東京都は10月24日、「令和元年夏期 路上生活者概数調査の結果」を公表。
「新宿区の15人減をはじめ、台東区等で減少」したのは、路上生活者対策事業等の効果が寄与しているのだというのだが……。
夏期の路上生活者147人減(都発表)
東京都は10月24日、「令和元年夏期 路上生活者概数調査の結果」を公表。
昨年の8月と比べて、都内の路上生活者数が147人減ったという。
調査結果(概要)
令和元年8月時点での東京都の路上生活者数は、1,037人でした。このうち、都・区市町村等の調査による人数は585人(区570人、市町村15人)、国土交通省の調査による国管理河川の人数は452人でした。前年同月と比べ、合計で147人の減となりました。
市区町別や施設別(公園・道路・河川・鉄道・その他)に、路上生活者の概数が表形式で公開されているので、23区を中心に可視化してみよう。
半数は河川敷
都内の路上生活者はこの7年間で約2千人から1千人へと半減(次図)。
路上生活者が多いのは河川敷で、14年度以降5割を超えている。
19年8月時点で、河川敷(526人)、公園(292人)、道路(192人)の順に多い。
都の路上生活者調査結果(夏期・昼間)
1位新宿、2位渋谷、3位台東
路上生活者数は、新宿区(102人)がダントツで多い。次いで渋谷区(69人)、台東区(59人)、墨田区(50人)の順(次図)。
「新宿区の15人減」はミスリード…
「新宿区の15人減をはじめ、台東区等で減少」したのは、路上生活者対策事業等の効果が寄与しているのだという。
区市別では、新宿区の15人減をはじめ、台東区等で減少し、施設別では、主に国管理河川、都管理道路、区管理道路等で減少しました。
これには、都と23区が共同で取り組んできた、自立支援センターの運営をはじめとする、路上生活者対策事業等の効果が、寄与しているものと考えられます。
念のため、都が過去に公表したデータもひも解き、路上生活者が多い上位5区の変化を確認してみた(次図)。
たしかに新宿区内の路上生活者は2年連続で減少しているが、まだ4年前よりも多い。また、渋谷区は足踏み状態。
台東区で路上生活者が微減したのは、台風19号で明らかになったような区職員の路上生活者への対応の冷たさが招いた結果ということはないのか。
夜間(市民団体調査)は昼間(都調査)の2.8倍
ホームレス問題を研究している市民団体ARCH(アーチ)が9月26日、『2019夏・東京ストリートカウントの集計結果』を公表している。
8月23日(金)と9月6日(金)の深夜(24:30〜28:30)、延べ217名で都内8区(新宿・渋谷・豊島・文京・台東・墨田・千代田・中央)の路上生活者数を調査した結果である。
この市民団体が調査した8区の路上生活者1,040人(夜間)に対して、都調査の8区合計は378人(昼間)。昼間に比べて2.8倍(=1,040人÷378人)の違いがある。
昼間(都調査)と夜間(市民団体調査)人数を区ごとに比較したのが次のグラフ。路上生活者の多い区では、2~4倍の開きがあることが分かる。
昼間出掛けていたホームレスが、夜になるとネグラに戻ってくるのだから、昼夜で2~4倍の開きがあっても驚くことではないだろう。
むしろ、都がホームページで「前年同月と比べ、合計で147人の減となりました」という、夜間の現実を見ていない(見せようとしていない?)発表でいいのだろうか……。
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