不動産大手5社の2020年3月期連結決算はどうだったのか。
各社はコロナの影響をどのように見ているのか。
- 不動産大手の今期、コロナで4社が最終減益予想(日経)
- 住友不動産:次期4,500戸に対し8割契約済
- 野村不動産HD:次期見通し記載なし
- 三菱地所:次期も減収減益となる見込み
- 三井不動産:増収増益を見込む
- 東急不動産HD:次期1,700戸に対し5割契約済
- 売上計上戸数の推移(5社比較)
不動産大手の今期、コロナで4社が最終減益予想(日経)
大手5社の2020年3月期連結決算は全社の最終利益が最高となったが、21年3月期は予想を開示した4社すべてが最終減益を見込む。
不動産大手の今期、コロナで4社が最終減益予想
最高益を更新し続けてきた不動産大手の業績が曲がり角を迎えている。大手5社の2020年3月期連結決算は全社の最終利益が最高となったが、21年3月期は予想を開示した4社すべてが最終減益を見込む。(以下略)
(日経新聞 5月21日)
住友不動産:次期4,500戸に対し8割契約済
完成在庫の割合が増加しているのは売れ行き不振ではなく、決算好調につき引き渡し時期が決算期を跨いで延伸されているからか……。
※【メモ】住友不動産は、他の3社と異なり、マンションと戸建てを合計した計上戸数しか開示していないので、上図では計上戸数の代わりにマンションの契約戸数をグラフ化した。計上戸数とは、引き渡しが完了した戸数のことなので、契約戸数よりも少ない戸数となる。
6期連続最高益更新。2021年3月期計上予定戸数4,500戸に対し約80%が契約済。
都心・大規模マンションが寄与、6期連続最高益更新
- 当事業部門の9割以上を占める分譲マンション市場では、新規物件の供給が限られ、販売価格は安定的に推移、都心、郊外にかかわらず低金利下で良好な販売環境が続きました。
- このような環境下、当連結会計年度は、「シティタワー銀座東」、「シティタワー恵比寿」、「シティタワーズ東京ベイ」などが引き渡しを開始、マンション、戸建、宅地の合計で5,431戸(前期比△539戸)を販売計上しました。
- 計上戸数の減少により減収となりましたが、利益率の改善により営業増益を確保、6期連続で過去最高を更新しました。
マンション契約順調、次期計上分の8割契約済
(次期の見通し)
- マンションの契約戸数は、4,865戸(前期比△246戸)と前年に比べ減少しましたが、次期計上予定戸数4,500戸に対し期首時点で約80%(前年約80%)が契約済となり、計画通りに進捗しました。
不動産販売事業は、緊急事態宣言以降、マンションギャラリーを一時閉鎖するなど、営業活動を抑制しておりますが、期首時点において次期(2021年3月期)計上予定戸数4,500戸に対し約80%(前年約80%)が契約済みとなっております。
次期は、引き渡し戸数の減少により減収となりますが、利益率改善が見込めるため、営業利益は前年並みを確保できる見通しです。
また、現時点で竣工の遅れによる計上の期ずれは発生しておりません。
(2020年3月期 決算短信)
野村不動産HD:次期見通し記載なし
「2021年3月期の連結業績予想につきましては、現時点で新型コロナウイルス感染症の拡大が事業活動及び経営成績に与える影響を合理的に見積ることが困難であることから、未定としております」(2020年3月期 決算説明資料)とのこと。
次期見通しについて記載なし。
住宅部門
- 当部門の売上高は334,710百万円(前連結会計年度比△40,663百万円、10.8%減)、事業利益は24,905百万円(同△126百万円、0.5%減)と、前連結会計年度と比べ減収減益となりました。
- これは主に、住宅分譲事業において、計上戸数が減少したことによるものでありますが、住宅分譲事業の粗利益率については20.4%に向上(前連結会計年度は19.1%)しており、前年度と同水準の事業利益を確保しております。
- マンション分譲では「プラウド恵比寿ヒルサイドガーデン」(東京都渋谷区)、「プラウドシティ日吉レジデンスⅠ」(神奈川県横浜市港北区)、「オハナ橋本」(神奈川県相模原市緑区)、「プラウドタワー名古屋久屋大通公園」(愛知県名古屋市東区)等を、戸建分譲では「プラウドシーズン世田谷砧」(東京都世田谷区)等、計4,739戸(前連結会計年度比1,151戸減)を売上に計上いたしました。
- なお、共同事業における戸数、売上高、契約残高については事業シェア按分で計算しております。
(今後の見通し)
- (記載なし)
(2020年3月期 決算短信)
三菱地所:次期も減収減益となる見込み
今期減収減益。次期も減収減益となる見込み
住宅事業
- 当年度においては、国内マンション事業の売上は、売上計上戸数が前年度に比べ減少したため減収となりました。
- この結果、当セグメントの営業収益は前年度に比べ31,396百万円減収の389,008百万円となり、営業利益は
4,481百万円減益の25,946百万円となりました。
(次年度の見通し)
- 住宅事業セグメントにおいては、新型コロナウイルス感染症の影響による国内分譲マンション販売収入の減少等により減収減益となる見込みです。
- (略)上記の業績見通しについては、新型コロナウイルス感染症による影響として、緊急事態宣言が5月末まで継続し、その後9月末に向けて徐々に事業環境が回復することを想定しております。なお、新型コロナウイルス感染症の終息状況によって業績予想の修正が必要となる場合には、速やかに開示いたします。
(2020年3月期 決算短信)
三井不動産:増収増益を見込む
「分譲」セグメントは、国内住宅分譲では計上戸数の増加による増収増益を見込む。
分譲
- 国内住宅分譲は、計上戸数の減少により減収となった一方で、「パークタワー晴海」「ザ・タワー横浜北仲」等の引渡しが進捗し増益となりました。
- 投資家向け・海外住宅分譲等は、Jリートをはじめとする投資家への物件売却が伸長し増収増益となりました。
- セグメント全体では、66億円の減収、257億円の増益となりました。なお、
- 国内の新築マンション分譲の次期計上予定戸数3,800戸に対する当期末時点の契約進捗率は81.6%となりました。
(今後の見通し)
- 減免等の影響を考慮し、360億円の減収、328億円の減益を見込みます。 「分譲」セグメントは、国内住宅分譲では計上戸数の増加による増収増益を見込む一方、投資家向け分譲では、新型コロナウイルス感染症による売買マーケットへの影響を慎重に見極めながら売却を検討することを考慮し、減収減益を見込み、セグメント全体では159億円の増収、207億円の減益を見込みます。
(2020年3月期 決算短信)
東急不動産HD:次期1,700戸に対し5割契約済
今期増収増益。次期売上予想(1,700戸)に対する契約済み割合は50%。
住宅事業
- 売上高は1,363億円(対前期+12.3%)、営業利益は85億円(同+59.3%)となりました。
- 分譲マンションの計上戸数の増加等により増収増益となりました。販売については堅調に推移しており、マンションの次期売上予想に対する契約済み割合は50%(△4P)となっております。
- なお、当期において分譲マンションは「フランスタワー梅田North」(大阪府大阪市)、「フランスシティ横演上大岡」(神奈川県横浜市)、「フランス円山外苑前」(北海道札幌市)、「フランスタワー羽衣」(大阪府高石市)等を計上いたしました。
(今後の見通し)
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、政府からの緊急事態宣言や自治体からの要請等を踏まえ、当社グループは商業施設・運営施設・営業店舗の臨時休業や営業時間の短縮、従業員の在宅勤務等、感染拡大防止に努めております。
次期業績予想については、新型コロナウイルス感染拡大の影響を合理的に見積もることが難しい状況にありますが、第1四半期は当社グループの事業活動に大きな制約が生じ、第2四半期以降は徐々に回復することを想定して算出しております。
臨時休業等により影響が生じる事業は、都市事業セグメントの商業施設、ウェルネス事業セグメントの運営施設、ハンズ事業セグメントであり、営業店舗の休止など営業活動の制限により影響が生じる事業は、住宅事業セグメントの分譲マンション、管理事業セグメントの工事業、仲介事業セグメント等が挙げられます。当社グループの全セグメントにおいて影響が発生することを見込んでおります。
なお、新型コロナウイルスの感染拡大の収束時期等により、実際の業績等は変動する可能性があります。業績予想の修正が必要となった場合には、公表いたします。
(2020年3月期 決算短信)
売上計上戸数の推移(5社比較)
上記5社のデータを一つのグラフにまとめてみた(次図)。
三井だけが強気の見通し……。
あわせて読みたい