立川志らくの弟子、真打の立川こしら著『その落語家、住所不定。 タンスはアマゾン、家のない生き方』(光文社新書)を読了。
アドレスホッパー(家を持たない生き方)は、若者の専売特許かと思ったら、43歳の、しかも落語家が実践しているというのだから驚かされる(本書では、アドレスホッパーという言葉は使われていない)。
「家に帰らなければいけない」というタスクが存在しない
「帰宅」という概念をなくすだけで、自由になる時間を作ることができるという。
持たない落語家の1週間
(前略)大阪に到着して、Airbnbで近そうな宿を予約する。
夜は、落語会だ。
それまでの時間、喫茶店で仮想通貨の値動きをチェックしたり、ネットゲームをやったりして息抜きの時間を積極的に作る。
この「息抜き」も仕事につながっていくのが私の特性だ。
仮想通貨研究家としてラジオ番組(文化放送)に呼ばれたりするから、息抜きも大切なのである。
落語会も大盛況で会場を出ると、大阪の知り合いから連絡があった。明日、大阪でゲームのイベントがあるというお誘いだ。
もちろん、yes!
これが家を持たない私の最大の利点だ。
「家に帰らなければいけない」
というタスクが私には存在しない。
仕事から仕事の間は、全て私が管理できる時間なのだ。
時間に追われる現代で、自由になる時間を作ることはとても困難である。これが「帰宅」という概念をなくすだけで簡単に生み出せるのだ。(以下略)(P46-47/第2章 持たない落語家の1週間)
アマゾンに出品した下着を自分が買う!?
必要な衣服をただアマゾンから届けてもらうのではなく、安い中国製の下着を大量に購入し、アマゾンに売り物として出品した下着を自分自身が買うという発想がスゴイ。
衣食住を再考する
(前略)私はタンスを持たない生活を送っている。私にとってのタンスはアマゾンだ。必要な衣服だけ注文して、使ったら捨てる。洗濯だってほとんどしない。定住してるわけではないので荷物は最小限だ。
このように衣服を減らせると最小限の単位が変わってくる。着替えに自分の人生をどれだけ左右されていたかがよくわかるのだ。
次に泊まる予定のホテルに、アマゾンから衣服が届いている。今日までの服はそこに脱ぎ捨てて、新たなシヤツで次の仕事場に向かうのだ。
アマゾンタンスもこなれてくると、新しい使い方が見えてくる。
下着はこまめに買うことになる。ならば大量に買えばいい。探せば中国の業者が安く出していることがある。この時にまとめ買いをして、アマゾンの倉庫に全ての在庫を送っておくのだ。
そしてアマゾンに売り物として出品する。買った時の倍ぐらいの値付けでいいだろう。もう、こんなのは適当である。
この下着を自分で買うのだ。ついでに誰かが買ってくれるかもしれない。
これは商売ではない。だから利益率とか考えなくていい。うまくいけば小遣い稼ぎぐらいにはなるかも……程度でいいのだ。(以下略)(P68-69/第3章 実践・家もモノも持たない生活)
本書の構成
7章構成。全222頁。
第1章 持たない落語家になるまで
第2章 持たない落語家の1週間
第3章 実践・家もモノも持たない生活
第4章 お金について考える
第5章 持たない落語家の仕事論
第6章 ITと落語
第7章 落語について
雑感 (新しい落語家像を展開…)
書名から「住所不定」のノウハウ本かと思いきや、そうではない。いい意味で期待を裏切られた。
新宿末廣亭・浅草演芸ホールといった落語の定席を持たないばかりか、弟子は一門に会費を払わなければならない立川流。若かりし頃の著者が食いつないできたエピソードが笑える。
現在に至るまで、いかにしてその活動の幅を広げてきたのか。Ingress落語会を開催したり、メールサーバー落語をやってみたり、物販に力を入れてみたり。実際に「立川こしらオリジナル手ぬぐい」がアマゾンで販売されている!
ITを駆使して、新しい落語家像を展開している……。
『その落語家、住所不定。 タンスはアマゾン、家のない生き方』
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