IATAのチーフエコノミスト・ブライアンピアース氏は、世界の旅客輸送量は23年まで19年のレベルを超えることはなく、25年まで、以前の予測よりも10%低くなると予想している。
IATA予想、2025年まで旅行需要停滞(Bloomberg)
IATA(世界の航空会社で構成される業界団体)のチーフエコノミスト、ブライアン・ピアス氏は5月13日、2025年時点でも世界の旅客輸送量は当初予想を約10%下回るとの見方を示した
米航空会社株が大幅安-2025年まで旅行需要停滞とIATAが予想
13日の米株式市場で米航空会社の株価が大幅安となった。国際航空運送協会(IATA)が旅客需要について、新型コロナウイルス危機前の水準を回復するのは少なくとも5年先になると警告したのが材料視された。
IATAのチーフエコノミスト、ブライアン・ピアス氏は同日のメディア向け説明会で、2025年時点でも世界の旅客輸送量は当初予想を約10%下回るとの見方を示した。(以下略)
国際航空運送協会(IATA)のホームページで確認してみよう。
25年時点でも世界の旅客輸送量は当初予想を約10%下回る
国際航空運送協会(IATA)が5月13日に発表した記事「Don’t Make A Slow Recovery More Difficult with Quarantine Measures」には、2つのシナリオが描かれている。主な内容は次の通りだ(原文は英語)。
ベースライン・シナリオとして、2025年まで世界のRPK(旅客キロ)は以前の予測よりも10%低くなると予想されている。
ベースライン・シナリオ
- 2021年には、世界の旅客需要(収益旅客キロ、RPKで測定)が2019年のレベルより24%低く、2021年のIATAの2019年10月の航空旅客予測より32%低くなると予想しています。
- 2023年まで2019年のレベルを超えることはありません。
- 国際市場が開かれ、経済が回復するにつれて、2020年の低い地点からの空の旅がさらに成長するでしょう。しかし、2025年まで、世界のRPK(旅客キロ)は以前の予測よりも10%低くなると予想されます。
悲観的シナリオ
- 2021年のグローバルRPKは2019年のレベルより34%低く、2021年の以前の予測を41%下回る可能性があります。
IATAのチーフエコノミスト、ブライアンピアース氏のプレゼン資料「Outlook for air travel in the next 5 years report (今後5年間の空の旅の展望レポート)」(PDF:450KB)にポスト・コロナの旅客需要予想カーブが描かれている(次図)。
(ブライアンピアース氏プレゼン資料の11枚目にピンクで加筆)
羽田新ルートを自粛しないのか
なぜ、国は羽田空港の増便を強行しようとしているのか?
国交省はFAQ冊子のなかで、羽田も成田も既にフル稼働していることを増便理由の一つとして掲げている。
なぜ羽田空港の国際線を増便する必要があるのですか。
人口減少や少子高齢化が進む中、日本の経済社会を維持・発展させていくためには、今後より一層諸外国との結びつきを深めていくことが重要です。
人口減少や少子高齢化が進む中、日本の経済社会を維持・発展させていくためには、今後より一層諸外国との結びつきを深めていくことが重要です。
世界の主要都市の空港と比較すると、羽田空港・成田空港を合わせても国際線の就航先が少ないのが現状です。また、香港、シンガポール、ソウルなどアジアの主要諸国よりも国際線の就航先数・利用客数ともに下回っています。
- 今後、世界的な航空需要は、アジア地域を中心に更に伸びると言われています。このような中で、羽田空港は、深夜・早朝の時間帯を除き、現在フル稼働しています。
- また、時差の影響により国際線の需要が一定の時間帯に集中する傾向があります。
- このような時間帯には、羽田空港のみならず、成田空港も既にフル稼働の状態にあり、成田空港と羽田空港の両方について、更なる国際線の増便のための方策を考えていく必要があります。
(FAQ冊子v6.2_P10)
羽田・成田フル稼働増便論はすでに、その前提条件が崩れている。ところが、赤羽国交大臣は、減便状況を逆手にとって、フル運用に向けた助走期間と強弁し、羽田新ルートの運用を強行し続けている。
コロナ禍で自宅での自粛を強いられている住民に対して、国は室内換気を奨励する一方で、頭上から飛行騒音を降り注ぐという悪政を敷いている。
上述のように、今後長期間にわたって航空需要が低迷する可能性が予想されている。少なくともコロナ禍が収まるまでの間、羽田新ルートの運用を自粛するのが善政ではないのか。
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