’ Association of Japan (ALPA Japan) は、2月1日から実施される「実機飛行確認」、さらに3月29日から正式運用が開始されるタイミングを見据え、安全で確実な進入着陸を実施するために必要な情報を、東京国際空港で離着陸を行う全てのパイロットに提供するべきであるという結論に至り、「IFALPA Safety Bulletin」及び「ALPA Japan Technical Information」を公開しました。

※「IFALPA Safety Bulletin」「ALPA Japan Technical Information」については、「羽田新ルート|降下角3.45度、パイロットらの懸念 」参照。


3.45度の進入リスクの緩和を図る必要があるとしている。

これらの情報提供をパイロットに対して確実に実施し、十分な準備期間を付与することによって、新進入方式に対する安全を一定程度確保することは可能であると私たちは考えています。しかし、これはあくまでも新進入方式を実施するにあたっての対応策です。

東京国際空港において今後も継続的に3.45度の進入方式を実施することに対して、「安全上のリスクが存在し続けることになる」ことから、「将来的にそれらリスクの緩和を図る必要がある」と私たちは考えます。

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2020年6月1日、このブログ開設から16周年を迎えました (^_^)/
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